サーモン アイ(Salmon Eye)

「サーモン アイ」のご紹介

 

太古より人々は生きていく上で必要不可欠な食料を生み出すために植物の栽培を行ってきました。それに比べると歴史は浅いのですが、それでも魚の養殖も数千年の歴史があると言われています。北欧によく見られる地形を利用したサケの養殖場の近くに建設された、その歴史や仕組みを伝え、学習できる施設の建物は水に浮いているような印象があります。サケの生体の一部を模した楕円の建物は、似た目の通り「サーモン アイ」と呼ばれています。

「サーモン アイ」の設計者

 

「サーモン アイ」を手掛けたのは1960年に生まれたデンマークの建築家、アルネ・クヴォルニングが率いるクヴォルニング デザインです。アルネ・クヴォルニングはデンマークの王立芸術アカデミーで建築を学んでいます。学業を終えた後に、国内のいくつかのデザイン事務所などに勤めていました。自らの会社を立ち上げる前に働いていたコペンハーゲンにあるスカンジナビア半島最大の会議場兼総合展示場での経験から、展示デザイナーも目指すようになりました。しかし、彼はロックのギタリストにもなりたかったようで、一時期はどっちの道に進むかを悩んでいたようです。その結果、彼はギターを弾ける建築家であり、デザイナーでもいいんじゃないかと結論付けました。1992年に建築や総合的なデザインを手掛ける会社を創設し、本格的に活動を始めました。展示デザインとは、そこに見に来る人のために美術館や博物館などの展示品の配列や、展示会における様々な配置を行うことです。他にも工業デザインやインテリア、エクステリアなど、様々な分野のデザインと建築を結び付けた総合的な建物を作り出しています。現在は多くのスタッフと共に世界中の数十カ国で活躍しています。

「サーモン アイ」の所在地

 

スカンジナビア半島の西側に広がるノルウェー王国には特徴的な海岸線のフィヨルドが数多く存在しています。その中でも2番目の長さを誇るハルダンゲルフィヨルドに「サーモン アイ」が建設されています。ハルダンゲルフィヨルドはスカンジナビア半島の南部に位置していて、世界でも5番目に長いフィヨルドとなっています。ノルウェー海から最深部まで180kmを越え、平均的に水深が深く、一番深い所でおよそ850mの深さがあります。ノルウェーはサケの養殖が盛んで、世界でもトップクラスの生産量を誇っています。このフィヨルドでも多くの養殖場が操業していますが、天然のサケや他の魚類も生息しています。しかし、天然資源を守るために一部の地域ではサケやマスの釣りは禁止されています。「サーモン アイ」は、ハルダンゲルフィヨルドの海側から三分の一ほど入った所に浮かぶスニルストベイトイ島の西側にあります。この島の反対側にはローゼンタールと言う村があります。小さな村ですが豊かな自然があることから、それを利用した観光地となっています。最大の魅力は氷河の上を歩ける場所があることですが、これにはガイドを伴って行くことが安全のために必須となっています。港も整備されているので、水上のレジャーも楽しめるようになっていて、カヤックを操って氷河を水上から望むこともできます。

 

「サーモン アイ」の特徴

 

2022年に完成した「サーモン アイ」は、高さが15mで最大直径は26mの上から見ると名前の通り魚眼の形になっている建物です。ハルダンゲルフィヨルドの水の上に楕円体の物体が斜めに浮いているような印象ですが、総重量は1,256トンもあります。4階層ある内の一番下は水面下にあり、水深が100mほどの底に3本のワイヤーで繋がれています。最上層のほぼ中央は天窓のように屋根のない部分があり、テラスとなっているこの部分が魚の眼の水晶体にあたります。また、テラスの少し下には半月型の窓があって、日中の屋内に自然光の明るさを提供しています。水上から見た形は銀色の楕円形をしていますが、上から見ると円形に近い形です。球体を少し押しつぶした感じになっていますが、水面下には円柱形の階層もあります。骨組みは、デザイン設計に基づいた湾曲した形になったH型鋼で組まれていて、それを鋼板で繋いでいます。外皮と呼べる外壁には、ステンレス鋼の板が使われています。海岸線から数十キロも入っている場所とは言え、複雑なフィヨルドの地形では「サーモン アイ」が浮かぶ所まで海水が入り込んでいます。その為全ての建材には地上の建築物より高い耐久性が求められました。外皮のステンレス鋼板も、腐食しにくい9275枚の角を丸くした長方形の耐候性の高いものが使用されています。

「サーモン アイ」のまとめ

 

「サーモン アイ」は近くにあるサケの養殖場が依頼して、水産業の現状と未来へ向けての持続可能な水産業の情報発信とそれらを学ぶ事ができるように建設されました。持続可能を掲げていることもあって、「サーモン アイ」を訪れるために使われる船は電動のエンジンが使用されています。これは、養殖場の水質を護る目的にもなっています。水の上に浮かぶ「サーモン アイ」の魚眼の形とサケの鱗を模した外皮の銀色に鈍く輝く姿は、この地域のランドマークとなっています。

 

 

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