ベラルーシ国立図書館(National Library of Belarus)

「ベラルーシ国立図書館」のご紹介

 

国の重要な図書館は、その国の知識と歴史が納められています。それゆえに、大きな争い事が起きて、敗戦した側の大規模図書館が破壊の標的にされ、蔵書の多くが焚書の対象にされた例は古代から数多くあります。「ベラルーシ国立図書館」もそのような歴史のある図書館ですが、21世紀に入って未来へ向けた新たな姿となりました。

「ベラルーシ国立図書館」の設計者

 

「ベラルーシ国立図書館」の建設は、国際的な建築設計競技会によって設計者が選出されました。その競技会で優勝を勝ち取ったのは、いずれもベラルーシの建築家であるヴィクトル・ウラジミロ・クラマレンコとミハイル・クリメンティエヴィチ・ヴィノグラドフの2人の共同作品です。ヴィクトル・クラマレンコは1945年にベラルーシの西部にある都市、グロドノで生まれ、首都のミンスクにある工科大学で建築を学びました。卒業後は国立や国の最大規模の建築組織で働いていて、博物館や劇場などの文化施設やミンスクの駅など大きな建物を多く手掛けています。ミハイル・ヴィノグラドフは、1944年に国の北東部にあるノヴォサティと言う小さな村で生まれました。若い頃は空軍のパイロットになりたいという夢がありましたが、健康上の理由でパイロットの養成学校に入学できませんでした。夢を断念した彼は、自動車の工場で見習いとして働き、20歳になってミンスクの工科大学に入学して建築を学びました。学業を終えてからは、彼も国の建築機関で働くようになりました。当時は、ソビエト連邦の構成国であったウズベキスタンの首都で1966年に起きた地震の復興のために、多くの若い建築家が活躍する機会が与えられ、彼もその中の1人でした。多くの公共建築と建築家の息子を残して2020年に76歳で世を去っています。

ヴィクトル・クラマレンカ

ミハイル・ヴィノグラドフ

「ベラルーシ国立図書館」の所在地

 

「ベラルーシ国立図書館」はベラルーシ共和国の首都ミンスクにあります。この国は、ロシアの西隣に位置する内陸の国で、ソビエト連邦が崩壊した1991年まではソ連の構成国の1つでした。11世紀にミンスクの名前が歴史上に現れたことから、この街の建設がその時代とされています。12世紀の頃には都市となっていて、それ以来この地域の中心的な街になっています。ミンスクの地名の由来や語源はいくつかありますが、古い言語で「川」を意味していると言う説があります。その説を裏付けるように、街の中心をスヴィスロチ川が流れています。最終的に黒海に注ぐ、ヨーロッパで4番目に長いドニエプル川に繋がるこの川は、街の重要な水源となっています。国土のほぼ中央に位置していて、国の経済の中心でもあります。主に、自動車や農業機械などの製造をしている工業地帯で、近年では深刻な大気汚染に悩まされているようです。街では、空気の正常化を目指すために、定期的に「クリーン・エア」と銘打った運動を行っています。大気汚染の大きな原因に自動車の排気ガスがあり、一定期間は整備不良などの劣悪な自動車が市内に入れないようにしています。また、自転車の普及を促すために、市内の自転車道を整備したり、自転車の啓蒙活動の一環として、2015年からは大々的な自転車の祭典を開催しています。

 

「ベラルーシ国立図書館」の特徴

 

2006年に完成した新しい「ベラルーシ国立図書館」は、その外観から「ベラルーシのダイヤモンド」や「知識のダイヤモンド」と呼ばれることがあります。この建物で真っ先に目に入るのが、中央のガラスで覆われた、斜方立法八面体と言う形の立方体で、8つの正三角形と18の正方形を組み合わせて出来上がる形です。高さは73.6mの23階建てで、3層に重ねられた円形を基本とした土台の建物の中心に、立方体が据えられています。立方体には蔵書が納められていて、一般の閲覧者が書棚と閲覧場所が、どこでも同じくらい近くなるように考えられています。中心には館内の移動のためのエレベーターや、様々な設備が納められています。外壁に沿った一部の通路は、急激な気温の変化を抑える役目も果たしています。この建物は街の観光名所にもなっていて、最上階には街を一望できるデッキが作られています。最上階に上がるための直通のエレベーターは玄関の反対側に設置されています。この図書館の設計者は、立方体が輝くのが日中だけなのは残念だと思い、夜も煌めくように考えられています。近年、叫ばれる光害にならないように、効果的に立方体を光らせるために、試行錯誤された結果は、ガラスの後ろ側に光源を置くことでした。4,500個以上のLEDが取り付けられて、日没から深夜まで、様々な色合いで図書館は彩られています。

「ベラルーシ国立図書館」のまとめ

 

「ベラルーシ国立図書館」は、1922年に建設された国立大学の図書館が前身となっています。開館当時は蔵書も少なく、利用者も限られていました。しかし、4年後には蔵書は5倍に増え、利用者も大幅に増加して、大学図書館から国立の図書館へと移行しました。第2次世界大戦の時に攻撃の対象となり、200万冊以上あった蔵書のほとんどが失われてしまいました。戦後、蔵書の回収が行われ、20世紀中頃には新しい建物も建設されたました。現在の「ベラルーシ国立図書館」は、国が独立する前に計画が持ち上がっていましたが、完成したのは独立後です。歴史と知識が納められた「ベラルーシ国立図書館」は、国の新しい歩みを示す具現化した事象の一つと言えるのではないでしょうか。

 

 

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