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「ヨルダンキ文化会議センター」のご紹介
地球上にはたくさんの洞窟が存在しています。火山活動や水や風による浸食作用など洞窟が形成された過程も様々です。人の手による洞窟も古来より作られてきました。それには教会の地下墓地や、隧道、鉱物の採掘など多様な使用目的があります。天然、人工を問わず洞窟内で楽器の演奏会が催される事もありますが、その目的で作られた洞窟のような建物がヨーロッパの長い歴史を持つ街に建設されました。古い町と新しい街を繋ぐような場所に突然現れた大きな岩のような建物が、「ヨルダンキ文化会議センター(CKKヨルダンキ)」です。
「ヨルダンキ文化会議センター」の設計者
「ヨルダンキ文化会議センター」を手掛けたのは、スペインの建築家フェルナンド・メニス(フェルナンド・マルティン・メニス)です。彼は、1951年に大西洋に浮かぶスペイン領カナリア諸島で最大の島であるテネリフェ島で生まれました。彼は幼い頃、父親が廃材を使っておもちゃなど新しい物を作っているのを見て育ちました。青年時代には、形の定まらない柔らかい素材に興味を持つようになって、これらの経験が建築を学ぶきっかけになったと言っています。テネリフェ島の学校で建築を学び始め、最終的にはスペイン本土のバルセロナで学業を終えています。大学を卒業した彼はフランスのパリに移り、建築家としての仕事を始めました。スペインには無い様々な文化に触れたことは、その後の彼の活動に大きな影響を与えているようです。フランスで経験を積んだ彼は、30代の頃に故郷の島に帰り、2人のパートナーと共に共同で建築事務所を開設しています。2004年に独立して「メニス・アーキテクトス」を創設してテネリフェ島に本拠地を置き、スペイン本土にもオフィスを置いています。彼は建築の為の材料にこだわりがあって、資源の再利用や天然の素材を好んで使っています。また、都市の景観の中に新しい自然を組み入れるように、自然の中にある物を思い起こさせるような建物を作り出しています。
「ヨルダンキ文化会議センター」の所在地
「ヨルダンキ文化会議センター」は、ポーランド共和国の中央北寄りにあるトルンと言う都市に建てられています。首都ワルシャワから北西に約180kmの内陸の街です。国で1番長く、バルト海に注ぐ河川でも1番の長さを誇るヴィスワ川に沿って街が広がっています。古い歴史のある街で国内で最も古い都市の1つに挙げられ、13世紀には都市として記録されています。旧市街地には、中世ヨーロッパで盛んに建設されたゴシック様式の建物が多く残されていて、1997年には文化遺産としてユネスコの世界遺産に登録されています。これらのレンガで建てられている建物は、教会や住宅、市庁舎として現在も使用されています。自然の景観にも恵まれた場所で、ヴィスワ川流域のトルン渓谷に位置している為に、街の内外に多くの森があります。また、ヴィスワ川に生息している様々な魚類を守るための魚類保護区があり、その中には絶滅危惧種の生物が含まれています。多くの自然もありますが、古くからこの地域の経済の中心地でもあり、国内でも最大級の大企業やその子会社などが本社を構えています。街の中心部から少し離れた場所に経済特区も作られ、国外の企業などが工場を建設していて、将来的には先端技術を扱う大規模な工場地域となる予定です。
「ヨルダンキ文化会議センター」の特徴
「ヨルダンキ文化会議センター」は巨石のような外観と、洞窟のような館内を備えた複合文化施設です。建物そのものはコンクリートで作られていて、2015年に完成しました。この建物の1番の特徴は、設計者のフェルナンド・メニスが考案したピカドと名付けられているクラッディング(壁の被覆)の工法です。コンクリートと火山岩などの別の素材を混ぜ合わせて一旦硬化させ、それを砕いたものを外壁や内壁にタイルを張り付けるような感覚で取り付けられています。日干し煉瓦や素焼きレンガのような赤味を帯びた色で、混ぜ合わせる素材によって色合いが変わっています。外壁の大部分はコンクリートがそのままですが、わずかに赤味を帯びる色合いになっていて、ピカドに使用されるコンクリートも同じものが使われています。その為、まだら模様のような柄と、わずかな凹凸が作られていて、コンサートホールの音響効果が上がることも立証されています。コンサートホールの内側は、音響効果を上げる事もあって、正に洞窟と言えるような天井と壁が作られています。882名収容可能なコンサートホールと287名収容できるシアター可能な小ホールが隣あわせに作られていて、可動式の壁を収納することによって連結できるようになっています。また、コンサートホールのステージ奥は外側に開くことも出来、大規模なイベントにも対応可能となっています。
「ヨルダンキ文化会議センター」のまとめ
「ヨルダンキ文化会議センター」のヨルダンキとは、この施設が建設されている場所の地名ですが、その名前は医師であり、活動家だった人物の名前が元となっています。子供たちの為の遊び場や体育館などの施設を作り、子供の健やかな成長に寄与した人です。「ヨルダンキ文化会議センター」は街の中に腰を据えた洞窟を内蔵する巨大な岩石のような印象のある建物で、その色合いは世界遺産の建築物に敬意を示すと共に、街の景観に配慮しています。「ヨルダンキ文化会議センター」は、古い町並みから新しい都市へと変化する中間点の役割を持つ建物となっています。
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