ガンド小学校(Gando Primary School)

「ガンド小学校」のご紹介

 

子供の頃の経験がその後の人生に大きな影響を与えることになった人は多いのではないでしょうか。しかし、強い信念を持っていても、ある程度の運が必要となることもあります。アフリカの小さな村に生まれた1人の子供が、大人になって知識を手に入れた時に1番最初に起こした行動は、故郷の村への思いを形にすることでした。「ガンド小学校」は、1人の子供が思い描いた夢の1つが具現化した施設であり、今の子供たちの未来を広げる学校となりました。

「ガンド小学校」の設計者

 

「ガンド小学校」の建設計画と設計を担ったのは、アフリカ出身の建築家、ディエベト・フランシス・ケレです。1965年に西部アフリカの内陸の国ブルキナファソにある小さな村で彼は生まれました。村長をしていた彼の父親は、長男に教育を受けさせたいと考えていましたが、その村には学校がありませんでした。彼が7歳になった時に隣の村にいる親戚に預けられ、小学校に通い、初等教育を受けることが出来ました。彼の建物に対する1番古い感情は、幼い頃に家族が集まる安心できる家でした。しかし、通った小学校はけっして良い環境ではありませんでした。とても暑い気候の地域で、広いとは言えない教室に多くの子供たちがすし詰めのような状態で勉強していました。そのころの彼は、教育はもっと良い環境で受けるべきだと幼いながらも感じていたようです。初等教育を終えてから大工の見習いとして働いていましたが、20歳の時にドイツへ行くチャンスを得て、1人でベルリンへ移住しました。そこで大工や家具職人の見習いをしながら中等教育を受けた後に、ベルリンの工科大学で正式に建築を学び始めました。ドイツでの生活は故郷とは比べ物にならない物でしたが、常に故郷への思いは彼の胸にありました。その思いは、彼が在学中にも関わらず、古里の村に学校を作ることへの情熱とそれに伴う行動に現れています。学校建設のための資金調達のために財団を設置したことと、実際の建設に古里の人々を引き込んだことです。その彼の行動は高く評価され、学生の身でありながら大きな賞を受賞しています。また、2022年には建築界のノーベル賞と謳われるプリッカー賞を、アフリカ出身の建築家として初めて受賞しています。

「ガンド小学校」の所在地

 

「ガンド小学校」は、アフリカ西部の内陸の国ブルキナファソにあるガンドと言う村に建設されています。ブルキナファソは共和制国家ですが、世界で最も貧しい国の1つとされる国です。古い時代には、いくつかの王国がこの地域を治めていましたが、19世紀の終わりにフランスの植民地となってフランス領西アフリカの1部でした。1958年に自治が行えるようになって、その後の1960年にオートボルタ共和国と言う名の独立国家となりました。現在のブルキナファソと言う国名になったのは1983年の事です。国名には様々な解釈がありますが、「高潔な人々の国」や「正直な人々の国」、「正義の人の国」のような意味があります。国土はほぼ平坦で、国で1番高い山でも標高が800m未満です。気候は熱帯性で、平均気温は年間を通して30℃を越え、降水は5月から9月の雨季に雨が降り、特に8月頃に大量の雨が降ります。乾季には雨の降らない日が多く、旱魃に見舞われることもしばしばです。しかし、この国を源流とする大きな川の支流が複数あり、中には乾季でも水の流れる川があります。森林地帯は全て国有地となっていて、国立公園や自然保護区となっています。その中には、地球上でも数少ない生物の多様性を保ったホットスポットも存在しています。

 

「ガンド小学校」の特徴

 

2001年に完成した「ガンド小学校」は、首都のワガドグゥーから南東へおよそ130km離れたガンド村に建設されました。資源も資金も少ない状況下で最大の効果をもたらす建物が作られました。大きな屋根の下に、それぞれ独立した形の教室となる建物が3棟作られました。基本的に壁はレンガを組み合わせて作られています。元々、この地域では粘土を使って家を作っていましたが、レンガの形にすることで、それまで作られていた建物より大きく頑丈にすることが可能となりました。建設資材として現場で採取された粘土を使用することは、安価で手に入る素材であり、修理が必要になった時にも入手が簡単です。しかし、粘土だけのレンガでは耐久性に問題があったことから、他の土との混合でその問題を克服しています。また、レンガの厚い壁は外気の高温を防ぐ効果もあります。伝統的にこの地域の家屋の屋根はトタンの波板が使用されていましたが、雨季の雨を防ぐ役には立っても、照りつける太陽熱も取り込んでいました。そこで考案された屋根は、亜鉛の板が使用され、建物の天井との間に隙間が設けられています。天井は壁と同じ素材のレンガが使われていますが、中心に穴の開いた形状の物が使われていて、室内の温度を下げる機能があります。暑い空気は上昇して天井に開いた多くの穴から排出されます。天井と屋根は、網の目のように組み合わされた細くて軽いスチールの柱が支えています。

「ガンド小学校」のまとめ

 

暑く、乾季と雨季の違いのあるこの地域で学ぶための快適な空間を作るために、設計者は全力を傾けました。裕福とは逆のこの村に学校を作ることは様々な困難を有しました。しかし、設計者は学校を作るために資金調達や知識だけではなく、将来のことも見据えて、村人全員を巻き込みました。結果として、この学校は村民の誇りとなり、現在は教員住宅や図書館なども建設されています。「ガンド小学校」の建設は、この村が発展していく始まりだったと言えるのではないでしょうか。

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