セルガスカーノ 自社オフィス(Office in The Woods by Selgascano)

「セルガスカーノ 自社オフィス」のご紹介

 

建築家にとって自宅や自身の職場になる社屋など、自分の所有する建物を作ることは楽しくもあり、重要な意味も持つのではないでしょうか。依頼者にとっては、その建築家の家や事務所の建物で、どのような建物を作っているか判断できる大きな要因となり得ます。「セルガスカーノ 自社オフィス」は、彼らの理念が全て込められていると言っても過言ではない社屋です。

「セルガスカーノ 自社オフィス」の設計者

 

スペインの建築事務所「セルガスカーノ」は、ホセ・セルガスとルシア・カーノの二人が運営しています。著名な建築家の中には多くのスタッフを抱え、世界中にいくつものオフィスを持っている人もいますが、セルガスカーノの事務所はスタッフの人数も少なく、こじんまりしたオフィスで活動しています。彼らは、自分たちの建築に対する基本的な信条が誤認されないように少人数での仕事にこだわっているようです。現代社会は、高度成長期に起こった様々な悪影響を取り除いたり、地球環境を良くしようとしたりすることを大きな課題としています。彼らは、自然と共存するのでもなく、当然ですが自然を壊すような開発も行いません。建築は自然に溶け込ますものではなく、自然の中にあっても大きな存在感を持つものだとしています。しかし、その建物を利用する人にとっては、雨の音や風の音、日々移り変わる天候など、自然を感じることのできる場所となるように心がけています。そして、ただ建物を作るのではなく、建築場所とその周辺の社会や歴史、自然環境、中でも特に経済に対してなど、様々な物事と自分たちが作ろうとしている建物の関連性を考慮しています。

「セルガスカーノ 自社オフィス」の所在地

 

スペイン王国の首都であるマドリード(マドリッド)は、国土のほぼ中央に位置する内陸にある大都市です。歴史上で初めてこの街の名前が記された時から、地域の中心的な役割を持っていて、「水が豊富な場所」と言う意味のあるアラビア語や古来よりこの地域で使われていた言語が語源となっています。最終的にはポルトガルから大西洋に注ぐマンサナレス川が街の中を流れていて、最古の集落がこの川に沿って作られていたことから、街の名前の由来となったようです。しかし、名前の由来とは反対にとても乾燥した内陸性気候の地域です。一年の平均した気温は夏に最高でも30℃を少し上回るくらいで、冬は氷点下を下回ることはあまりありません。降水量は一年を通しても少なく、特に夏季は雨が降る日は1か月に2日程度で、冬季に雪が降る日も少ないようです。これは、マドリードが内陸である事と標高が高い事が要因となっています。この街は9世紀に要塞が建設されたことが始まりでした。それ以降、様々な権力者によってこの地の覇権が争われました。多くの人々が暮らす街に水は不可欠です。17世紀には、水の蒸発を防ぐために地下に張り巡らされた水路を利用して街に水を引いていました。街の周囲には多くの貯水池があり、近代ではいくつかのダムも建設されて、大都市に必要な水を賄っています。

 

「セルガスカーノ 自社オフィス」の特徴

 

セルガスカーノは規模の小さい建築事務所です。その為、オフィスも大きな建物を必要としていません。しかし、奇想天外とまでは言わないまでも「セルガスカーノ 自社オフィス」は変わった建て方がされています。地面に半分埋め込まれたような、長方形の建物と言うより物体に見えます。地下の床と壁の部分はコンクリート製で、地上部分の北半分は透明の樹脂製ガラスで、南側半分は半透明の複合素材で作られています。側面に開く形の窓はありませんが、透明なアクリルガラスが屋根の半分と地上部分の半分を覆っているので、とても明るく木立の中で仕事をしているような気分になるようです。アクリルガラスは、樹脂で作られているもので、古来より作られているソーダガラスや石英ガラスに比べて重量が軽く、加工も容易となっています。以前は樹脂ガラスの劣化やキズが付きやすいと言った欠点も、近年の技術向上によってかなり克服されています。南側の屋根部分は直射日光から守るために半透明になっていて、ガラス繊維とポリエステルの間に断熱材を入れた複合素材が使われています。この素材を使用して希望のカーブをつける事が一番の難点で、ドイツの鉄道会社が使っている列車の天井部分と同じもので、少しの量を作ることが出来なかったようです。そのような事から、新しい列車が作られるのを待ち、その時に「セルガスカーノ 自社オフィス」の屋根部分も一緒に作成してもらったというエピソードがあります。半地下になっている為に室温の管理も容易になっています。例えば、鍾乳洞などの洞窟は夏、涼しく、冬は暖かく感じますが、洞窟内の気温が一年を通してあまり変わらないことが理由となっていて、それと同じことがこの建物にも当てはまります。

「セルガスカーノ 自社オフィス」のまとめ

 

小規模だからこそできる事の良い証の一つが「セルガスカーノ 自社オフィス」ではないでしょうか。このような作り方にされたのは、セルガスカーノの建築に対する理念の一つである、使う人(働く人)が気持ちよく使える為です。室内にいても天気がわかり、およその時刻も時計を見なくてもわかります。そして、森の樹々の下で作業をしているような感覚は、生物としての人間に良い影響を与えているようで、仕事の能率が上がり、色々な事の良い思いつきも増えているとのことです。セルガスカーノの二人は、屋根に当たる雨音や風の音も全てこの建物の一部だと言っています。

 

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