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「ヘルドラ バードウォッチングタワー」のご紹介
数多くの鳥たちが飛来し、羽を休めたり、営巣して子孫を増やしたりしている小さな島が北欧の海に浮かんでいます。過去には戦争のために利用されていた歴史がある島です。その負の遺産とも言える場所に、様々な鳥たちを観察するための施設が建設されました。「ヘルドラ バードウォッチングタワー」は簡素な作りですが、鳥を驚かさないよう、静かに安心して観察できるように配慮された建物です。
「ヘルドラ バードウォッチングタワー」の設計者
「ヘルドラ バードウォッチングタワー」を手掛けたのは、ノルウェーの建築家で造園家でもあるラース・J・ベルゲです。オスロの大学で建築と造園を学び、ノルウェーを代表する建築企業の「スノヘッタ」で働いていました。スノヘッタは建物の設計、建築だけでなく、周囲の景観もデザインしている企業です。ラース・J・ベルゲは、故郷のハンダルゲル地方の文化や風景、伝統ある建築物などに影響されて造園、建築家の道に進んだようです。ハンダルゲル地方はノルウェーの南西に位置し、豊かな自然に恵まれ、農業が主な産業で古くからの手工芸が伝えられています。彼の建築理念は、建物を作ることだけでなく、建設場所の周辺の景観も合わせて総合的に評価する事です。このような考えはスノヘッタも基本的には同じで、彼の元々の考えと共にノルウェー第二の都市ベルゲンに拠点を置く、2004年に開設した「LJB建築と造園」に引き継がれています。新しい技術も積極的に取り入れていますが、地域の伝統も大事にして、建設地にある素材を利用した建物を作っています。彼の風景を大事にする考えは、景観やその他の理由から保護されている地域で力を発揮しています。
「ヘルドラ バードウォッチングタワー」の所在地
スカンジナビア半島の西側に広がるノルウェー王国のヘルドラと言う小さな島に「ヘルドラ バードウォッチングタワー」が建設されています。ヘルドラ島は、ノルウェー海沿岸に数多くの島々がある「多島海」の中の一つの島で、ノルウェーの南西部に位置しています。フィヨルドが作り出す複雑な海岸線と大小様々な島が浮かび、住人のいない島もたくさんある場所です。広さが1,6平方キロメートルの小さな島のヘルドラ島には100人程の人々が住んでいて、島のほとんどが自然保護区に指定されています。島の形状が比較的平らで、北部には淡水の自然の池があり、海岸は遠浅になっています。そのような地形のため、鳥類の繁殖や渡りの中継地点となっていて、200種以上の鳥が確認されています。第二次世界大戦の頃には占領されて、飛行場が建設され、島全体が空軍基地となっていました。終戦後に強制移住させられていた住人が島に戻りましたが、住んでいた家は壊されていました。人々は、基地に使われていた材料を使って小屋を作り凌いでいたと伝えられています。現在も当時の基地の一部が廃墟となって残っています。ヘルドラ島の南端には隣接した島と繋ぐ橋が架かっています。更にその島を南に進むと国で第二の都市で、この地域の中心となるベルゲン市があります。
「ヘルドラ バードウォッチングタワー」の特徴
「ヘルドラ バードウォッチングタワー」は、遮蔽物が何もない広場のようなところに作られています。第二次世界大戦のときに飛行場の滑走路として使われていた平坦な場所で、樹木もなく、草原のようになっています。「ヘルドラ バードウォッチングタワー」の基礎は飛行場の基礎だったコンクリートを利用し、その上に円筒のような建物が作られています。円筒の中心には鋼製の螺旋階段が作られていて、上層階に上がれます。一見すると、とても簡素な円筒ですが、この建物には柱が1本しかなく、床や屋根はその柱だけが支えています。円筒形にされたのは、360度の展望ができるように考えられていて、床になる骨組みは中心の柱から放射状に延びています。床の端には、円周に沿った腰壁ほどの高さの木製の細い板で覆われた壁がめぐらされ、屋根の部分は平らな傘のように中心の柱から円形に広がっています。下層の部分は、入り口から緩やかな傾斜のスロープで上がれるようになっていて、車椅子などでも野鳥の観察ができるようになっています。斜路や円筒の外壁には木材が使用されていることから、自然の風景に溶け込むようになっています。その為、高さが地上から7mあるにも関わらず、少し離れると建物がどこにあるのかはっきりと視認できなくなっています。
「ヘルドラ バードウォッチングタワー」のまとめ
「ヘルドラ バードウォッチングタワー」が建設されている場所は、西側に浅瀬のある海岸があり、東側には小さな天然の淡水池があって野鳥の水飲み場を提供しています。木造で周囲に溶け込む作りは、飛来する野鳥に警戒心を与えないように配慮されています。「ヘルドラ バードウォッチングタワー」は、国の内外から熱心な野鳥観察のファンが訪れていますが、観察する人も野鳥たちにも安心して使える施設となっています。
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