「バルセロナ現代美術館」のご紹介
世界中には多種多様な美術館があります。個人所有のコレクションを公開している所や、一人の芸術家のための小規模な施設から、国立や大企業所蔵の収集品を納めている大規模な館まであります。「バルセロナ現代美術館」は、20世紀後半の頃からの比較的新しい美術品が収められています。
「バルセロナ現代美術館」の設計者
アメリカ人のリチャード・マイヤーは、1934年にアメリカ北東部に位置するニュージャージー州最大の都市ニューアークで生まれました。少年の頃にアルバイトとして設計事務所の雑用をしていた事で建築設計に興味を持ち、長じて大学で建築を学びました。卒業後には、数々の名建築家も所属していたアメリカ最大の建築事務所に短い間ですが所属していました。その後、多くの有名建築家を生み出した、モダニズムの父とも呼ばれたマルセル・ブロイヤーの元で数年間務め、1963年にニューヨークに自分のオフィスを構えました。建築家として活動を始めた頃から白い建物をデザインすることが多く、「白の建築家」と呼ばれるようになりました。それについては、いくつかのエピソードがあります。ある住宅の設計を請け負いましたが、当初の建築予定地では自治体の決まりで白い住宅を建てることができませんでした。どうしても白い家にしたかった彼は、依頼主を説得して建築場所を変えてもらいました。20世紀後半にニューヨークの若手建築家5人の作品をまとめて紹介されたことで、彼を含む5人を「ニューヨーク・ファイブ」と呼ぶようになりました。その中でグレイ派とホワイト派の二つの流れがあり、白い建物を好んで作るリチャード・マイヤーはホワイト派と呼ばれていました。
「バルセロナ現代美術館」の所在地
スペイン王国のバルセロナはスペイン東部、地中海沿岸の都市です。およそ7,000年以上前から人が住んでいた痕跡が見つかっています。街としてのバルセロナの起源にはいくつかの説がありますが、少なくとも紀元前のローマ時代には植民都市として、バルチーノと言う名の街が作られたことは歴史上の事実となっています。地中海に面していることから、陸上、海上の交通の便が良く、そのことから様々な王朝に支配されてきました。しかし、街の名前は紀元前から変わってはいません。北部アフリカの王朝にも支配されたことがあり、現在のフランスとの国境も近いことから独特な文化を育んできました。様々な異国の文化も取り入れ、自分たちの文化と融合させる寛容な気質を持つ土地柄で、多くの芸術家も輩出してきました。スペインの他の地域では見られない数々のものがバルセロナにはあります。
「バルセロナ現代美術館」の特徴
「バルセロナ現代美術館」は、設計者の特徴を如実に表している建物です。美術館の外側も内部も白い建物で、正面側はガラス張りになっていて、とても明るい雰囲気のある空間が作られています。ガラスで覆われた部分はアトリウムと呼ばれ、展示スペースと屋外を隔てる壁のような構造となっています。所々に円筒や曲線を持たせた部分があり、そのおかげで冷たいイメージのある白ではなく、明るく柔らかい感じの白となっています。上から見るとよくわかりますが、かなり大きい円筒の部分が四角い建物に取り囲まれたような形が見えます。この部分はロビーになっていて、正面玄関から入るとすぐに円筒形のスペースになり、そこから各フロアに繋がるスロープが作られています。廊下にはガラスブロックが使われ、奥の展示室には天井部分が天窓のような作りの所もあって、館内のどこでも天然光を採り入れられる明るい空間が広がっています。設計者のリチャード・マイヤーが言うように、白は一番自然に近い色で、季節や朝夕などの時間、天候によって様々な色に見える建物となっています。1995年にオープンした美術館でモダンアートの作品が収められています。地元の人達は「バルセロナ現代美術館」の頭文字を取って「MACBA(マクバ)」と呼んでいます。
「バルセロナ現代美術館」のまとめ
白の建築家と呼ばれるリチャード・マイヤーは、公共施設も多く手掛けています。「どうしても白い建物ではだめだ」と言われた依頼がありましたが、外壁は薄いベージュのイタリア産大理石トラバーチンを使い、屋内は全面的に白い色を使ったと言うエピソードもあります。その様なことから考えると「バルセロナ現代美術館」は、設計者にとって思う存分白を使えた作品となっているのではないでしょうか。
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