ゲーツヘッド・ミレニアムブリッジ(Gateshead Millennium Bridge)

「ゲーツヘッド・ミレニアムブリッジ」のご紹介

 

世界中には多くの橋が架けられています。そして、橋の歴史は人の歴史と同じ長さと言えます。橋の構造や種類も多岐にわたり、素材も様々なものが使われています。多種多様な橋の中でも吊り橋は見た目のとても美しい姿をしているものが多く、人々はわざわざ見に行ったり渡れる場合には実際に橋を渡ったりしています。イギリス北部の街を流れる川に架けられた「ゲーツヘッド・ミレニアムブリッジ」は、素敵な形に加えて、川を航行する船の為に動くようになっています。

「ゲーツヘッド・ミレニアムブリッジ」の設計者

 

  「ゲーツヘッド・ミレニアムブリッジ」の建設にあたっては、建設計画を立てた自治体が設計競技会を開催して、最終的にはその自治体の住人が気に入ったデザインの投票も行いました。150以上の応募の中から見事に優勝を勝ち取ったのは、ロンドンに拠点を置くウィルキンソン エアでした。この建築事務所はクリストファー・ジョン・ウィルキンソンとジム・エアが共同で運営しています。クリストファー・ジョン・ウィルキンソン(クリス・ウィルキンソン)は1945年にイギリス南部の町で生まれ、当時は男子だけが入学できた国内で最も古い学校の1つで初等と中等教育を受けました。ロンドンにある工科大学で建築を学んだあとに、ブルータニズム建築で有名な建築家の元で働いていました。その当時に、休暇中の旅行先でイギリスの著名な建築家達の作品に触れ、帰国してすぐに両者が運営する事務所に応募し、1971年にノーマン・フォスター卿が率いる会社に入社しました。10年後の1981年には旅行先で感銘を受けたもう1人の建築家、リチャード・ロジャースの事務所で働くようになりました。いくつかの建築事務所で働いていた時期に多くのモダニズム建築の作品に触れた彼は、1983年に独立して建築事務所を開設しました。4年後にジム・エアと共同で事務所を運営することになった時に社名を「ウィルキンソン・エア」と改名しています。国の栄誉ある勲章も授けられた彼は、2021年に現代では若いとも言える76歳でこの世を去っています。

「ゲーツヘッド・ミレニアムブリッジ」の所在地

 

「ゲーツヘッド・ミレニアムブリッジ」はグレートブリテン&北アイルランド連合王国(通称イギリス)を構成する4つの王国のうち、最大の広さと人口を有するイングランドの北東部を流れるタイン川に架かっています。「ゲーツヘッド・ミレニアムブリッジ」の企画を立ち上げたのはタイン川南岸に広がるゲーツヘッドと言う自治体で、対岸のニューカッスル・アポン・タインとの間に架かる複数の橋の中で1番新しい橋です。ゲーツヘッドは比較的大きな川であるタイン川とその支流が交わる場所に近いことで、古くから人々の住む集落が存在していました。ローマ時代には対岸との間に橋が架けられ、ゲーツヘッドの地名が歴史上に初めて記されたのは7世紀です。地名にはいくつかの説がありますが、12世紀の文章にある「野生のヤギが訪れる丘」と言う意味が一般的となっています。北海には面していませんが、海岸まで10数㎞の位置にあるので海流の影響を受け、緯度の高さの割には寒くない気候です。冬季でも氷点下を下回ることは少なく、夏季では20℃を越えることはあまりありません。降水量は年間を通して同じくらいですが、比較的少ないので、川沿いの地域でありながら国内でも乾燥した地域となっています。

 

「ゲーツヘッド・ミレニアムブリッジ」の特徴

 

2001年に開通した「ゲーツヘッド・ミレニアムブリッジ」は、歩行者及び自転車の為の橋です。ゲーツヘッドと対岸のニューカッスル・アポン・タインの間を渡る7本目の橋で、1番下流に架かっています。世界でも稀な稼働する吊り橋で、2つの鋼鉄で作られたアーチで構成されています。人や自転車が通る橋桁は緩やかな弧を描いていて、それを支えるためのアーチと18本のケーブルで繋がっています。橋の長さは126mで、アーチの最大高は川の水面から50mあります。橋を支えるケーブルが繋がれている部分がアーチ状にされた理由の1つは、タイン川に架かる隣の橋の形状と揃える意味があります。橋全体が40度傾くように稼働してタイン川を航行する船を通すようになっていて、可動には川を流れる水を動力源としたポンプが両岸に3機づつ設置され、850トンの橋全体を開閉するのにそれぞれ約4分かかります。橋桁の高さは、川の水面が通常時で一番高くなる春の満潮時でも水面から4.5mになっています。橋が開いたときには、橋桁から25mの隙間ができて船の航行が滞りなく行われるようになっています。橋桁にはステンレス製の欄干が設置され、傾いたときに橋の上のゴミが滑り落ちて両方の端にある溝に集まるようになっていて、自浄できる橋となっています。

「ゲーツヘッド・ミレニアムブリッジ」のまとめ

 

「ゲーツヘッド・ミレニアムブリッジ」の建設にあたっては、様々な条件が課せられました。誰でも安全に渡れるように、例えば車椅子の人でも楽に通行できるよう傾斜角度が小さくされています。他にも、川岸には橋のための構造物を何も建設しないことなどがありました。また、橋の開閉を知らせる光や、夜間の照明も近隣に光による害を与えないようにケーブルは極力細く、光を反射しないようになっています。このような条件を解決した上で、美しい姿と実用的な目的を融合させた「ゲーツヘッド・ミレニアムブリッジ」は、新しい千年紀にふさわしい橋と言えるのではないでしょうか。

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