タカハマカフェ(Takahama cafe)

「タカハマカフェ」のご紹介

 

御影石の名で知られる花崗岩は、岩石として出来上がるまでに最短でも数百万年かかります。その岩が風化して砂のようになるまでには、更に数百万の時間がかかり、日本海沿岸にある砂丘が出来上がるまでには、気の遠くなるような時間を要しています。鳥取砂丘のそばに建設された「タカハマカフェ」は、長くても数十年で建材になりうる素材が使われています。砂丘の砂の色に似た色合いの「タカハマカフェ」は、地元の杉を使って建てられています。

「タカハマカフェ」の設計者

 

木材を使用した作品を多く生み出している隈 研吾(くま けんご)が「タカハマカフェ」を手掛けました。1954年に横浜の大倉山で会社員の父と専業主婦の母の元に長男として生まれました。木材建築を得意とする彼の原点は、生まれ育った環境と親子関係にあったようです。彼の父親は芸術系の職業を希望していたようで、目新しい建物ができるたびに彼を連れて見学に行っていました。また、古く小さな木造の家を改築するたびに家族で話し合いをしていたそうです。1990年に自身の建築事務所を開設しましたが、時代は景気が悪くなる一方でした。バブルと呼ばれた好景気が終わり、多くの依頼が取り消され、新たな仕事も無い時期が続きました。その当時に彼は国内の様々な地方を訪れて、その地方に伝わる伝統的な手法や、その土地で古くから使われている素材などを勉強してきました。その中で、地元産の木材を使う事だけを指定された依頼を受けました。学生時代にコンクリートの建築ばかりを勉強してきたことで、木材の事はあまり詳しくなかった彼は、新たに建築のための木材について勉強をしなおしたそうです。コンクリートは石灰岩が原料で、他の石材も長い気の遠くなるような時間をかけて出来ました。しかし、木材の元になる木は育てることができると言っています。木材の可能性をまだまだ引き出している彼は、優秀な木材建築に与えられるフィンランドの賞を受賞しています。この賞は現在、世界中で7名にだけに授与されています。

「タカハマカフェ」の所在地

 

国内にはいくつかの砂丘がありますが、その中で最大の砂丘が鳥取砂丘です。「タカハマカフェ」はその砂丘のすぐそばに建設されています。鳥取県鳥取市は、中国地方の東端にあたり、近畿地方との境にもなるため「中国地方の東の玄関口」とも呼ばれています。市の西には、古事記に記されている「因幡の白兎」の舞台とも言われる白兎海岸があります。日本神話の「因幡の白兎」の舞台となっている場所にはいくつかの説がありますが、その話に登場する白兎を祭った神社も市内にあります。この神社の明確な歴史はわかりませんが、少なくとも400年以上の歴史があることは複数の文献に記されています。また、「因幡の白兎」には、似た筋書の民話や神話が世界中に残されています。日本海に面するこの街には、国内でも有数の砂丘があります。中国山地の花崗岩が長い年月の風化によって砂状になり、市内を流れる千代川によって海へ運ばれ、強い風の影響で海岸に吹き寄せられた砂が堆積して出来上がっています。砂丘に続く砂浜は、東西に15km以上の広さがありますが、江戸時代にはわずかに土地利用として手が加えられていました。第二次世界大戦語に本格的に農地利用の方策が採られるようになって、特産品となっている作物が作られています。観光地としての鳥取砂丘は東西2㎞弱の広さですが、最大で高低差が90mもあって、壮観な風景を見ることができます。

 

「タカハマカフェ」の特徴

 

「タカハマカフェ」は、とても不安定に見える建物です。3階建ての木造建築で、3階は屋上テラスになっていて、砂丘とその先にある日本海を見渡せるようになっています。この建物は約45度に傾いた形で、よく見る四角い建物を斜めに押しつぶしたような外観になっています。海側の下層階にガラス張りのような部分が作られ、斜めになった建物を支えているように見えます。山側は1階と2階部分を繋げたような、大きな片流れ屋根のようになっていて、その続きになったように屋上テラスの片側につながっています。テラスの屋根は太めの板を縦に並べたようになっていて、雨をよけることはできませんが、並んだ板が日光を遮り、床に縞模様を作り出します。この建物を建設するための木材は、全て鳥取県産のCLT材と呼ばれる加工した杉材が使われています。CLT材とは日本語では直交集成板と言われている木材で、伐採された木から作られた板の木目が直角に交わるように重ね合わせた板です。この方法で作られた木材はコンクリートなどに比べると重量が軽く、強度も引けを取りません。また、木材でありながら燃えにくい性質があって、木材の柔軟性もあります。屋内の壁や床、テーブルや椅子などの調度品も全て同じ木材が使われています。天井から吊り下げられている照明には、砂丘の砂を混ぜ込んだ和紙で傘が作られています。

「タカハマカフェ」のまとめ

 

「タカハマカフェ」は、鳥取砂丘を訪れる観光客のサービスのために建設された「鳥取砂丘会館」の会館60周年を記念して建設されました。「タカハマ」とは、この地域で高い砂の丘を「高浜(たかはま)」と呼んでいたことから名付けられました。地元産の素材で建設され、地元の職人の手による工芸品が随所に使われている「タカハマカフェ」は、ここを訪れる観光客だけでなく、地元の人々にも喜んでもらえる施設ではないでしょうか。

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