モンテローザ ハット(Monte Rosa Hut)

「モンテローザ ハット」のご紹介

 

登山家や登山の愛好家にとって、高くて険しい山でも登らずにはいられないと聞きます。しかし、日帰りでそのような山に登頂することは無理があります。その為に、世界中には山小屋が設置されている山もたくさんあります。その中でも非常に標高の高い所に建設されている山小屋は、公共のインフラは使うことができません。「モンテローザ ハット」は運営のために必要なエネルギーや水などを、ほぼ自給自足できるように設計されています。

「モンテローザ ハット」の設計者

 

「モンテローザ ハット」の建設には様々な人や企業、組織が関わっています。世界でもトップクラスの工科大学である、スイスのチューリッヒ工科大学の創立150年を記念して計画が立てられ、19世紀に設立され、現在は17万人以上の会員数を誇るスイスアルペンクラブの1部門が所有する形がとられています。設計にはチューリッヒ工科大学の建築学科の学生も関わっていますが、スイス東部の町クールに事務所を置く「ベアス&デプラゼス アーキテクテン」が手掛けています。この事務所は、2人のスイス人建築家が運営しています。アンドレア・デプラゼスは1960年に事務所を置いているクールで生まれ、チューリッヒ工科大学で建築を学び、卒業した年に事務所を開設しています。バレンティン・ベアスは1957年にスイス東部の小さな村、ティーフェンカステルで生まれ、同じくチューリッヒ工科大学で建築を学び、卒業後はスイスの著名な建築家の元で数年間働き、1988年に2人が共同で運営する建築事務所を開設しています。彼らは共に建築家としての活動の他に母校やいくつかの大学で教鞭も取っています。また、国内の建築に関する様々な機関の役員なども勤めています。

「モンテローザ ハット」の所在地

 

「モンテローザ ハット」は、イタリアとの国境に近いスイス連邦の標高4,634mのモンテローザ山塊の途中に建設されています。「モンテローザ ハット」を含む近隣の山々への入り口は、ツェルマットと言う小さな町にあります。この町は標高1,600mを越える所に位置し、美しい山体で有名なマッターホルンを始めとする標高4,000mを越える山々に囲まれています。居住人口は5,000人程度ですが、歴史は古く、石器時代の人類の痕跡があり、中世ヨーロッパの時代にはイタリアから高い山を越えての交易があった証拠となるいくつかの遺物が見つかっています。この町が注目されるようになったのは、19世紀の半ばにイギリス人の登山家が初めてマッターホルンの登頂に成功してからです。それ以来、世界中の登山家がこの町から山へ登るようになりましたが、19世紀の終わりころに鉄道が敷かれてからは、観光地としても発展するようになりました。現在はウインタースポーツを始め、夏でもスキーが楽しめる所やハイキングコースも整備され、登山家でなくても楽しめるようになっています。多くの人が訪れるようになりましたが、アルプスの環境を守るために観光客などの自家用車の乗り入れは禁止されています。町には電気自動車だけが入れ、自家用車は住民にだけ許可されていて、住民以外は鉄道と電気バスや電気自動車のタクシーでここを訪れることができます。小さな町ですが、世界中の自治体と姉妹都市を提携していて、日本の新潟県妙高市とも妙高高原町の時に姉妹都市となっています。その為もあって町にある「マッターホルン博物館」には日本語の音声ガイド機も備えられています。

 

「モンテローザ ハット」の特徴

 

「モンテローザ ハット」は、標高3,000m近い山の斜面に建設された銀色に輝く不思議な形の山小屋です。不規則な多角形をしている木造の5階建てで、外壁はアルミニウムのパネルで覆われていることから水晶の結晶のように見えます。コンクリートの基礎の上に10本の鋼で作られた土台が放射状に広がり、その上に木材を取り付けて作られています。標高の非常に高い所に建設するため、建物は様々な部分に分けられて、建設現場ではそれを組み立てる方法で作られています。麓のツェルマットの駅までは鉄道が利用され、町からはヘリコプターを使って山まで運ばれました。冬には作業ができないので、夏場だけで2年かけて建設されました。その間、ヘリコプターは約3,000回も山と麓を往復して、「モンテローザ ハット」を建設するための部品を運んでいます。この建物は使用するエネルギーや水をほぼ自給自足できるように設計されています。電気に関しては南側の屋根一面に太陽光発電のパネルが設置されていて、曇天などで発電量が少ないときのための蓄電池も準備されています。暖房に関しても太陽熱を集めるためのパネルが建物のそばに設置されています。また、ゆるい螺旋を描くような階段に添うように、窓が取り付けられていて、そこから太陽光と熱を取り込めるようになっています。大きく傾斜した屋根を取り巻くように見える窓はリボンガラスと呼ばれています。水は1年のうち数カ月間に発生する雪解け水から集められて、敷地の上に造られている地下の貯水槽に貯められています。また、熱エネルギーや水は極力再利用できるような仕組みも取り入れられています。

「モンテローザ ハット」のまとめ

 

初代の「モンテローザ ハット」は19世紀の終わりころに建設された石造りの建物で、当初は建設に大きく寄与した人物の名をとって「ベタン小屋」と呼ばれていました。麓から通常で3~4時間かけて辿り着けますが、実際の登山はこの小屋から始まります。自給の為の様々な装置は、チューリッヒの連邦工科大学から遠隔で操作が行われていて、それらのデータは建築学部の研究に役立てられています。

 

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