ジュセリーノ・クビチェック橋(Juscelino Kubitschek bridge)

「ジュセリーノ・クビチェック橋」のご紹介

 

南米のブラジルに新しい首都が建設された時には、20世紀で最大の都市建設と言われていました。その当時の大統領に因んだ名前が付けられている場所が新しい首都のブラジリアにはいくつかあり、空の玄関である空港にもその名が冠されています。大都市の課題の一つに円滑な交通事情が上げられますが、この街も成長するにつれて道路の拡張などが行われてきました。街の中心部から空港へ向かうためには湖を渡る橋が必要でしたが、すでにある2つの橋では常に渋滞が起こっていたため、新しい橋を架ける事になりました。元大統領の名を冠した「ジュセリーノ・クビチェック橋」は、一見の価値がある美しい橋で、街の新しいランドマークになっています。

「ジュセリーノ・クビチェック橋」の設計者

 

「ジュセリーノ・クビチェック橋」のデザインと設計を手掛けたのは、ブラジルの建築家アレクサンドル・チャンです。1942年に当時は首都だったリオデジャネイロで生まれた彼は、10代の頃に将来は心理学者になりたいと思っていたようです。リオデジャネイロの大学で建築を学びましたが、彼は入学試験を首席で入学していました。学生時代の頃に首都の移転が決まり、ブラジリアの建設を身近で見て、新しい都市ができる稀な機会に恵まれました。大学を卒業して数年後に、大きな企画の建築設計競技会に応募し、見事優勝を勝ち取ったにもかかわらず、その企画で要求された事柄を論文にしたかっただけだと、その仕事は請け負いませんでした。他にも、大学で建築や都市計画の教授に推薦されましたが、彼は教育だけに専念する時間がないとの理由で辞退しています。大学を卒業してからは個人で建築設計を請け負ったり、建築に関する様々な相談を受けたり、提案をしています。その間に、国や地域の建築や土木に関わる人たちを取りまとめられる組織の立ち上げに携わり、組織の運営にも関わっています。彼はあまり多くの建設に関わっていませんが、数少ない作品でも大きな評価を受けている企画があります。ほとんどの作品が生まれ育ったリオデジャネイロと首都のブラジリアにありますが、国際的にも高い評価を受けているものがあります。

「ジュセリーノ・クビチェック橋」の所在地

 

ブラジル連邦共和国の首都、ブラジリアの東部にある人工湖のパラノア湖に3本目の橋として架けられたのが「ジュセリーノ・クビチェック橋」です。元々ブラジルの首都はリオデジャネイロにありましたが、サンパウロと共に国の大都市が大西洋岸に集中していることが、広い国土を持つブラジルにとって不都合が多かったようです。1822年にポルトガルの植民から独立して100年を記念して、1922年に現在のブラジリアがある地に礎石が建てられました。首都の建設はわずか3年半で一通り完成して、1960年に首都機能を内陸の地に移転しました。標高が1,000mを越える高原地帯なので、緯度が低い割に気温はあまり高くなく、夏季でも通常は30℃を越える日は少なく、1年を通して気温の差はあまり大きくありません。「ジュセリーノ・クビチェック橋」が架かるパラノア湖は、パラノア川が流れる盆地のような地形だった所を、川を堰き止めて首都の建設と共に人工の湖が造られました。48㎢の広さがあり、深さは平均で12mほどですが最大深度は38mでかなり深い場所もあります。人工の浜辺や船着き場などが整備されていてウォータースポーツが楽しめます。また、導入された魚類もいますが、在来の魚も生息しています。他にも水辺をねぐらとする鳥類や哺乳類など、人工の湖とは言え比較的豊かな生物相が育まれています。

 

「ジュセリーノ・クビチェック橋」の特徴

 

「ジュセリーノ・クビチェック橋」は、市街地からパラノア湖を渡って空港へ向かう、3番目の橋として2002年に完成しました。長さが1,200mで、幅が24mあり、船が往来できるように橋桁から水面までは18mあります。最大の特徴であり、世界で最も美しい橋と言われる要因の3つのアーチの最大の高さは路面から61mあります。橋は4本の橋脚とアーチからのケーブルで支えられていますが、橋の本体とアーチは接してはいません。アーチは橋の橋脚の基礎に斜めに差し込まれるようになっているため、深さと土壌の問題で、最初の計画より基礎が大きくなりました。橋桁を斜めにまたぐように設置された3つのアーチは、連続して3回橋をまたいでいます。この形は、水面に向かって石を投げて水の上を跳ねる様子を表す、「水切り」と呼ばれる遊びから設計者が発想を得たようです。橋の構造としては珍しく、アーチから鋼鉄製のケーブルが伸びていますが、純粋な吊り橋ではありません。橋桁を斜めに跨いでいることから、そこから伸びるケーブルの見た目が角度によって違う模様に見えます。ほぼ真横から見ると、水面に映った反転した姿と一体化してDNAの2重螺旋に似ているとも言われます。橋を軽くするために、路面の舗装は特殊な合成樹脂を利用した物が使われています。この素材は耐久性が高いので、薄くても使用に耐えることができるため、重量が少なく、橋の負担を少なくすることができます。

「ジュセリーノ・クビチェック橋」のまとめ

 

「ジュセリーノ・クビチェック橋」を建設することが決まった時に、街の新たなランドマークにしたいことが要望の一つに上がっていました。設計者は今までにないデザインを考えましたが、建設には様々な苦労もあったようです。優雅な姿の「ジュセリーノ・クビチェック橋」は新しい橋の形を作り上げたとともに、世界でも極めて美しい橋と賞賛されています。

 

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