「シアトル美術館」のご紹介
コレクションの数が全米で5本の指に数えられる美術館が「シアトル美術館」です。1933年に開館した当初は中国の美術品がメインでした。コレクションが増えるに従って手狭になってきた為、新たな美術館が市内のダウンタウンに作られました。
「シアトル美術館」の設計者
アメリカ人のロバート・ヴェンチュリ(ロバート・チャールズ・ヴェンチュリ・ジュニア)は、アメリカ北東部の大西洋沿岸に位置する大都市、フィラデルフィアの出身です。アメリカの大学を卒業した後にヨーロッパに留学し、建築を学びました。帰国後は、著名な建築家の元で働きながら実践を学びました。その後、幾人かのパートナーと事務所を開いていましたが、最終的には妻であり建築家のデニス・スコット・ブラウンと会社を運営していました。彼の建築思想は言うなれば「温故知新」なのではないでしょうか。19世紀後半から現れた「モダニズム建築」と言う合理主義の建物に異を唱え、中世のゴシック建築に見られるように、建物にも装飾を施すような「ポストモダニズム建築」を提唱しました。それを如実に表しているエピソードが、ヨーロッパの巨匠ミース・ファン・デル・ローエが残した言葉の「より少ない事は、より豊かな事」を「より少ない事は、退屈な事」と皮肉を言ったことです。合理的な建築物であっても、装飾を施して美しい外観を持たせるのが彼の作品となっています。このような考えは後の建築家に大きな影響を与え、建築物の流行の一端を担ってきました。彼の作品はアメリカに多く残されていますが、日本の栃木県にも現存する建物があります。彼は、2018年9月に93歳で病気により人生の幕を下ろしています。
「シアトル美術館」の所在地
「シアトル美術館」はシアトルのビジネス街であるダウンタウンにあります。ワシントン州シアトルは、アメリカ合衆国の北西部にある国内でも有数の大都市です。氷河の残した入り組んだピュージェット湾とワシントン湖に挟まれた土地で、自然が多く「エメラルド・シティ」と呼ばれる美しい街です。北海道よりも北に位置しますが、近くの海流に流れ込んでくる暖流のおかげで、冬でも氷点下になることは少ない気候となっています。雪が降ることも少ないので、多少の積雪でも交通機関が混乱する事もあります。夏も過ごしやすい日が多く、朝夕は少し肌寒くなるようです。一年を通して穏やかな気候であり、治安も比較的良い地域なので、全米でも住みやすい上位の都市となっています。
「シアトル美術館」の特徴
1991年に手狭となった旧シアトル美術館のメインのコレクションを移し、新設したものが、現在の「シアトル美術館」です。何と言っても目立つのが、正面入り口にそびえる「ハンマリングマン」です。これはアメリカ人芸術家の作品で、数分に一回の速さでハンマーを打ち下ろしています。美術館の建物は、板チョコの様な壁がぐるりと取り囲んでいて、壁の上部に凹ませた文字で「SEATTLE ART MUSEUM」と書いてあります。この外壁は石灰岩とテラコッタと呼ばれる素焼きのタイルやブロックで覆われています。中世に於いて人気のあったテラコッタを使った外壁は、ゴシック建築に見られるような装飾性の高い建築物に仕上がっています。このような古風な素材でも使い方次第では、スタイリッシュな外観にできる見本のようで、設計者のロバート・ヴェンチュリの信条を表していると言えます。入り口付近はシックな感じのおとぎの国、若しくは遊園地の入り口の様な雰囲気になっています。コレクションの展示方法も趣向が凝らしてあり、天井から吊り下げられている自動車があったり、広い階段の途中にも彫像が展示されていたりと、館内のあらゆる場所で作品を見ることができます。このように趣旨を凝らした展示方法は、入り口と同じく館内の様子もおとぎの国の様相を呈していると言えるでしょう。
「シアトル美術館」のまとめ
「シアトル美術館」は複数の施設で構成されています。当初作られたアールデコ調の建物は、シアトル・アジア美術館として開館しています。また、「シアトル美術館」のすぐ外にはオリンピック彫刻公園があります。アジアを中心とした世界中の作品をコレクションとして持つ美術館は、地元の人々に愛され、頭文字をとった「SAM(サム)」と呼ばれています。正面にある「ハンマリングマン」は、世界に大小取り混ぜて複数あり、日本の美術館にも一つ展示されています。
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