パワーハウス ブラットルカイア(Powerhouse Brattørkaia)

「パワーハウス ブラットルカイア」のご紹介

 

エネルギーを自給自足できる建物が北欧の街に建っています。未来的な外観を持つ「パワーハウス ブラットルカイア」は、名前の通りパワー(電気エネルギー)を生み出せる街中の小さな発電所と言われているオフィスビルです。

「パワーハウス ブラットルカイア」の設計者

 

「パワーハウス ブラットルカイア」を手掛けたのは、ノルウェーの建築事務所「スノヘッタ」の創設メンバーの1人、シェティル・トールセンです。彼は、1958年にノルウェーの南部、ノルウェー海と北海の境界に位置する場所に浮かぶカルモイ島で生まれました。ドイツやイギリスで子ども時代を送り、オーストリアで2番目に大きな都市、グラーツの学校で建築を学びました。彼は、子どもの頃に美術を習っていましたが、その時の教師に建築に向いていると勧められたそうです。その時に、ものを作ることが好きだから建築の世界に進むのもいい事だと思ったと彼は言っています。20代の頃にいくつかの建築事務所で経験を積んで、1987年にビジネスパートナーのクレイグ・エドワード・ダイカーズと共に建築、デザインの事務所の「スノヘッタ」を創設しました。スノヘッタとはノルウェーで一番高い山の名前で、スキーや登山の好きなシェティル・トールセンはその名前を借りたと言っていて、ロゴマークも山の形をしています。彼は建築家としての仕事だけでなく、ノルウェーの建築家協会のメンバーにもなっていて、建築デザイン設計競技(コンペ)委員会の委員に就任していて、ヨーロッパの様々な国で行われるコンペの審査員も務めています。

「パワーハウス ブラットルカイア」の所在地

 

ノルウェー王国のトロンハイムと言う街の港湾地域に「パワーハウス ブラットルカイア」が建てられています。トロンハイムは、ユーラシア大陸から伸び出しているスカンジナビア半島の西側に位置するノルウェー王国のほぼ中央部にある、国で三番目に大きな都市です。この街は建設された当初から都としての機能を持っていました。10世紀に当時のヴァイキングの王が、都としてこの地に街を建設しました。ニデルバ川の河口に位置する場所だったので、街の名前は「ニーダロス」と付けられました。この名前は公式の市名に使われていたこともありますが、20世紀の初め頃に行われた住民投票によって、圧倒的な得票でトロンハイムに決まりました。ヴァイキングの王が街を建設する以前でも、遺跡や洞窟壁画の発見によって、太古からこの地に人が住んでいたことがわかっています。ノルウェーには地理上で特徴的な湾があります。氷河の浸食作用によって出来上がったフィヨルドがそうです。トロンハイムもそのフィヨルドの奥ある街で、自然が豊かな所です。数十万の人口を抱える大都市ですが、近隣には豊かな森や山があり、街の中で野生の動物を見ることもできます。街の中にも多くの緑地帯があって、そこに生息している動物もいます。

 

「パワーハウス ブラットルカイア」の特徴

 

「パワーハウス ブラットルカイア」は街の湾岸地区に建つメタリックな外観のオフィスビルで、2019年に完成しました。メタリックに見えるのは、黒いアルミパネルと、ダブルスのテニスコートのおよそ10倍の面積に敷き詰められた太陽光パネルの為です。平面図では変形の四角形の建物ですが、極力太陽光を受けるように、屋根の部分が南方に傾けた斜めになっているので、少し複雑な形状となっています。建物の中央部は楕円形にくり抜かれていて、中庭のような所が作られています。このビルの一番の特徴は、建物内で使用する電力の最大で2倍の電力を生み出していることです。建物に太陽光パネルを取り付けることは、近年、日本の一般住宅でも行っていますが、「パワーハウス ブラットルカイア」はそれだけではありません。この建物は使用する電力も徹底的に削減するように作られています。このような仕様になると、通常は節電などで窮屈なイメージがありますが、そのような事は全くありません。建物を利用する人が快適で、かつ、使用電力を低減できる様々な仕組みがあります。壁の部分はガラスを多く使用して、人工照明を使わなくても明るい室内を保てるようになっています。建物中央部の空間も、明るさを保つことを一番の目的として開けられています。また、天井部分もパネル等で全て覆うのではなく、意図的にスタイリッシュな感じで開けられています。打ち放しのコンクリートが熱を吸収して保つために、このような方法が採られています。この方法によって冷暖房に必要な電力を削減しています。

「パワーハウス ブラットルカイア」のまとめ

 

「ブラットルカイア」の名称は、このビルが建っている地区名の「ブラットラ」と、ノルウェーの言葉で岸壁を表す「カイア」を組み合わせたものです。「パワーハウス」を謳った大小の建物が世界中に増えていますが、「パワーハウス ブラットルカイア」は、北緯63度に位置する高緯度で最北のエネルギーを生み出す建物となっています。設計者のシェティル・トールセンやスノヘッタは地球環境の保全に力を注いでいて、建築や都市計画に於けるカーボンニュートラルを目指しています。海側から見る「パワーハウス ブラットルカイア」は、エネルギーがあふれだしているように見えると描写される事がありますが、まさにその通りの建物と言えるのではないでしょうか。

 

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