ウルグアイのグリーンスクール(Sustainable school in Jaureguiberry, Uruguay)

「ウルグアイのグリーンスクール」のご紹介

 

近年では地球の環境問題に関心を寄せている人や企業も増えていて、日常的にこの問題が様々な場面で取り上げられています。しかし、20世紀の半ばころまでは、世界的に見てもそのようなことを考える人はほとんど居ませんでした。第二次世界大戦後には、敗戦国は元より戦勝国でも復興に向けて大量生産と大量消費の時代になっていました。そのような時世でも将来の地球環境を考えている建築家がいました。彼が手掛けた「ウルグアイのグリーンスクール」は南米で初めて持続可能な校舎を持つ学校です。

「ウルグアイのグリーンスクール」の設計者

 

「ウルグアイのグリーンスクール」を手掛けたのは、アメリカの建築家マイケル・E・レイノルズです。彼は、第二次世界大戦が終わった1945年に、アメリカ合衆国の東部に位置するケンタッキー州で最大の人口を抱える都市、ルイビルで生まれました。幼いころから父親が資材を再利用しているのを身近に見て育ったことが、廃棄物とされている物を建築資材とすることを考えるきっかけになったようです。生まれ故郷の隣の州にある大学で建築を学び、1969年に卒業した彼はアメリカ南部のニューメキシコ州で活動を開始しました。建築家として当初から環境問題を考えた建築物を作ることを考えていた彼は、1970年に「アースシップ(地球船)」という名称の建物を考案しました。この建築物には3つの条件があります。第一に廃棄物と建設地の素材を使うこと、次に、消費エネルギーは自然から賄うこと、最後に誰でも建設できる、または建設に参加できることです。自らを「バイオテクト(生物を守るの意)」と称し、外部からは「ゴミ戦士」と呼ばれています。廃棄物を処理するためには、再利用するにしても通常はエネルギーを消費します。しかし彼は、廃棄される予定のものをそのまま利用することを考えています。最初に考案したのが、ビールなどの缶をワイヤーで繋ぎ合わせてモルタルで固めた物をレンガのように使う方法でした。この手法で彼は特許を取得しています。一時期は「アースシップ」建築で顧客との間のトラブルが原因で建築家としての活動ができなかったこともありましたが、21世紀に入って大きく注目されるようになり、環境問題の預言者とも呼ばれています。

「ウルグアイのグリーンスクール」の所在地

 

「ウルグアイのグリーンスクール」は、南米にあるウルグアイ東方共和国の南部中央に位置するカネロネス県ヤウレギベリーに建設されました。ウルグアイはブラジル南部とアルゼンチンの北東部に挟まれた南大西洋に面する国です。カネロネス県は隣の首都を擁するモンテビデオ県に次ぐ人口の多い県ですが、国で2番目に面積の小さい県となっています。ヤウレギベリーはラス・フロレスと言う自治体の1地区で、最近までは南大西洋に面する砂浜だけの土地でした。1937年にこの地を購入し政府の許可を得て、開発した人物の名前から地名が作られています。農学者で起業家でもあったその人物は、ソリス・グランデ川の河口に広がる砂地を植樹によって安定させ、林と住宅が建てられる場所として集落を作り上げました。海に面したこの場所は、きめの細かい白い砂浜が広がっていて、現在はリゾート地にもなっています。首都のモンテビデオから東へ約70kmと比較的近距離なので、国の機関や公共の組織などの保養地にもなっていて、複数のキャンプ場が整備されています。また、ウォータースポーツが楽しめ、良い釣り場もあります。公共のインフラはあまり整備されていませんが、500人近い人々がこの地に住んでいて、多くの子供たちも暮らしています。

 

「ウルグアイのグリーンスクール」の特徴

 

2016年に開校した「ウルグアイのグリーンスクール」は、校舎の建設に使用した素材のうち半数以上が廃棄される予定のものでした。残りの素材は建設地の近隣で手に入る木材などで賄われました。まず、建物の基礎の部分には古くなったタイヤが使われました。タイヤはリサイクルがとても面倒で、野積みにされていることが多くあります。古くなっていても以外に丈夫で柔軟性もあり、熱を閉じ込める効果もあることから基礎部分に使用されました。あらがじめ基礎のために掘った場所にタイヤを敷き詰めて、その上に掘り起こした土を被せて隙間を埋めています。また、タイヤは1部の壁にも使われていて、断熱効果があることから屋内の気温を保つことができます。壁にはガラス瓶や空き缶が骨組みとして入れられています。ガラス瓶は完全に埋め込まないで、両端から光がのぞくように仕上げられたところもあります。自然のエネルギーを最大限に利用するために建物の向きも計算されています。南半球のこの地域ですので、北側に向けて窓や屋内通路が作られています。通路では野菜などが育てられていて、子供たちが世話をして食事に提供できるようになっています。電力は屋根に取り付けられた太陽光発電と蓄電池で全て賄われています。飲料水を含む水はろ過した雨水が利用されています。1年を通して適量の雨が降る地域なので、水不足になることはあまりありません。雑排水はリサイクル品で作られた浄化槽で綺麗にした後、菜園やトイレに使用されています。空調や換気も自然の力を利用して行われています。

「ウルグアイのグリーンスクール」のまとめ

 

「ウルグアイのグリーンスクール」を建設するために、2,000本のタイヤと1,500本のペットボトル、3,000本のガラス瓶、12,000個の缶が使用されました。設計者はリサイクルするためにもエネルギーを使用することを案じています。建設には自治体や民間企業の寄付と、30カ国から150人以上の学生やボランティアが参加しています。「ウルグアイのグリーンスクール」は送電網等に頼らないオフ・グリッドの自給自足できる建築物です。

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