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「ハイポ アルペアドリア センター」のご紹介
どんな大都市でも無限に広がっているわけではありません。中心部にそびえる高層ビル群も中心から離れるにしたがって次第に少なくなり、都市周辺にある住宅地などに風景が変わっていきます。都市と郊外の境界線ははっきりした形で現れるわけではありませんが、おおよその雰囲気がわかる場所もあります。「ハイポ アルペアドリア センター」は、都市と郊外を繋ぐように意識され、境目を更に曖昧にするような形状になっています。
「ハイポ アルペアドリア センター」の設計者
「ハイポ アルペアドリア センター」を手掛けたのは、アメリカの建築事務所、モーフォシスを創設したメンバーの1人のトム・メインです。カルフォルニアの大学で建築を学び、将来は必ず必要になるとの思いからハーバード大学で都市計画を学びました。1944年アメリカの北東部にあるコネチカット州ウォーターベリーで生まれました。子供の頃に両親の都合で母親と弟と共にカルフォルニアへ移り、余り恵まれない生活を送っていたようで、当時の自分を「とても孤独な子供だった」と言っています。建築を学んでいる頃に彼は、それまでのような教育に疑問を抱くようになりました。もっと自由な発想と先進的で柔軟な考え方で建築を学びたいと思うようになって、5人の学生や教師と共に新しい建築専門学校の創設に関わりました。この学校が作られることになった発端は、参加した教師が既存の大学との間に意見の相違があり、袂を分かつことになったからです。このように彼の人生の前半はとても波乱万丈でした。その為もあるのでしょうが、非常に喜怒哀楽の激しい一面もあるようで、依頼者に対して大きな声で怒鳴ったこともあったようです。新しい学校の南カルフォルニア建築研究所を設立したのと同時期に数人の仲間と共にモーフォシスを開設しています。
「ハイポ アルペアドリア センター」の所在地
「ハイポ アルペアドリア センター」は、オーストリア共和国の南部にあるケルンテン州の州都、クラーゲンフルトに建設されています。この街は2008年から西に広がる湖の名前も繋げて、クラーゲンフルト・アム・ヴェルターゼと正式名称が変更されています。街の名前のクラーゲンフルトの語源は、古い言葉で「水辺の場所」と言う意味があります。これは、街の西にあるヴェルター湖のことではなく、南部を流れている川に由来していると言われています。正式に自治体として歴史に登場したのは13世紀ですが、街が作られた伝説も残されています。人々を襲っていた邪悪な竜を搭を建て、計略によって退治したと伝えられています。この伝説を意匠化したものが街の紋章になっていて、中心部にある公園の泉に像も設置されています。この街は国の南部中央に位置することに加え、隣国スロベニア共和国との国境に近いことから、交通の要所としての役割があります。鉄道や高速道路の分岐点が作られていて、国内で最初の空港が建設されています。1914年には建設されて、1925年には首都のウィーンとの間に軍用として使われていました。現在は国内にある6個所の商業空港の中で最小ですが、国際空港としてヨーロッパ各国との間に航路が接続されています。
「ハイポ アルペアドリア センター」の特徴
2002年に完成した「ハイポ アルペアドリア センター」は、一言では表せない形状をした建物です。都市と郊外を繋ぐような意図を持つ不規則な形をしていて、見る方向で違う建物のようになっています。建物の南側は大通りに面していて、通りの反対側は商業地帯になっています。北側には住宅地が広がり、「ハイポ アルペアドリア センター」がその繋ぎ目のような役割を果たしています。幹線道路と交差した道の交差点に位置していて、敷地は三角形をしています。複数の建物が交わっているような印象があります。西側は、平屋のような低い建物になっていて、大きな平たい屋根が地面のぎりぎりまで下がってきて、そこから折れ曲がって大きくせりあがり南側の建物に寄りかかるような感じになっています。この屋根の形状はアルプスの山を意識したデザインの形になっています。南側は大通りに面した5階建ての建物で、ガラス壁の外側に取り付けられている鋼の桟が網目のようになっていて都会的なイメージがあります。その建物にはすぐ後ろにある建物から貫通した形になったバルコニーが設置されていて、建物の表面から突き出ています。敷地の中心部には中庭が作られて、その周辺を取り囲むように建物が広がっています。それぞれの建物を繋ぐ通路はガラスで覆われていて、とても明るく、建物内部の奥にも日の光が届くようになっています。
「ハイポ アルペアドリア センター」のまとめ
都市の中にある多くの建築物には多様な目的と役割があり、それぞれの目的に応じた形や外観を備えています。「ハイポ アルペアドリア センター」は簡単には表現できない形状ですが、街を構成している様々な施設や地区を繋いでいることを考えた結果として行きついた形ではないでしょうか。
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