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「UWC ディリジャン カレッジ」のご紹介
子供たちの健やかな教育のために、その国は重要な公園をおよそ1世紀にわたって貸し出しました。大事な国立公園の1部を建設用地として借りたこともあって、その学校の校舎は周囲の風景に負担をかけず、環境にも負荷を負わせない建物になりました。「UWC ディリジャン カレッジ」は、自然の色合いを纏った建物群で構成された学校です。
「UWC ディリジャン カレッジ」の設計者
「UWC ディリジャン カレッジ」はイギリスのロンドンに本拠地を置く、ティム・フリン アーキテクツが手掛けました。2006年に事務所を開設し、現在はロシアのモスクワとアルメニアの首都エレバンにも事務所を置き、東欧の様々な企画を手掛けています。ティム・フリンは40年以上にわたる経験を持つ建築家として、UWC(ユナイテッド・ワールド・カレッジ)設立にも1役買っていて、最近まで理事を務めていました。彼は、自然と人工の環境を融合させるような建築を目指しています。彼は、最近の建物は彫刻的過ぎていて、本来の目的を見失っていると思っているようです。ゆとりのある空間を持つ建物や都市を創造することが大事だとも語っています。
「UWC ディリジャン カレッジ」の所在地
「UWC ディリジャン カレッジ」は、黒海とカスピ海の間にある内陸国のアルメニア共和国に建設されています。東ヨーロッパに含まれるアルメニアは、アジアと隣接する地域に位置しています。この国は、20世紀の終わりころまでは周辺の国々と同様にソビエト連邦の構成国の1つでしたが、1991年にソビエト連邦が崩壊した直後に独立して、現在に至ります。「UWC ディリジャン カレッジ」が建つディリジャンは、首都のエレバンから北東へ約70km離れた所にある町です。地名にはいくつかの昔話がありますが、要約すると、居なくなった息子を探す親の呼び声が由来と言われています。「ディリ」はその息子の名前で、「ジャン」とは、この地域の古くから使われている親族や近親者の名前に付ける愛称です。標高が1,500m以上ある高原地帯で、多くの温泉があることで、20世紀の初めころに国で初めての公認保養地の指定を受けています。町の産業は、手工芸品の敷物などが有名ですが、他にもミネラルウォーターの製造が行われています。現在は観光にも力を注いでいます。町の周辺は森林に囲まれていて、2002年にディリジャン国立公園が制定されました。広大な面積のほとんどが森林で、広葉樹を主体とした40種以上の樹木が生育しています。動物相も豊かで、鳥類はワシやタカなどの猛禽が営巣し、ヒグマやオオカミなどの大型の哺乳類を始め多くの動物が生息しています。
「UWC ディリジャン カレッジ」の特徴
2014年に完成した「UWC ディリジャン カレッジ」は、森に抱かれたような印象を持つ学校です。敷地の大半が国立公園内にあることから、様々な制約や条件が付けられました。まず、地域の中心となるような学校にすること。次に、周囲の自然に負担をかけない建物にすることなどがありました。校舎や運動施設、学生寮など様々な目的で使用される複数の建物が建設されました。全ての建物は森の風景に対して、異質にならないように外壁は石材で覆われています。アルメニアで産出する耐火性に優れた凝灰岩や、地元で採石される石材が使われています。火山国であるアルメニアでは火山灰が堆積して出来上がった凝灰岩が多く産出しています。わずかに赤味を帯びた外壁は、四季を通じて周辺の森にふさわしい色合いとなっています。校舎の屋根は緩やかな曲線を帯びた形で、柔らかい風の流れ、若しくは穏やかな水面を思い起こさせます。屋根の上には、芝生と地元の植物が植えられていて、植生に合うように地元の溶岩などが使われています。また、植物の生育を助けるゼオライトなどを使った特別な混合土が用意されました。学生寮の建物も外壁は石材ですが、屋根はこの地域で見られる古風な雰囲気になっています。屋内の廊下やバルコニーには、黄色や緑の樹脂ガラスで柵が設置されています。鮮やかな色合いに見えますが、外壁の色と調和が取れています。外観は周辺の自然と調和できるようになっていますが、屋内のあちらこちらには10代の子供たちにふさわしいような、かわいい色が使われています。
「UWC ディリジャン カレッジ」のまとめ
「UWC ディリジャン カレッジ」の建設が始まる前に設計者は世界中を旅して、数十の学校を見学してきました。その中で、様々な手がかりを見つけ、建設に役立つ解決法を見つけ出しています。UWCは世界に18の平和的な目的を持った学校を運営しています。また、ヨーロッパ各国や日本を含むアジアの国々など多くの国が、この運動に賛同しています。未来の世界を担う子供たちの育成に、アルメニアは国立公園を貸し出しました。そして、その環境にふさわしい建物群が「UWC ディリジャン カレッジ」とななったのではないでしょうか。
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