アンダー 水中レストラン(“Under” – Underwater Restaurant)

「アンダー 水中レストラン」のご紹介

 

世界では様々な場所でレストランが店を開いています。味はもちろんですが、室内のインテリアもサービスの1つです。そして、窓から見える景色を極上のサービスにできるのは、建てられている場所に大きく左右されるでしょう。食事を美味しくできる要因は一緒に食べる人が大切と言われますが、どこで食べるかも大事ではないでしょうか。ヨーロッパで初めての水中レストランは、北欧の海に沈められています。

「アンダー 水中レストラン」の設計者

 

「アンダー 水中レストラン」を手掛けたのは、スウェーデンの首都オスロに本拠地を置き、アメリカのニューヨークにも拠点を置いている「スノヘッタ、Snøhetta」です。この建築事務所が開設されたのは、1989年ですが、その前身と言える事務所がその2年前に作られています。「スノヘッタ」の共同設立者のシェルティー・トレーダル・トールセンが、別々に作られていた、建築物とそれを取り巻くランドスケープ(端的に言えば造園のような景観)を一緒に企画しようとして、数人の建築家やランドスケープを作る技術者やデザイナーと共に開設した事務所です。彼は、1958年にスウェーデンの南部に浮かぶカルモイ島で生まれ、ドイツやイギリスで育ち、オーストリアの大学で建築を学びました。共同設立者のもう1は、ドイツのフランクフルトで1961年に生まれた、クレイグ・エドワード・ダイカーズです。彼はアメリカのテキサスにある大学で建築を学び、テキサスやカルフォルニアの建築事務所で働いていました。彼らは共通の友人を通して知り合い、共同で参加した建築競技会で見事優勝し、その企画が現在のスノヘッタの出発点となりました。この事務所の手掛ける建築物は、水辺に建つものが多く、周囲の海や港、川などを含めて1つの作品としています。

「アンダー 水中レストラン」の所在地

 

「アンダー 水中レストラン」は、ノルウェー王国の1番南のアグデル地方の中でも最南端に位置するリンデスネスと言う町の海岸にあります。1964年に3つの町や村が合併して出来た町で、2020年には更に隣接する2つの町がリンデスネスに合併しました。町の名前は古ノルド語と言う北欧の古い言語で「終わり」と言う意味があり、それに「岬」を意味する単語が加えられたと言われていて、ノルウェー本土の最南端という事でこのような名称となったようです。この町には最南端で最古の灯台も建っています。1656年に建設されて約350年の間、船の安全な航行を導いてきました。スカンジナビア半島の西側に位置するノルウェーは北極海に続くノルウェー海に面していて、国の海岸線は入り組んだリアス式海岸と、氷河の浸食によるフィヨルドが多く存在しています。加えて1日の中でも急に風が強くなったり、嵐になったりすることが度々あります。昔は海岸線に沿って船を航行させていましたが、このような条件下では座礁したり難破する船が続出していました。リンデスネス灯台には、このような史実や当地の歴史などを紹介する小さな博物館が併設されていて、宿泊施設も作られています。この町は自然を題材にした観光を推進していますが、国が定めた持続可能な観光地として、自然環境と観光地としてのバランスを取るための努力をしています。

 

「アンダー 水中レストラン」の特徴

 

「アンダー 水中レストラン」は、レストランだけでなく海洋生物の研究を行う施設も併設されている、ほとんどが海中に沈められている建物で、潮の干満で違う建物のように見えます。建設方法も特殊で、設置されている場所から少し離れた岸壁に係留されていた艀(はしけ)の上で外殻が建設されました。その後、クレーンの付いた台船とタグボートを使って移動され設置場所に沈められました。コンクリート製の外殻は浮力があった事から、水深5mに沈めて安定させる為に、外殻内を海水で満たしたという事です。海中に沈められた後は、安定させる目的から18本のボルトで岩盤に接続されています。最長34mの角が丸くなった四角い筒を斜めにしたような形で、厚さが約50㎝あるコンクリートの外壁はザラザラのままにされています。この建物は自然環境を壊さないように配慮されていて、ザラザラの表面にされたのは、海藻や貝などの水生生物が付着しやすいようにするためです。変則的な3階建てで、最下層にレストランホールがあり、海中が見られるようにアクリル製の幅が11m、高さが3.4mの窓が取り付けられています。また、海面に対して垂直の窓も取り付けられていて、海上から海面、海面下へと移動しているのが実感できるようになっています。内装の壁や天井、階段は地元産のオーク材が使われていて、下層階に行くにしたがって内装の色が青い色に変えられています。

「アンダー 水中レストラン」のまとめ

 

「アンダー 水中レストラン」が設置されている場所は、常に穏やかな海ではありません。嵐の時の荒波にも水深5mの水圧にも耐えなければなりません。そのような事は想定済みで、「アンダー 水中レストラン」を手掛けたスノヘッタによると、100年はこの海の荒波に耐えるよう設計されているという事です。この建物の内側は人がくつろげる場所であり、研究できる場所となっています。そして、外側の水に浸かった部分は近い将来、全てが海の生き物の住処となっているのではないでしょうか。

 

 

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