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「アブダビ ルーブル美術館 別館」のご紹介
太古の土器が作られていた頃から、身の回りの様々な物を飾るために模様が付けられてきました。世界中で発掘される多くの遺物には、それらが作られた文明や土地柄で特徴のある模様を見ることが出来ます。ペルシャ湾沿岸の都市に建設された建物には、この地域の伝統を取り入れた美しい天蓋が取り付けられています。「アブダビ ルーブル美術館 別館」は展示物に劣らない見ごたえのある建物で構成されています。
「アブダビ ルーブル美術館 別館」の設計者
「アブダビ ルーブル美術館 別館」を手掛けたのは、1945年にフランスの南部にあるフェメルと言う町で生まれたジャン・ヌーヴェルです。両親は教師をしていて、彼に将来は教育者か技術者になってほしいと考えていたようです。10代の半ばで絵を書くことの楽しさを知って、美術の勉強をしたいと望んでいました。両親が反対するであろうと思った彼は、技術者となる建築を学ぶことを口実として美術学校へ進学しました。その後パリの国立大学を首席で入学し、卒業後に務めた建築事務所ですぐにその才能が花開きました。しかし、その当時の建築家はその仕事に対する評価が非常に低く、単なる図面引きとしてしか見られていませんでした。そのことを憂えた彼は、複数の仲間たちと共に建築家の為の労働組合を共同で創設しました。シンジケート・ド・ラルキテクチャーが設立されたことで、建築家は依頼主と同等の立場で仕事が出来るようになりました。彼の作品は、美術に興味があった事からもわかるように、非常に美しい建築物が多く作り出されています。特に、光と影を操るように使ったり、ガラスなどを使い建物に透明感を与えたりする手法が特徴となっています。1994年に彼自身の建築事務所であるアトリエ・ジャン・ヌーヴェルを設立し、現在はパリの本社を始め、イタリアやスイス、スペインにオフィスを構えて多くのスタッフと共に世界中の企画に参加しています。
「アブダビ ルーブル美術館 別館」の所在地
「アブダビ ルーブル美術館 別館」は、アラブ首長国連邦の首都でありアブダビ首長国の首都でもあるアブダビ市のサディヤット島に建設されています。アブダビの「アブ」は父親を表し、「ダビ」はカモシカの一種ガゼルを示すアラビア語の単語で、簡単に説明すると「ガゼルの父」となります。これは、付近にガゼルがたくさん生息していたことと、この地に伝わる民話に由来していると言われています。この街は、ペルシャ湾の南部にあるアラブ首長国連邦のほぼ中央に位置していて、海岸線に沿うように浮かぶ大小の島々に市街地が建設されています。アラビア半島本土と各島の間はそれぞれ数百mしか離れていないので、多くの橋が架けられています。街の中心部は最大のアブダビ島にあって、サディヤット島はその北側で、一番ペルシャ湾側に位置する島となっています。サディヤットとは現地の言葉で「幸福の島」と言う意味があります。東京都三宅島のおよそ半分の広さの島には、多くの博物館や美術館が建設される予定で、アブダビの文化の中心として開発が進められています。アメリカに本拠地があるグッゲンハイム美術館やザイード国立博物館など、すでに多くの建物の建設が始まっていて、世界中の高名な建築家達が手掛けています。他にもコンサートホールや劇場も建設されていて、将来的には国立の大学も開校する予定となっています。
「アブダビ ルーブル美術館 別館」の特徴
「アブダビ ルーブル美術館 別館」で一番最初に目につくのはレースのような天蓋ではないでしょうか。美術館そのものは四角く白い繊維コンクリート製で、全部で55棟ある大小の建物群で成り立っています。建物の間には複数の潮だまりを想定した池が作られ、気温の高いこの地に涼を与えています。海岸に接して建設されているうえ、多くの水場があることで、海に浮かぶ印象があります。建物群のおよそ三分の二を覆うように設置された天蓋は、まるで透かし模様のように見える構造物で、その天蓋を通して差す陽の光は木漏れ日を思い起こさせます。実際、設計者は砂漠のオアシスに立つナツメヤシからこぼれる陽の光をイメージしていると言っています。平たいドーム状の天蓋は8層から成っていて、1つの四角形に4つの三角形を組み合わせた星形を基本としています。星形は全部で7,850個あり、1万以上の金属フレームで構成されています。上の4層はステンレス鋼で下の4層は重量を減らすためにアルミニウムで作られています。それぞれの層を支える支柱は、うまく隠されていて見えないようになっています。直径が180mあり、重さが7,000トンもある重量物ですが、4本の柱で支えられています。この柱は建物の中に隠されているので、天蓋は浮いているように見えます。
「アブダビ ルーブル美術館 別館」のまとめ
「アブダビ ルーブル美術館 別館」の美しい天蓋を支えている4本の柱にはそれぞれ意味が込められています。この街を含むイスラム世界の伝統的な建築物である、モスクや霊廟、キャラバンサライと呼ばれる砂漠を渡る隊商のための宿泊施設、マドラサと言われる学問を学ぶ場所の4つを表していると設計者は言っています。天蓋が作られたのは美術館という建物の特殊性も考慮されていますが、この地域の気候を考えて、訪れる人を強烈な太陽光から遮る役も持っています。「アブダビ ルーブル美術館 別館」は、木漏れ日の差す日傘をさした建物と言えるのではないでしょうか。
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