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「オレンジ・キューブ(リヨン)」のご紹介
フランスの内陸部にある街の家並みは、オレンジの屋根が並んでいます。二つの川が流れるこの街に、ひと際目立つ橙色の箱の様な建物が川の畔に建っています。見た目がちょっと楽しいオレンジキューブをご紹介します。
「オレンジ・キューブ(リヨン)」の設計者
ドミニク・ジャコブ(ヤコブと訳される事もあります)とブレンダン・マクファーレンの二人が、共同で運営している建築事務所が「オレンジ・キューブ」を手がけました。ジャコブはパリで1966年に生まれ、美術や建築も同じくパリで学びました。マクファーレンは1961年ニュージーランドの生まれで、アメリカの大学で建築を学びました。大学を卒業後にアメリカの著名な建築家の事務所で働くようになり、そこで二人は出会いました。1998年に彼らは独立して、「ジャコブ(ヤコブ)+マクファーレン」と言う事務所を開設しました。彼らは、最新の機器を駆使して建築物の設計をしています。特に、AR(拡張現実)と呼ばれる、自分たちの設計した建物をコンピューターで立体化し、建設場所の風景に重ね合わせて見ることができる方法をしばしば取っています。この方法を使えば、頭の中で想像するよりもリアルに見え、誰にでもわかりやすい手法となっています。彼らの作り出す建物は、カラフルでちょっと変わった外観をしたものが多いのですが、光や風、空間を大事にしていることが形となって表れているようです。
「オレンジ・キューブ(リヨン)」の所在地
フランス共和国の内陸部の東寄りにリヨンがあります。パリやマルセイユに次ぐ大都市です。ローヌ川とソーヌ川と言う二つの大きな川が合流する場所にあり、古代ローマ時代に植民地として建設されました。内陸部の交易の拠点として栄え、様々な産業も栄えてきました。その中でも繊維業が盛んになり、特に絹織物が有名になりました。その過程で、ジャガード織やミシンも発明されました。中世後期には、この街の半数近い住人が絹織物に関する仕事をしていたようです。上質で美しい絹繊維は当時の貴族や王室に珍重され、ベルサイユ宮殿にある絹織物は全てこの地で作られたものです。19世紀半ばに、蚕の病気によって絹産業が大打撃を受けた時には日本にも上質の絹が作られていることが知られ、蚕や生糸の買い付けに多くの人が訪れています。このような交流もあったリヨンの地の技術者が19世紀後半に日本にやってきて、世界遺産にも登録されている富岡製糸場を作る手助けをしてくれました。
「オレンジ・キューブ(リヨン)」の特徴
「オレンジ・キューブ(リヨン)」の一番目立つ所は、透けて見えるような外観が鮮やかなオレンジ色をしていることです。2011年に完成したオフィスとショールームが入っている5階建てのビルです。アニメーションなどでよく見かける、穴がたくさん開いているチーズ(エメンタールチーズ)のようで、建物の角の部分に誰かがかぶりついたような大きな穴が開いています。この穴は吹き抜けのようになっていて、建物の屋上の真ん中に開いている穴と繋がり、建物の中央内部にも風と光が届くようになっています。上空から見ると建物のほぼ中央に穴が開いているのがわかります。とても目立つオレンジ色は、この地区が港だったころに、多く使われていた塗料の色から発想を得たそうです。そばを流れるソーヌ川に浮かぶ無数の泡のような大小の丸い穴がたくさん開いていて、透明感があり、アルミニウムで出来たレースに似た、建物を覆うベールの様でもあります。間近で見ると丸い形ではなく、小さい穴は六角形の連なりで、大きい部分はそれ以上の多角形に開けられています。このファサードと呼ばれる外観を装飾している部分と、建物本体の間にはかなりの空間があって、各部屋のベランダや外通路の役割を果たしています。
「オレンジ・キューブ(リヨン)」のまとめ
この街を流れるソーヌ川とローヌ川の合流地点に近い場所に建っている「オレンジ・キューブ」は、この地区の再開発の一環として建てられました。以前は倉庫や造船所のドックなど港湾施設が立ち並ぶ、オールド・ハーバーと呼ばれていた地区でした。現在は再開発が行われ、新しい試みを持った建物や斬新な建築物が立ち並び、遊歩道なども整備された美しい地区に生まれ変わっています。
余談ですが、「オレンジ・キューブ(リヨン)」は、地元の人々が親しみを込めて「ラ・ミモレット」と呼んでいます。「ミモレット」は、この地域の伝統的なチーズで、牛乳を原材料にした丸い形をした濃いオレンジ色をしています。
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