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「アイラゴルフアカデミー&クラブハウス」のご紹介
超高層ビルなどの大規模な建築物の建設は大型の重機の力を借りなければ行うことは出来ません。しかし、比較的小規模な建物でしたら、人の手で作ることもできます。「アイラゴルフアカデミー&クラブハウス」は出来るだけ重機を使わずに人の手によって作られた建物です。その過程では、地域の伝統を守ることが出来る職人を育てる事ができました。
「アイラゴルフアカデミー&クラブハウス」の設計者
「アイラゴルフアカデミー&クラブハウス」を手掛けたのは、オッペンハイム・アーキテクチャと言う建築事務所のスイスにあるバーゼルのオフィスです。オッペンハイム・アーキテクチャはチャド・オッペンハイムが1999年に開設した事務所で、彼の住むアメリカのマイアミを拠点として、ニューヨークとバーゼルにそれぞれオフィスを構えています。チャド・オッペンハイムはアメリカの大学で建築を学んだ後に5年間ほどアメリカの大きな建築企業に務めていました。彼が建築家を目指したのは、まだ小さな子供の頃でした。9歳の時に両親が家を建てることになって、建築に興味を持ったようです。その時に彼も家の建設に両親と共に加えてもらい、ますます関心が高まったという事でした。学生時代や勤めていた頃にヨーロッパや中東、日本にも旅行した彼は、様々な自然と触れ合うことがありました。その中でも、砂漠の風景に大きく魅了された彼は言っています。その経験は、彼の作り出す作品に影響を与えていて、彼が手掛ける建物の多くは、風景に溶け込ますと言うより、風景に隠すと表現されています。彼は都市であろうが砂漠であろうがどんな場所でも、様々なプロジェクトを開始する時に一番最初に念頭に入れることはその地の環境を考えています。このような彼の考えが込められた建築物は、多くの称賛を受けています。
「アイラゴルフアカデミー&クラブハウス」の所在地
「アイラゴルフアカデミー&クラブハウス」は、ヨルダン・ハシミテ王国の唯一、海に面しているアカバと言う街に建設されている総合リゾートの最初に完成した建物です。アラビア半島の北部に位置するヨルダンは、ほとんどが内陸の国です。アラビア半島の西側にある紅海は北部で二つの湾に分かれていて、西側は地中海に繋がる運河のあるスエズ湾で、東側はアカバ湾と呼ばれ、湾の最奥に位置するのがアカバの街です。隣国のイスラエルと国境を接していて、この地域はイスラエルに於いても紅海で唯一の港があります。暑く乾燥した気候で、冬季でも気温が10℃を下回ることはめったにありません。街から東へ約30kmの所にはワディラム砂漠があります。この砂漠は赤い色をした砂の砂漠で、砂漠を題材にした作品や、SFなど、いくつかの映画のロケ地になっています。アカバは、このような砂漠と共に海のレジャーも楽しめる、国で最大級の観光地となっています。世界的にも有名な珊瑚礁があって、海洋性哺乳類やウミガメ、大型魚類のサメなど大型の生物も多く生息しています。また、フラミンゴやペリカンの仲間などの鳥類がたくさん生息している所もあります。古来より海の要所としての役割があった街ですが、政治的にも以前より安定してきたことから、現在は観光にも力を注ぎ、様々なレジャー施設が整備されつつあります。
「アイラゴルフアカデミー&クラブハウス」の特徴
「アイラゴルフアカデミー&クラブハウス」は、砂漠から浮き上がってきたような建物です。街の近くにあるワディラムの砂漠と同じ色合いのレンガのような赤い色をしています。砂漠の遊牧民である、ベドウィンの民のテントと砂漠そのものを意識したと設計者は言っています。コンクリート製の平屋と言える建物で、屋根はゆるやかな曲線を描いています。外壁も多くの場所で湾曲していて、明確な壁や天井といった区別がされていない部分もあります。なるべく機械を使わずに建設を行った建物で、コンクリートを汲み上げる為以外は、大型の機械が使われていません。建設地の伝統的な建築方法を取り入れ、現地の職人の技術を用いて建設されました。外装や内装の仕上げには、粘土などを使い、天然の顔料で仕上げの塗装が施されています。この過程でも現地の職人の手が使われています。強い日光を遮るために、各所に取り付けられている鉄製の扉は、この地域で古くから使われている「マシュラビア」に似た雰囲気があります。「マシュラビア」とは、イスラム圏の建築様式で、上階の出窓に取り付けられる透かし模様のような細工を施した窓の事です。風を通し、強い日差しを遮るために取り付けられています。「アイラゴルフアカデミー&クラブハウス」に取り付けられている透かし彫りの扉は、耐候性の鋼で作られているので、外壁の色とよく合う色合いになっています。耐候性鋼はサビを防ぐために、あらかじめサビを発生させている為、赤錆のような色になっています。
「アイラゴルフアカデミー&クラブハウス」のまとめ
「アイラゴルフアカデミー&クラブハウス」の正面は出入口などの開口部が複数あるので、建物があることはよくわかります。しかし、後ろ側からこの建物を見ると、本当に砂漠から浮き上がったように見えます。少し離れた場所からですと、砂漠の風景に埋もれてしまっていて、そこに建物がある事さえ分からないようになっています。「アイラゴルフアカデミー&クラブハウス」は、砂漠の風景を愛する設計者の意図する通りの外観になっていて、その風景に全く負担をかけていない、正に風景に溶け込んでいる建物と言っても過言ではありません。
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