「ベネトン保育園」のご紹介
子供たちの健やかな成長を願う大人たちには様々な務めがあります。見守りや、やってよい事や悪い事などを教える躾、教育などは、保護者や保育士、幼稚園の先生などの役割です。子供たちが安心して過ごせる場所を準備することも、大人の大事な仕事の一つでは無いでしょうか。「ベネトン保育園」の設計者は子供たちの幸せを願って、色々な工夫を凝らしています。この保育園で過ごす時間は、子供たちにとって楽しい時間となっているようです。
「ベネトン保育園」の設計者
「ベネトン保育園」を手掛けたのはスペイン人建築家のアルベルト・カンポ・バエザです。1946年、スペイン北部にある都市バリャドリッドで生まれました。幼児の頃に南部の街カディスに移り住み、子供時代を過ごしました。カディスは大西洋に面していて、地中海と大西洋を繋ぐジブラルタル海峡に近い所です。南国の陽光が降り注ぐその街で過ごした時間は、彼にとって大きな意味を持つことになりました。彼は、自然光をとても大事にしていて、作品も光を採り入れる為に様々な手法が使われています。スペインのマドリッド工科大学で建築を学び、十年後には博士号も取得しました。1980年に建築事務所を開設しましたが、同時にヨーロッパやアメリカの大学で建築やデザインの指導を行っています。特に母校のマドリッド工科大学では数十年に亘って教授職に就いています。彼の祖父も建築家で、建築家の道に進んだことは祖父の影響が大きかったと言っています。自然光を大事にする彼の作品は白い建物が多く、全ての光を混ぜた色であり、光を邪魔しないと言う考えで白を使っています。また、小さな建物が多い事も同じことが言え、シンプルな建物は隅々まで光が届き明るい空間が作れます。光の建築家と言っても過言ではない彼は、「光は建築の大事な素材の一つだが、無料だから大事にしていない」と言っています。
「ベネトン保育園」の所在地
ブーツの形をしていると比喩されるイタリア共和国のブーツの付け根に当たる場所に、ポンツァーノヴェネトと言う町があります。「ベネトン保育園」はその町のほぼ中心に建っています。遺跡などが残されているわけではありませんが、この地域は古代ローマの街道が通っていた場所で、紀元前には人が暮らしていた可能性もあると言われています。ローマ街道は主要な都市を結んでいた道で、地中海沿岸とヨーロッパの大部分を縦横に通っていて、この地域には街道が交差する場所があったようです。この町は、ヴェネト地方のトレヴィーゾ県に属する人口1万人ちょっとの小さな町ですが、世界に広がる企業の発祥の地であり、本部もある町です。イタリアはファッションの国でもありますが、この町で生まれた企業もアパレル産業の会社で、ユナイテッド・カラーズ・ヴェネトン(日本ではベネトンと言われています)はこの町で暮らしていた兄妹が作りました。第二次世界大戦が終わった頃の暗い雰囲気を壊そうと、当時は地味な色合いでしか作られていなかったセーターを、妹がカラフルな糸で編み、兄が自転車に積んで売っていた事が始まりだったようです。現在は、ヨーロッパを中心に世界中に展開しているアパレル企業となり、町の名前にも使われています。
「ベネトン保育園」の特徴
設計者のアルベルト・カンポ・バエザの作品に見られる特徴を余すところなく取り入れられている建物が、「ベネトン保育園」(若しくは、託児所)です。小さな子供たちが安心して、楽しく過ごせることを最大限に留意して作られています。「ベネトン保育園」は、2007年に完成したコンパクトでシンプルな白い園舎です。5つの四角形をした箱型の建物を中心にして、円を描く壁が取り囲んでいます。それだけ聞くと閉塞的なイメージがありますが、部屋の外に4つの中庭があってとても明るい空間が作り出されています。4つの中庭は、全てのものを構成すると言われている4つの元素の地、水、火、風を表していて、それぞれに違う素材の庭が作られています。砂場のある庭や板張りの庭、芝のような短い草が植えてある庭があって、訪問者が最初に足を踏み入れる所はコンクリート張りになっています。全ての庭が空に開かれていると設計者は言っています。周りを取り囲む壁は二重になっていて、隙間が作られています。これは、子供たちが隠れる場所であって、秘密基地のような役割を持たせるために作られた空間です。各部屋も自然の光がふんだんに入るように設計されています。特に中央部分の部屋は、周りに他の部屋があるので、天井を高くして9個の丸い天窓のような採光窓があり、四方の壁の高い所にはそれぞれ3個づつの丸い窓が作られています。それぞれの窓から差し込む光は、時間の経過と共に場所が移動して、その光さえも子供たちにとっては遊びの道具となっているようです。
「ベネトン保育園」のまとめ
誰でも子供時代を過ごして大人になっています。しかし、子供の頃にどのような事が好きで、楽しかった事や嬉しかった事などを覚えている人は少ないのではないでしょうか。「ベネトン保育園」の設計者、アルベルト・カンポ・バエザはこの保育園の設計をする時に子供時代を振り返っていたようです。誰が使う建物であるかは、建設する時に考慮しなくてはいけない重要な点の一つです。使う人の立場に立って設計された「ベネトン保育園」が子供たちにとって心地よい場所であり、大人になった時に良い思い出の場所となれば素晴らしい事ではないでしょうか。
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