ダカール 国際会議センター(Dakar Congress Center)

「ダカール 国際会議センター」のご紹介

 

世界中で洋の東西を問わず、遥か昔から人々の代表である王や部族の長がいました。そして国同士の問題が起きた時に賢明な長であれば、平和的な話し合いで解決してきました。アフリカの西部に古来より存在した小さな国々では、この地域に数百年から千年以上の樹齢を持つ大木の下で話し合いによって様々な問題を解決に導いていたと伝えられています。西部アフリカにある国に建設された「ダカール 国際会議センター」は、その言い伝えに沿った大木の木陰を彷彿とさせる建物です。

「ダカール 国際会議センター」の設計者

 

「ダカール 国際会議センター」を手掛けたのは、トルコのイスタンブールに拠点を置く建築事務所のタバンリオグル アーキテクツです。この事務所は元々、トルコの近代建築をけん引してきた建築家のハヤティ・タバンリオグルが1950年に開設した建築事務所を引き継いだ会社で、息子のムラット・タバンリオグルがウィーンの大学に在学中の1990年に、親子で運営する形になりました。1994年に父親が病気で亡くなった後は、息子とそのパートナーであるメルカン・ギュルセルの二人で事務所を切り盛りしています。ムラット・タバンリオグルは1960年にトルコの大都市、イスタンブールで生まれました。メルカン・ギュルセルは1970年にイスタンブールで生まれ、その街の大学で建築を学びました。彼女は、タバンリオグル アーキテクツが開設された2年後の1992年にこの事務所にパートナーとして迎え入れられています。ハヤティ・タバンリオグルが闘病中にもかかわらず進めていた企画を、息子のムラットが引き継いで完成させた建物が彼の初期の成果になっています。それ以降、建築に関わる様々な分野で活躍しています。彼らの事務所は地元のトルコをはじめ、アフリカや中東での比較的大規模な企画を手掛けています。現在の創設者2人は様々な賞を受賞していて、国の内外で講演を行ったり、複数の大学で教鞭をとっています。

「ダカール 国際会議センター」の所在地

 

「ダカール 国際会議センター」は、アフリカの1番西に位置するセネガル共和国の首都、ダカールに建設されています。この街は、青森県の下北半島を西へ90度回転させたような形のカーボベルデ半島に広がっていて、アフリカ大陸の最西端の岬があります。アフリカとヨーロッパ、アジアが1つにつながっている大陸であることから、その岬にはそれらの地域を代表する都市への道しるべが設置されています。この地域は太古の火山が波や風に浸食されて出来た場所で、比較的平坦な地形の中に火山の名残となる2つの丘があります。標高は100mくらいですが、周囲が平地なので丘の上からは街を見下ろすことができます。丘の1つには19世紀に建設されたマメル灯台があります。この灯台は国で1番古く、アフリカ大陸でも南端の喜望峰にある灯台と共に重要な役割を担っています。北回帰線より南に位置する低緯度の地域ですが、半島なので大西洋からの風があるため、気温は1年を通して20℃前後であまり暑くなりません。しかし、乾燥した気候なので降水量が少なく、8月と9月以外はほとんど雨が降りません。15世紀にヨーロッパから人々がこの地に来るまでは、漁業を営んでいた少数の人が住んでいました。ヨーロッパの国々が領土権を主張して、幾たびも戦いがありましたが、1960年にセネガルが独立する直前はフランス領西アフリカの首都を勤めていました。様々な苦難を乗り越えてきた歴史があり、現在は太古から引き継がれてきたアフリカの多様な文化を発信する重要な拠点を担っています。

 

「ダカール 国際会議センター」の特徴

 

「ダカール 国際会議センター」は、遠い昔に優れた首長たちが話し合いによって問題を解決していたと言われるバオバブの木の下を思い起こさせる建物です。2014年に第15回フランス語圏会議の為にわずか11カ月で建設されました。3つの棟に分かれている建物ですが、それらを覆うように作られた屋根が印象的です。建物は周囲を水盤のような池に囲まれていて、時間と共に水に映る姿が移り変わっています。3つの棟のうち中央が1番大きな建物で、1,500人が収容できる大会議場になっています。左右の棟とは水盤を渡る橋で繋がっています。外壁はガラス壁になっていますが、ねじった形の金属メッシュの板がガラス壁を取り囲んでいます。透明なガラスに縦型のブラインドのように取り付けられていることで、透明性を失わず明るさはそのままで、太陽熱の吸収を抑えることができます。1番の特徴である大きな屋根は、バオバブの木が大きく枝を伸ばした様子を幾何学的な形に表しいています。大木の下の木陰を思い起こさせるような影が、柱や壁、床に表され、時間と共に移動していきます。この建物の建設は時間が限られていたこともあり、変わった順番で建てられています。まず最初に設置されたのが大きな屋根を支える太い柱でした。その後、柱に梁が渡され、建物本体と同時進行で建設されました。施設の性質上、機密を保つことが重要ですが、心象的な透明性も持たせることもできた建物となっています。

「ダカール 国際会議センター」のまとめ

 

「ダカール 国際会議センター」が建つセネガルの国花はバオバブの花で、国の紋章にはバオバブの木が記されています。賢明な先人たちが集ったバオバブの木は、長寿の木や平和の木とも呼ばれています。「ダカール 国際会議センター」の屋根は平和の屋根とも呼ばれ、この地では貴重な水を使った水盤に映る姿は美しく、賢明な首長達と古から立つバオバブに敬意を表す建築物となっているのではないでしょうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。