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芦野石(Ashinoishi)のしらべ
古来より、日本の家屋などの建築物は木造がほとんどを占めていました。しかし、土台や基礎には多くの石材が使われています。
また、道標や石碑、神社の鳥居など様々な所で石材は活用されてきました。日本で産出する石材の種類はいろいろありますが、その中の関東地方で採石されている「芦野石(あしのいし)」をご紹介します。
「芦野石」の原産地
栃木県那須郡那須町の芦野地区に「芦野石」の採石場があります。
芦野石は大変古くから採石されていて、芦野地区の名産品にもなっています。「芦野石」を紹介するために、日本の有名建築家が手掛けた石の美術館には、様々な芸術作品や日常的に使えそうな多くの品々が展示されています。
この地域は標高の高い場所で、日本百名山のひとつである、現在でも噴煙を上げている活発な火山の茶臼岳を擁する那須高原が広がっています。また、茨城県と福島県にまたがった八溝山系があり、優良な木材を産出しています。那須高原の周辺には、四季折々の素晴らしい自然の景観を見ることのできる場所がたくさんあって、大都市圏からあまり離れていないことから、多くの観光客が一年を通して訪れています。
奥羽州街道の宿場町でもあったこの地域には、城址や国指定の重要文化財があります。加えて、松尾芭蕉の句にも読まれ、能や謡曲にも謳われた遊行柳(ゆぎょうやなぎ)は、室町時代の伝説が由来となっていて、古い歴史を感じることもできます。
「芦野石」の特徴
「芦野石」は火山岩の一種、安山岩です。学術的には安山岩も幾つかに分類されますが、石英安山岩と言われる種類です。しかし、近年では石英安山岩と言う名詞は使わなくなり、デイサイトと呼ばれています。
安山岩はマグマが急激に冷えて出来る岩石で、火山活動によって出来た石です。岩石としては比較的新しい石で、およそ100万年前に起きた火山の爆発による火山灰の降灰や、火砕流が起源となっていると言われています。構成物の粒子が小さいことが特徴となり、構成物の種類と量で色に違いが出てきます。石らしい色をしている石材で、基本的には白っぽい色をしていますが、青味のあるものや薄い褐色のものまで色味に幅があります。一般的に白や灰色の石を「白目」と呼び、茶系の色が混じっているものを「赤目」と呼んでいますが、芦野では「白目」の方が多く産出しています。耐久性や耐熱性に優れ、比較的柔らかいので加工も容易にできる石材です。
「芦野石」を取り扱う時の留意点
石材の特徴と特質を知ることが大事です。
色の違い
「芦野石」は色の幅がかなり広くあります。全体的に薄い白い色が多いのですが、灰色から青味のある薄い紫、暖色系の灰褐色など多岐にわたる色があります。
100%天然の素材なので、近い色のものがある可能性はありますが、同一の色の石はありません。従って、広範囲に使う場合にはデザインにもよりますが、色に違いが出る可能性がある事を念頭に入れておいてください。
吸水
火山岩は急激に冷えたマグマから出来た岩石です。その過程において空気が取りこまれ、微細な穴があいています。このことから吸水率が高くなっています。
「芦野石」は比較的薄い色をしているので、吸水する事によって生じるシミや、ひどい時にはカビの生える事があって、それによる汚れが非常に目立ちます。吸水することを前提とした使い方ならそのままでも大丈夫ですが、浴室など常に水を使う場所に使用する場合は撥水処理などのコーティングを施したものをお勧めします。
「芦野石」に適した製品
耐久性に優れているので、環境石材として古くから屋外に使用されています。
水平面では
遊歩道や階段、公園などの広場の床面に使われています。「芦野石」は表面加工がツヤのあるものがあまり無く、デコボコした感じや、ツヤ消しのような少しザラついた物が大半です。このような表面は、滑りにくい性質を持っているので、雨降りなどで濡れた道でも安心して歩くことができるので、足元の安全を保障することができます。
垂直面では
塀や石柵、花壇などの仕切り面に「芦野石」が使用されています。柔らかい部類の石ですので、加工がし易く細工も容易になっています。壁の一部に紋様を入れたり、石柵の上部に飾り彫りを入れたりすることが比較的簡単にできます。また、切り出したままの割り肌で仕上げられた壁などは、自然な風合いが落ち着いた雰囲気を醸し出してくれるでしょう。
造形物
加工が容易な石なので、古くから街道を行き来する人々を見守る、お地蔵さまや道祖神などが作られていました。これを「芦野石細工」と呼んでいました。現在では、庭を飾るオブジェや石製のスタイリッシュな照明器具なども作られています。また、小さな置物などがお土産品として売られています。
「芦野石」のまとめ
吸水率の高い石材は水を吸って苔などが生えることがあります。微細な穴にたまる水と養分を吸って苔が広がっていきます。通常でしたら困ったことになるのですが、歴史のある神社仏閣などにある石灯籠が苔むした様は、長い時間を感じさせ、心を落ち着かせる雰囲気を醸し出しているのではないでしょうか。
昔から使われてきた石材が今では採石されないものもあります。「芦野石」は埋蔵量が豊富で、これからも豊かな空間を作り出す役目を担っていけることでしょう。
参考価格(1枚単価、消費税込、運賃別)
ダイヤ挽き
150×300×20mm 1,117円
200×400×20mm 1,980円
300×300×20mm 2,234円
300×450×20mm 3,385円
300×600×20mm 4,485円
300×900×20mm 6,735円
300×300×30mm 2,522円
300×450×30mm 3,740円
300×600×30mm 5,009円
300×900×30mm 7,497円
300×300×60mm 3,605円
300×450×60mm 5,415円
300×600×60mm 7,226円
300×900×60mm10,831円
2022年11月のしらべ
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