ローブリング橋の上り坂(Ascent At Roebling Bridge)

「ローブリング橋の上り坂」のご紹介

 

150年以上の歴史を持つ重厚なつり橋のたもとに建設されたスタイリッシュな集合住宅は、その橋と周囲の街並みを尊重した形と外観をしています。大都市圏に流れる川の川岸に建つ「ローブリング橋の上り坂」は、橋を渡ってそのまま上昇していくような印象のあるさわやかな色合いの建物です。

 

「ローブリング橋の上り坂」の設計者

 

「ローブリング橋の上り坂」のデザインと設計を手掛けたのは、1946年に生まれたダニエル・リベスキンドです。東欧の国ポーランドの中央部に位置する、工業が盛んだったウッチと言う街でユダヤ系の両親の元に生まれた彼は、子供の頃には家族と共に住居を転々としていました。10代の初めには中東の国まで南下し、13歳の時にアメリカへ渡っています。ニューヨークで暮らすようになって6年後に市民権を得た彼は、正式なアメリカ人となりました。建築家を目指して入学した学校では、チェコ出身の建築家に学び、学位を取得しています。11歳までしかポーランドに住んでいませんでしたが、彼は現在でもポーランドの言葉を話し、文書を書くこともできます。彼の両親がホロコーストを生き延びた事も、彼の建築に大きく影響を与えていて、第二次世界大戦についてのいくつかの博物館を手掛けています。近代の重要な史実に直接関与した両親の元で成長した彼は、歴史にも興味を見っていて、彼の建築に対する考えにもそのことが伺える「意味のある建築を提供することは、歴史を作り替える事ではなく、歴史を明確にすることである」という名言があります。芸術家の一面も持っている彼は、屋外に設置するような大型の彫刻や、オブジェも制作しています。また、舞台芸術にも関与していて、オペラの舞台装飾や衣装のデザインを手掛けたこともあります。

「ローブリング橋の上り坂」の所在地

 

「ローブリング橋の上り坂」が建てられているのは、アメリカ合衆国の北東部にあるケンタッキー州のコビントンと言う街の川のほとりです。オハイオ川はオハイオ州との州境になっていて、対岸はシンシナティの街です。この街は、州の北部で1番大きな街で、3つの州にまたがるシンシナティ大都市圏に含まれています。街の名称は、19世紀の初頭に起こった戦争で活躍した将軍の名前が付けられました。その戦争が終わった1815年に市制が敷かれ、街の東を流れるオハイオ川の支流のリッキング川に沿った地域がコビントンの街になりました。オハイオ川の水上輸送が過密になってきた頃に5本の橋が架けられ、「ローブリング橋の上り坂」のそばに架かる中央の橋がローブリング橋です。1866年に開通したつり橋で、長さが500mで通常の水面からは30mの高さがある、フランスで開発された方式のワイヤーで支えるつり橋となっています。川の両岸には近隣で採石された砂岩と石灰岩を使った塔が建てられていて、その塔からケーブルが張られて橋を支えています。当初求められていたより頑丈に設計されて作られましたが、経年劣化もあって、将来に備えて現在は大型車両は通行できないようになっています。この橋を手掛けた技術者の名前が橋に付けられましたが、ジョン・A・ローブリングはニューヨークの有名なブルックリン橋も手掛けています。

 

「ローブリング橋の上り坂」の特徴

 

「ローブリング橋の上り坂」は青と白の色合いで、さわやかな印象のある建物です。平面図では三日月を半分にしたような形で、南西側に内向きの弧を描くようになっています。垂直面のコビントン側は、滑らかで凸凹が一切ありませんが、オハイオ川に向いた方にはテラスやバルコニーがあちらこちらに張り出しています。各部屋からは、対岸に見えるシンシナティの街が一望できるようになっています。建物全体が青と白のランダムに見える組み合わせで、青く見える部分はガラスです。白い部分はコンクリートで、あらかじめ工場である程度の形を形成してから現場で組み上げた部分と、現場打ちのコンクリートが使われています。屋根の部分も、青に白い部分がストライプに見えるように組み合わされています。この建物の高さは、川の方から街に向かって高くなっていて、最高層は22階で川の方側は11階までとなっています。このように高さが変えられたのは、近隣の建物と調和を取るためで、高い方には商業ビルが立ち並び、低い方には住宅があります。それぞれの建物を「ローブリング橋の上り坂」が視覚的に繋げられるようにと設計者が考えたという事です。南西側の内向きになっていて、帆船の帆のように風を受けることが分かっていたため、建物のモデルを使って風の影響を確かめる風洞実験も行われました。その結果を元に建物の強度が計算されていて、風を逃がす事も考えられました。また、冬季の積雪による落雪の危険を回避する仕組みが屋根の部分に組み込まれています。

「ローブリング橋の上り坂」のまとめ

 

「ローブリング橋の上り坂」の色は、名前にあるローブリング橋の欄干や吊り下げケーブルの色で、オハイオ川と空の色が反映されています。橋を渡ってそのまま上空に向かっていくような印象がこの建物の名称となっています。設計者は色の組み合わせ方をデジタルを意識しているとも言っています。設計者のダニエル・リベスキンドは、1980年代にケンタッキー大学で教鞭をとっていました。「ローブリング橋の上り坂」は彼がここに戻ってきたことも意味していると言っても過言ではないのかもしれません。

 

 

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