コメラ リーダーシップセンター(Komera Leadership Centre)

「コメラ リーダーシップセンター」のご紹介

 

建築家は建物のデザインや設計が主な仕事の職業です。しかし、建築家の仕事を通じて様々な活動を行っている人もたくさんいます。アフリカの貧困や紛争で落ち着いた暮らしが出来ない、発展途上と呼ばれる国に建築家として支援を行っている人物が手掛けた「コメラ リーダーシップセンター」は、その地域に住む女性の地位向上と地域の交流を目的として建設されました。

「コメラ リーダーシップセンター」の設計者

 

「コメラ リーダーシップセンター」を手掛けたのは、アメリカのニューヨークと東アフリカの国、ルワンダの首都キガリに事務所を置く、BEデザインです。この建築事務所は2016年にアメリカ人のブルース・エンゲルが開設しました。彼は、ニューヨーク州の北西部に位置する街の伝統ある大学で建築を学びました。近年では建物の設計やデザインだけでなく、様々な社会問題の解決策を模索している建築事務所が増えてきました。ブルース・エンゲルが建築家として活動を始めたころに所属していた事務所も、そのような目的を持っていました。その事務所で、ルワンダの企画に携わり、責任者として2年半ほどその地で暮らしていたことが、現在の彼の建築家としての理念に繋がっているようです。その当時に「女性機会センター」の建設に関わると同時に、ルワンダで唯一の建築専門学校で教鞭を執り、国の未来を担う若い建築家の育成にも寄与しました。その企画を終えて、アフリカの現状を目の当たりにした彼は、アメリカへ帰国してすぐに独立し、BEデザインを立ち上げました。ニューヨークの事務所ではエネルギー消費を抑えた住宅などの建物を手掛け、ルワンダではキガリを拠点として、主に東アフリカの生活向上のために建築を通して貢献しています。

「コメラ リーダーシップセンター」の所在地

 

「コメラ リーダーシップセンター」は、東アフリカのルワンダ共和国にあるカヨンザ地区に建設されました。ルワンダはアフリカでも面積が小さいほうの国で、人口の割に国土が狭いために、アフリカで最も人口密度が高くなっています。19世紀末頃からヨーロッパの国々に統治される前には、この地に王国が存在していました。20世紀半ばに独立して、現在の政治形態になってひとまず落ち着くまでには、多くの問題が起こっていました。20世紀末に起こった大きな政治問題が終息した後、国を1つにまとめるために様々な解決策が提起されました。その中には、もともと男性が支配的な地位にあった社会制度を見直して、女性の社会進出と地位向上に動き出したことが国際的にも評価されています。その証の1つに、国の議会における女性の割合が世界で最も高く、2008年から現在に至るまで過半数を越えています。カヨンザ地区は首都のキガリから東へ約50kmに位置する隣国のタンザニアとの国境がある地域です。ここには国内に3つある国立公園の1つ、アカゲラ国立公園があります。植民地時代に設立された自然保護区で、イヌ科のリカオンが多数生息していました。しかし、農民や密猟者によって多くの動物が殺され、個体数が激減しました。21世紀に入って、アフリカ全土から様々な動物が導入され、現在ではビッグファイブと呼ばれる大型の哺乳類をはじめ、多種多様な動物が生息する公園となっています。

 

「コメラ リーダーシップセンター」の特徴

 

2022年に完成した「コメラ リーダーシップセンター」は複数の小ぶりな建物が集まったような形をしています。この建物は、地産地消と言える建物です。建設に使用された建材のほとんどが建設地の近隣で調達されたもので、実際に建設に携わったのは地元の人々です。また、屋根の形状やレンガ組の壁などを彩っている模様は、この国の伝統的なイミゴンゴと呼ばれる装飾が参考にされています。この模様が屋根の形状にも現れていて、小さめの複数の建物を覆う大きな屋根がジグザグになっている形に見ることができます。壁はレンガで組まれていますが、レンガの積み方によって模様が作り出されています。赤道のすぐ南に位置するこの地域は日差しが強く、それを遮りながら風を通す工夫が、ユーカリの枝を編んで作られた日よけです。屋根の端から垂れ下がるように取り付けられた日よけは、ざっくりとした網目なので、風を通し、視界を大きく遮らないようになっています。この日よけと大きな屋根が、屋内と屋外の境を曖昧にして自由な発想で使える空間を作っています。中央の2つの部屋は半透明の壁と扉で分けられていますが、扉は大きく開けるようになっていて、様々な大きさの部屋に変更することができるようになっています。

「コメラ リーダーシップセンター」のまとめ

 

「コメラ リーダーシップセンター」の「コメラ」とは現地の言葉で、「勇気を持つ」や「強く、自立する」と言うような意味合いを持っています。女性の仕事とされてきたイミゴンゴは、元々牛糞を使った装飾方法で、螺旋模様や幾何学模様の繰り返しが特徴です。一時はこの手法が失われそうになりましたが、現在は国際的にも評価されるデザインとなっています。「コメラ リーダーシップセンター」の建設は、地元の人々の職業訓練も兼ねていました。建設に参加した人々の半数は女性で、国の政策の1つである男女平等を表しています。そのような実際的なことも含めて「コメラ リーダーシップセンター」は、名実ともに地域女性の地位向上に役立っている建物と言えるのではないでしょうか。

 

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