ワン セントラルパーク(One Central Park)

「ワン セントラルパーク」のご紹介

 

  都市の再開発は多くの人の頭脳と手が必要です。南半球有数の大都市であるオーストラリアのシドニーの1地区で行われた再開発では、多様な職種の人々が関わって素晴らしい地区に作り替えられました。セントラルパークと名づけられた地区の中心的な企画が、「ワン セントラルパーク」です。この建物には、誰も見たことが無いような仕掛けが施されています。

 

「ワン セントラルパーク」の設計者

 

「ワン セントラルパーク」の建設には多くの人や企業が関わっています。デザインや設計を中心的に担当したのが、フランスの著名な建築家のジャン・ヌーヴェルです。彼は1945年にフランス南部の街、フェメルで生まれ、1994年にアトリエ・ジャン・ヌーヴェルを開設しています。芸術に強く惹かれていたこともあって、彼の作り出す作品は美しいものが多く、一見の価値がある建築物を生み出しています。もう一つの中心的な建築事務所は、オーストラリアの老舗とも言えるPTWアーキテクツです。1889年にジェームズ・ペドルがシドニーに開設した事務所で、彼の教え子3人が後に加わって、20世紀の初頭からオーストラリアの建築界をリードしてきました。開設当初は社名が彼らの名前を綴った「ペドル・ソープ&ワーカー」でしたが、2003年に頭文字をとった名称に変わっています。また、この建物を特徴付けている植物については、フランス人の植物学者で芸術家のパトリック・ブランが担当しています。1953年にパリで生まれた彼は、20世紀の半ばに発明された垂直庭園と呼ばれる緑の壁を、更に進化させた水耕栽培による方法を使っています。更に、複合建築である「ワン セントラルパーク」のショッピングモールを手掛けているのが、イギリスの高名な建築家ノーマン・フォスター卿が率いるフォスター&パートナーズです。

「ワン セントラルパーク」の所在地

 

「ワン セントラルパーク」は、オーストラリア連邦最大の都市、シドニーの南部にあるチッペンデールと言う地区の中心部に建設されました。シドニーは、イギリスの流刑地として設立されたサウスウェールズ州の州都です。しかし、流刑地であったことが逆にこの街を発展させることになりました。入植の初め頃は最低の建物しかありませんでしたが、1人の建築家が囚人としてこの地に来たことがきっかけで街が発展し、世界遺産にも登録されるような建築物やその時々の最先端の建物が作られてきました。チッペンデールには160年以上の歴史がある醸造所がありましたが、街の再開発計画によって閉鎖されました。現在は日本企業の子会社になっている飲料メーカーが所有していた場所で、地区の中心地であり、かなりの広さがあったことから、人口増加による住宅供給を増やす目的で工場を閉鎖して建物もすべて取り壊されました。この地区はシドニーの中でも緑地の少ない場所だったので、その敷地には公園を作ることが真っ先に決まり、セントラルパークの名前が付きました。メインの公園に加え、ポケットパークと言う小さな緑地も作られていて、チッペンデール・グリーンと呼ばれています。公園が出来上がったことで緑地は増えましたが、新たな住宅も建設したことから、住民1人当たりの緑地面積はあまり変わらないようです。

 

「ワン セントラルパーク」の特徴

 

「ワン セントラルパーク」は4階建ての比較的大きな複合施設から2つの塔が伸びあがっている建物です。東側の棟は117mで33階建てで、西側の棟は84mの16階建てです。この建物には2つの大きな特徴があります。1つはグリーンビルと呼ばれている、近年見かけるようになった植物を外壁などで育てる建物となっていることです。緑の壁と言われる方法ですが、この建物に使われているのは、全長で5,000mもある植物が植えられたプランターが設置されていて、合計で1,000㎡もある21枚の植物パネルが外壁を登りあがるように取り付けられています。基本的には水耕栽培の方式が採られていて、この地区の緑地の少なさを補っています。もう1つは誰も見たことが無いような建物から張り出した構造物です。東棟の28階から吊り下げられた形のヘリオスタットと言う、太陽を追いかけて光を反射させる装置です。西棟の屋上に220個のミラーパネルが設置されていて、建物から42m張り出すような形で、カンチレバー(または、片持ち梁)と呼ばれる、1方の面だけで構造物を支える工法で取り付けられてる320枚の反射板がその光を受け、ビルの隙間や植物に太陽光を注いでいます。この部分にはLEDも取り付けられていて、夜間には様々な色の光で彩り、「街のシャンデリア」と呼ばれています。ヘリオスタットの上には、建物から40m張り出された文字通りの空中庭園が造られています。

「ワン セントラルパーク」のまとめ

 

「ワン セントラルパーク」は日本にも関りがあります。いくつかの住宅のインテリアは、オーストリアで活躍する日本人建築家が手掛けています。また、住宅の1部は日本の企業が取り扱いを行っています。「ワン セントラルパーク」は様々な面で持続可能な方法が採られていて、オーストリアは元より国際的にも高く評価されています。多くの建築家や技術者、芸術家が関わって外観も斬新な印象のある建物になっていて、将来の都市に建つ集合住宅の模範となり得る建築物となっているのではないでしょうか。

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。