目次しらべ
「オンタリオ芸術大学 シャープセンター」のご紹介
芸術系の大学に人目を惹くような建物を作ることは、建築家にとって特に気を遣う案件ではないでしょうか。北米の大都市に建設された場所や時間、天候によって様々な様相を見せる建物は、後援者の名前をとって「シャープセンター」と名付けられました。
「オンタリオ芸術大学 シャープセンター」の設計者
「オンタリオ芸術大学 シャープセンター」を手掛けたのは、イギリス人建築家のウィル・アルソップと、この建物が建設されているカナダのトロントの建築会社ロビー/ヤング+ライト アーキテクトスです。ウィル・アルソップ(ウィリアム・アレン・アルソップ)は1947年にイギリスの中部にあるノーサンプトンと言う町で生まれました。彼は幼いころから、漠然とした気持ちで建築家になりたいと思っていたようです。16歳の時に父親が亡くなり、建築事務所で働きながら夜間学校に通って建築を学びました。彼は建築に対して独自の考えを持っています。近年でよく言われる持続可能などは、「重要ではあるけれど最重要ではない」とか、「都市の全ての建物は地面に触れないように建設され、地面は人や緑地に使われるべき」など、一風変わった持論があります。彼の作り出す建物には均一性が無く、彼の作品であると一目でわかる物はありません。それは、建設される場所に住む人や働く人に様々な意見を聞いている為だと彼は言っていました。しかし、彼の作品は独特の色使いと形を持っています。イギリスの大学で建築を教える仕事もしていた彼ですが、2018年病気のために70歳で亡くなっています。ロビー/ヤング+ライト アーキテクトスは、イギリスで生まれたロデリック・ロビーとアメリカ人のショーン・ライトとジュリー・ヤングの3人が、1987年にカナダのトロントに開設した建築事務所です。ロデリック・ロビーが社長を務めていましたが、2004年にカナダの建築系大企業と合併しています。
「オンタリオ芸術大学 シャープセンター」の所在地
「オンタリオ芸術大学 シャープセンター」はカナダで最大の都市、トロントに建設されています。五大湖の1つオンタリオ湖の北西岸に位置し、非常に古くから人々が暮らしていた痕跡があります。元々この地には先住民族の集落がありましたが、18世紀の中頃に初めてこの地に足を踏み入れたのはフランスの商人でした。しかし、実際に町を建設したのはイギリスから来た人々で、その頃は「ヨーク」と呼ばれていました。19世紀の初め頃に独立した自治体となって、「トロント」と改名されました。当時は人口が1万人にも満たなかったのですが、現在は世界有数の大都市になっています。加えて、世界でも高層建築物の多い都市で、世界中の著名な建築家の手による建物が林立しています。中でも、ドバイにブルジュハリファが建設されるまでの34年間、世界一高い自立式の建築物だったCNタワーは街のランドマークとなっています。CNタワーは高さが553.33mの電波塔として1976年に完成しましたが、4つ展望台も備えていて、現在でも10指に入る高さを誇っています。高層ビルだけでなく、美術館や博物館などの建物も高名な建築家の作品が数多く建てられています。この街は、世界中の有名建築家の作品が1度に見られることが観光客を惹きつける誘因の1つともなっています。
「オンタリオ芸術大学 シャープセンター」の特徴
「オンタリオ芸術大学 シャープセンター」は不思議な感覚を起こさせる建物です。建物がとても高い位置に作られていますが、圧迫感が無く、浮いているように見える事と、昼夜で違う見え方がする事などが挙げられます。4階建ての本館校舎の上に建設されていますが、校舎の建物より更に高い位置にシャープセンターの底の部分があります。地上高が9mでシャープセンターそのものは2階建てになっています。長さが80mで、幅は30mありますが、高い位置にある為に実際よりは小さく見えるので、圧迫感がありません。建物は、12本の鋼鉄製の柱で支えられています。テーパー鋼管と言う先端をすぼめた形の柱で、直径が914mmで長さが28mあります。12本の内7本は赤や、黄色、青などに着色されていますが、5本は黒い色になっています。1部の柱を黒くしたのは、設計者のウィル・アルソップが、夜間の暗い時間に柱が見えなくなるようにと意図したためです。それによって建物の浮遊感が増すと考えられています。外壁はアルミニウムで覆われ、白と黒の不規則なモザイクのようになっていて、黒い部分には窓も含まれています。この色使いとデザインも建物を小さく見せる効果を狙っています。シャープセンターにはエレベーターで上がれるように、本館から黒い大きな柱のような構造物が繋がっています。建物の底からは柱だけでなく、本館に斜めに繋がる四角の赤い筒状の構造物が取り付けられていて、中には非常階段が設置されています。また、底の部分には16個の水銀灯の1種のメタルハライド電球が設置されています。この電球は輝度が高くとても明るいので、夜間には建物を下から照らしています。
「オンタリオ芸術大学 シャープセンター」のまとめ
ウィル・アルソップが浮遊建築と呼んでいる「オンタリオ芸術大学 シャープセンター」は、正に地上から浮かんでいるように見えます。これは彼の持論もありますが、シャープセンターの向かいにある住居ビルから、大学の向こう側にある公園が見えるようにと配慮されています。高い位置にある大きな建物は、周囲の人に圧迫感や威圧感を与えやすいのですが、それらも十分に考えられた上で建設された「オンタリオ芸術大学 シャープセンター」は、トロントの新しいランドマークとなっています。
コメントを残す