ボイマンス・ファン・ベーニンゲンの倉庫(boijmans van beuningen depot)

「ボイマンス・ファン・ベーニンゲンの倉庫」のご紹介

 

ヨーロッパの都市には古くから多くの公園が作られています。緑地帯としてだけでなく、様々な目的をもって作られた公園や、周囲の環境に沿って新たに作られた公園もあります。西ヨーロッパのオランダにある都市には、周囲を美術館や博物館が取り巻く公園があります。その公園に新たに建設された美術館倉庫は、奇想天外とも言える外観をしています。「ボイマンス・ファン・ベーニンゲンの倉庫」はステンレスのボウルのような形をしています。

「ボイマンス・ファン・ベーニンゲンの倉庫」の設計者

 

「ボイマンス・ファン・ベーニンゲンの倉庫」を手掛けたのはオランダの建築事務所「MVRDV」です。1991年に開設されたこの事務所は、共同創設者のウィニー・マースとヤコブ・ファン・ライス、ナタリー・デ・フリイスの3人の建築家の名前から社名が付けられています。その内のウィニー・マースが主体となって「ボイマンス・ファン・ベーニンゲン倉庫」の設計、デザインを行っています。彼は、1959年にオランダ中央部に位置するシャインデルと言う町で生まれました。中等教育を終えてから、ロッテルダム近郊の町にある国立の学校で造園や庭園を設計する事を学びました。その後、デルフトにある工科大学で建築と都市計画を学び、卒業後にはオランダの著名な建築家が運営する建築事務所のOMAで経験を積みました。彼は幼いころから様々な才能を見せていて建築にも興味を示していましたが、両親が園芸店を始めたことが造園を学ぶきっかけになりました。当時の彼は、環境の悪化に懸念を持つようにもなり、現在は景観建築家として緑の多い魅力的な都市づくりを目指しています。母校のデルフト工科大学を始め、ヨーロッパやアメリカの複数の大学で教鞭もとっている彼の実績が評価されて国から勲章を授けられています。また、フランスからも勲章を授与され共に騎士の称号も受けています。

「ボイマンス・ファン・ベーニンゲンの倉庫」の所在地

 

オランダ王国で二番目に大きな都市であるロッテルダムに「ボイマンス・ファン・ベーニンゲンの倉庫」が建設されています。この街の起源は、千年以上前にあった農場と集落で、現在のロッテルダムの中心地に遺跡が見つかっています。北海に面する海岸から約30km内陸にあるにも関わらず、古くから港湾都市として栄えてきました。過去には幾度も洪水を起こしてきたニューウェマース川を挟んで広がってきた街には、川沿いにいくつもの港が建設されています。この街は第二次世界大戦が勃発して間もなく、爆撃とそれに伴う火災によってたった一日で破壊されてしまいました。終戦後には、灰燼に帰した街を復興するために様々な計画が持ちあがりました。港の復旧や街の再建に近代的な建築物が多く建設されました。また、緑地を確保する目的も加えた都市公園も作られました。その中の「博物館公園(ミュージアムパーク」に「ボイマンス・ファン・ベーニンゲンの倉庫」があります。この公園の周辺には、ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館を始めとする複数の美術館や博物館が立ち並んでいます。夏季にオランダ国内の4つの都市で順次開催される演劇祭があって、ロッテルダムではミュージアムパークで行われています。

 

「ボイマンス・ファン・ベーニンゲンの倉庫」の特徴

 

2020年に完成した「ボイマンス・ファン・ベーニンゲンの倉庫」は、まるで家庭の台所ににあるステンレスのボウルのような、若しくは、お椀のような形をしています。高さが35mの7階建ての建物で、床面は円形になっています。一番の特徴は周囲の景色を映し出す鏡のような外壁です。1,664枚の鏡面ガラスが使用されていますが、建設費用の一部をこのガラスが賄っています。1枚1,000ユーロで一般市民や様々な機関が寄付のような形で支援しています。このガラスは、全て鏡面になっているわけではありません。隣接する医療センターに面した部分は、すりガラスのようになっていて、病院のプライバシーを守っています。また、明るい陽光が必要な場所は透明なガラスが使われています。鏡面のガラスでも太陽光はある程度通すようになっていて、館内の明るさを確保しています。館内は鉄骨の骨組みとガラスの壁や棚で構成されているように見えます。美術品の保管は湿度と温度の管理が大事ですが、館内にいる人には同じ環境が良いとは一概には言えません。その為に、美術品の保管と観覧する人のためにガラスが多様されています。屋上には、モミや白樺の木が75本植樹されている森ともいえる庭園が作られています。この屋上の森が作られたのは、この建物が建っている場所にあった木々の代わりです。建設用地にあった木々は弱っていたようで、街の樹木保管所に移植されています。館内で使用されるエネルギーは、太陽光や地熱でほとんどが賄われています。

「ボイマンス・ファン・ベーニンゲンの倉庫」のまとめ

 

「ボイマンス・ファン・ベーニンゲンの倉庫」は、ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館の倉庫です。多くの美術館や博物館は収蔵品のほとんどが館内の奥深くに収納されています。特に大規模な美術館などは通常展示されているのは、10%に満たない点数と言われています。「ボイマンス・ファン・ベーニンゲンの倉庫」はその残りの90%を収納していて、尚且つ一般の人が観覧することができるようになっています。しかし、あくまでも倉庫なので、作品の詳細などは提示されてません。このような運営が行われている「ボイマンス・ファン・ベーニンゲンの倉庫」は、美術館の新しい可能性を具現化した建物と言えるのではないでしょうか。

 

 

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