コロンバスの騎士団 本部ビル(Knights of Columbus Supreme Council)

「コロンバスの騎士団 本部ビル」のご紹介

 

世界には多くの慈善団体があります。誰でも知っているようなユニセフやユネスコなどもそうですが、企業が出資している団体や宗教の団体が創設している所もあります。コロンバスの騎士団もそのような慈善団体の一つで、ローマカトリック教会の司祭が19世紀の終わりに設立しました。アメリカ国内に多くの事務所がありますが、「コロンバスの騎士団 本部ビル」は創設されたニューヘブンに建設されました。

「コロンバスの騎士団 本部ビル」の設計者

 

「コロンバスの騎士団 本部ビル」を手掛けたのは、アイルランドで生まれたケヴィン・ローチ(または、ケヴィン・ロシュとも表記されます)です。1922年に首都であるダブリンで生まれましたが、小さいころに過ごしたのは国の南部にある小さな町でした。アイルランドの大学を卒業した後、数年は母国やイギリスの建築事務所で働いていました。その後、大学院で研究を重ねたいと希望してアメリカの大学3校に願書を提出しました。全ての大学で入学を許可されましたが、彼が選んだのは、モダニズム建築を代表する建築家の1人、ドイツ人のミース・ファン・デル・ローエに教えを乞うためにアメリカ中東部に位置するイリノイ州のイリノイ工科大学でした。学業の傍ら様々な経験を重ね、1966年に建築事務所を開設しました。彼は、自分の作品が紹介される時に嫌っていた表現がありました。自分自身はモダニズム建築の先駆者とも言える人物に師事していましたが、自分が手掛けた建築物に対して、モダニズムとかポストモダンなどの型にはめたような解釈を嫌がっていたようです。このことは、彼自身が紹介される時にも言っていました。アメリカを中心にヨーロッパや日本にも彼の手掛けた作品がありますが、2019年にアメリカにある自宅で96歳の長い人生を終えています。

「コロンバスの騎士団 本部ビル」の所在地

 

アメリカ合衆国の東部にあるコネチカット州のニューヘブンと言う街に、コロンバスの騎士団の本部があります。現在の「コロンバスの騎士団 本部ビル」が、この街に建設されたのは1969年です。湾を隔てて対岸にはニューヨーク州のロングアイランドが見えます。17世紀の初め頃にオランダ人が先住民族の一部族と交易を始めましたが、長続きせずに終わりました。数十年後、イングランドの牧師がこの地を訪れ植民地として開発を始めました。この街は、植民の最初から将来を見据えた街づくりが行われました。計画的に道路を作り、いわゆる碁盤の目のように区画を整備して次第に街は大きくなっていきました。都市計画の中には街路樹の植樹も含まれていて、広葉樹の楡(ニレ)が多く植えられて「エルム(ニレ)シティ」の愛称も付けられました。しかし、最初に植えられた楡は、20世紀半ばに病気のためにほとんどが枯れてしまいました。枯れた木は植え替えられて現在も多くの楡がこの街を緑で潤しています。ニューヘブンは、国内でもトップクラスのイェール大学を始めいくつかの大学と、多くの研究機関もあり文化都市、または、学術都市としても知られています。特にイェール大学は、街が建設されて間もなく開校した学校で、卒業生の中には政治家や実業家、あらゆる分野の学者などがいて、多くの逸材を輩出しています。

 

「コロンバスの騎士団 本部ビル」の特徴

 

「コロンバスの騎士団 本部ビル」は、いかついイメージのあるビルです。1969年に完成した23階建の建物で、建設当時は斬新なデザインと言われていました。設計者のケヴィン・ローチは、要塞を想起させるような建物にしたようです。まず目につくのは太い4本の柱と言うか、円塔です。直方体の4つの隅に径の大きな円塔を取り付けたような形になっています。この建物は建設の過程も少し変わっています。まず、四隅の円塔と中央部にある塔の合計5本の塔を建てて、それぞれの塔に鋼の梁を渡して床や天井の基礎にしています。います。一番外側の梁は建物の外に出ている為、雨や風などの天候に影響を受けにくい耐候性の鋼が使われています。耐候性鋼は、鉄を基本とした合金で初めから錆を出している素材で、塗装しなくても長期間現状を維持できます。この錆は保護の為に出ているもので、鋼の内部深くまで腐食しにくい特徴があります。梁の色は錆の為に黒っぽい煉瓦のような色になっているので、円塔も同じような色のタイルで覆われています。その様な色でもあるので、なおの事「コロンバスの騎士団 本部ビル」が砦のように見えます。中心部の塔にはエレベーターが取り付けられています。四隅の塔は対角にそれぞれ非常階段とエレベーターが設置されています。

「コロンバスの騎士団 本部ビル」のまとめ

 

「コロンバスの騎士団 本部ビル」の設計者ケヴィン・ローチは、建築界のノーベル賞と言われているプリッカー賞を受賞した時にこう述べています。「滞りなく建設できることは平和的な行為です。それが無駄にならないことを祈っています。」この言葉は彼の人柄と信条を表していると紹介される事があります。平和を祈っていた彼が要塞を想起させる建物を作っていますが、「コロンバスの騎士団 本部ビル」の4本の塔には「慈善、友愛、団結、愛国心」と言う意味合いが込められていて、コロンバスの騎士団が結成された意義を具現化した建物と言っても過言では無いのかもしれません。

 

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