「チバウ文化センター 」のご紹介
南太平洋に浮かぶ美しい島の山中に自然物と見間違えそうな建物が建っています。この島に古くから住んでいる人々の文化を、後世に伝えるために作られた「チバウ文化センター」をご紹介します。
「チバウ文化センター 」の設計者
イタリア人建築家のレンゾ(レンツォ)・ピアノは、1937年イタリア北部の街にある建設業の家に生まれました。祖父、父共に建設業に携わる中、小さい頃からいわゆる大工道具に囲まれて育ちました。優れた建築家になる基盤がここにあったようです。大学でデザインや建築を学び、著名な建築家の下で更に知識を増やしました。自らをアルティザン(フランス語で職人と言う意味)と呼んで、建築に対する既成を破るような作品を作り出しています。既製品の材料が無ければ、自分で作ってしまうような事もやってのけています。また、作る建造物によっては建築関係者だけでなく、当該の建物に関する様々な知識を持っている人たちと情報を共有、協力して作ります。例えば、「チバウ文化センター 」は人類学者と協力して出来上がった建物です。彼の作品は、ヨーロッパやアメリカが多いのですが、日本にも彼の手掛けた建築物がいくつかあります。中でも、現在は存在していないのですが、1970年の大阪万博のイタリア工業館は、イギリス人の建築家、リチャード・ロジャースに大絶賛され、数年間二人で活動するきっかけとなったようです。
「チバウ文化センター 」の所在地
南太平洋に浮かぶ群島のニューカレドニアは、「天国に一番近い島」と呼ばれる島々で、オーストラリアの北東に位置するフランスの領土です。数十の島々で構成され、最大のグランドテール島に首都のヌメアがあります。グランドテール島は北西から南東に約350kmの細長い島で、面積は四国より一回り小さいくらいです。この島々は太古の大陸に端を発しているので、固有の生物が存在しています。リゾート地として有名な島々ですが、鉱物資源が豊富でニッケルやコバルトを産出しています。埋蔵量がとても多く、世界でも上位に入っています。ニッケルはステンレスの製造に欠かせない素材であり、現代では需要の高い各種の電子部品を作るためにも必要な鉱物です。日本に輸入されるニッケルの約半分はここから掘り出されています。ニッケルの露天掘り鉱山とは対照的な美しいビーチもたくさんあり、世界で二番目に長い珊瑚礁やその海域からなる「ニューカレドニア・バリアリーフ」は世界遺産にも登録されています。
「チバウ文化センター 」の特徴
「チバウ文化センター」はニューカレドニアのゴランドテール島にあります。いくつかの島で構成されている地域の中で、この島だけは山勝ちな地形になっています。山々の中に突然現れる未来都市のような建物でもあり、自然の中に溶け込んだオブジェのようでもあります。この島の先住民族である「カナック族」の伝統や文化などを紹介する複合施設で、1998年に開館しました。「カーズ」と呼ばれる伝統的な家屋の形を模した、3つの大きさの10の建造物で成り立ち、これからも発展していくことを願って、未完に見えるように作られました。1年を通して気温があまり変わらない温暖な島なので、空調設備は設置されていません。その代わり、自然の風が通るように、開閉が可能なルーバー(鎧戸のようなもの)で換気や温度調節が行われような設計になっています。建物の素材は現代的なコンクリートやガラス、鋼材が使われていますが、天然の素材も多く使用されています。特に木材は重要な役割があり、イロコ材と言うアフリカで育つクワ科の樹木が使われています。この木材は、白アリなどの害虫やカビなどに耐性のある良質なもので、年月と共に白っぽい色から金茶色に色が変わり重厚な雰囲気を醸し出すようになります。この色と構造の見た目から、竹細工のようにも見える建造物となっています。「チバウ文化センター」は、外観も設備も自然と一体化した建物です。
「チバウ文化センター 」のまとめ
ニューカレドニアの民族独立運動の指揮をとった「ジャン=マリー・チバウ」の名前を冠した文化センターは、カナック族の伝統と文化を示し、明るい未来を願って建てられました。近い将来には、今のままフランス領でいるのか、独立国となるのかの住民の意思が示されることになっています。いずれにしても、「チバウ文化センター」はこれからの島の人々と自然を静かに見守っていくのではないでしょうか。
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