「輝北天球館」のご紹介
都市に人口が集中し地方では過疎化が進んでいる所がたくさんあります。そのような地方では、地域の特性や特徴を生かして活性化を図っている所があります。南九州の町では満天の星空が仰げる場所を謳い文句に、キャンプ場などを備えた公園内に新たな施設が建設されました。「輝北天球館(きほくてんきゅうかん)」は、巨大な芸術作品のような建物です。
「輝北天球館」の設計者
「輝北天球館」を手掛けたのは、1953年に鹿児島県指宿市で生まれた高崎正治(たかさき まさはる)です。南九州の自然に囲まれて育った子供時代に、四季の移り変わりで自然が変化することを観察し、人との関連を考えるようになったようです。14歳の時に建築を目指して、抽象的で哲学的な家を発表しています。学生時代に「物こそ人なれ」と言う着想の元、「物人建築(ものびとけんちく)」の理念を作り上げました。大学を卒業後にヨーロッパへ渡り、イギリスの著名な建築家の元で学び、いくつかの国の大学教授の元で建築の歴史や、伝統を学びました。その過程で、ヨーロッパとアジアの繋がりをシルクロードに見出して、「海のシルクロード建築構想」と言う平和的プロジェクトを元に活動していました。彼の作り上げる建築物は美術品と言って良いような作品が多く、彼自身は「社会芸術」と呼んでいます。建築に於ける重要な要素を美と称し、5つの美を追求した建築を目指しています。安全性を考慮した「構造美」、時代や使用目的を考えた「機能美」、生活習慣に新たな方向性を与える「生活美」、地域の風土や習慣を大事にした「地域美」、文化と感性を育てる「芸術美」、この5大美を掲げて自らの建築事務所を運営しています。
「輝北天球館」の所在地
「輝北天球館」が建てられている、鹿児島県鹿屋市輝北(きほく)町の輝北上場(きほくうわば)公園は標高が約550mの高台にあります。真西約15kmの位置には日本でも有数の活発な火山、桜島がそびえ、春分の日と秋分の日には桜島の山頂に沈む夕日を見ることが出来ます。輝北町は、2006年に他の2つの町と共に鹿屋市に合併するまでは鹿児島県曽於郡を構成する自治体でした。九州南部の東側に位置する大隅半島の北西部で、地元では錦江湾(きんこうわん)と呼ばれている鹿児島湾の沿岸の町です。鹿児島湾の桜島より奥側の湾奥部は、およそ3万年前に起こったとされるカルデラ噴火によって出来た湾で、姶良カルデラと呼ばれるカルデラ地形となって丸い形になっています。また、桜島は大正時代に起こった大噴火によって、現在のような陸続きになりました。輝北町は、平成5年まで環境省が毎年夏季と冬季の2回行っていた全国星空継続観察に於いて、7回ほど日本一星が見える場所となりました。星空日本一を謳い文句に整備された輝北上場公園は、「輝北天球館」の他、キャンプ場や総延長3,000kmにも及ぶ九州自然歩道の一部もあって、管理事務所が入る建物は長距離利用者などの拠点の役割も果たしています。この公園からは鹿児島湾は元より東の太平洋まで見渡せる360度の風景を見ることもできます。
「輝北天球館」の特徴
小高い場所に建つ「輝北天球館」は、彫刻品かオブジェのような芸術品のように見える、天体観測を中心とした学習館のような施設です。4階建てですが、明確に別れていない場所もあって外からだけでは、何階建てかはっきりと分からない建物です。様々な部品で組み立てられたような外観で、打ち放しコンクリートで建設されています。外観はコンクリートの灰色だけですが、色々な形の構造物を思い思いの方向に取り付けたような、一言では言い表せられない形状をしているので、衝撃的な印象を与えています。たくさんの円柱が好き勝手な方向に立っていて、その上に丸い形の物やラグビーボールのような形の物が乗せられています。ラグビーボールのような形の部分は研修室で、そこから斜めに突き出た3本の柱があり、先の方は花が咲いたような形状になっています。その形から「ロータス(蓮の花)」と呼ばれていて避雷針の役割もつけられています。球体の部分には口径65cmの天体望遠鏡が納められていて、快晴の日であれば日中でも1等星が見られるようです。屋内の各所には、明り取りの為の様々な形の開口部が付けられています。また、人の形をしたレリーフやオブジェが館の内外に設置してあります。「輝北天球館」の少し手前にはゲートの役割をしている構造物が建てられていて、「輝北天球館」と似た雰囲気の門になっています。
「輝北天球館」のまとめ
大隅半島の高台では、いつも強い風が吹いています。それを有効利用する為に輝北上場公園周辺には16機の風力発電の為の風車が設置されています。白くすっきりとした形の発電用風車と、芸術作品とも言える「輝北天球館」の野放図とも言える建造物の対比は現実の世界では無いような印象を与えています。また、対岸にそびえる堂々とした桜島に負けない強烈な印象のある建造物でありながら、周りに広がる自然の風景に負担をかけていない事は、不思議な感じを与えるのではないでしょうか。
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