「レンライセンター」のご紹介
ニュージーランドで生まれ、アメリカで活躍した芸術家の作品を収めるために建設された美術館は、その作品群と根源を同じにする意味合いの建物になりました。建設された地域に古くから住み続けてきた人々が培ってきた文化に魅了された芸術家と建築家が、時を隔てて融合させた美術館が「レンライセンター」です。
「レンライセンター」の設計者
南太平洋に浮かぶ島国、ニュージーランドの建築家が「レンライセンター」の設計を手掛けました。ニュージーランドの北島北部に位置するワイカト地方で、アンドリュー・パターソンは1960年に裕福な家庭の次男として生まれました。父親は医師であり、不動産の開発も手掛けていました。以前は首都を務めていたオークランドの寄宿学校で中等教育を終えた後、父親に勧められて兄と同じく医師になるための勉強を始めました。しかし彼は、小さいときから建築家になりたかったようで、医学の勉強は途中で取りやめて建築を学び始めました。学生時代に個人の住宅を手掛けることになって、学校を卒業した後もその建設の為に建築事務所で働きました。その後、いくつかの会社で建築家としての経験を積み、1990年に独立して自らの建築事務所である「スタジオパターソンズ」を開設しました。彼は、ニュージーランドの先住民族であるマオリ族の文化に大きな興味を持っていて、とても重要視していました。そのような考えから、西洋の文化に影響されないように建築家として海外に旅行に行くことを自ら禁じていました。しかし、いくつかの建築競技会で優勝して、副賞の賞金を使って様々な国を訪れることになりました。そこで彼が感じ取ったのは、建築の根本と言えるものでした。外の文化に触れたことで、彼が大事にしているマオリの文化の価値を再認識できたようです。国を代表する建築家となった彼は、豊かな自然を育んでいるニュージーランドにふさわしいと言える作品を生み出しています。
「レンライセンター」の所在地
「レンライセンター」はニュージーランドの北島西部にある街、ニュープリマスに建設されました。この街は、首都であるウェリントンと国で最大の都市、オークランドにおよそ250kmの距離を置いてほぼ中央に位置しています。この街は、北島西部のタラナキ地方の政治や経済の中心的な役割を担う街として発展してきました。19世紀に海岸沿いで石油が発見され、20世紀に入って製油所が操業を開始しましたが、産油量が少なく、21世紀に入る前に石油の採掘は終了しています。20世紀後半には天然ガスも発見され、国内で天然ガスの供給を受けることができた最初の自治体の1つになっています。緯度が日本の東北地方と同じくらいですが、気候は年間を通して温暖で、降水量も年間で平均的に雨が降っています。2011年にはわずかな降雪がありましたが、これは非常に珍しい現象として記録に残されています。また、日照時間が比較的多く、国内で最も日照時間の多い街になった年があります。このような穏やかな気候も手伝って、この街は国で最も住みやすい街や、最も美しい小都市と賞賛されています。街の中心部には、植物園も兼ねる国内でも重要なプケクラ公園があり、様々なイベントも開催される市民の憩いの場となっています。また、街の南には富士山に似た美しい山体を持つ火山のタラナキ山を中心とした、エグモント国立公園が広がっています。
「レンライセンター」の特徴
「レンライセンター」は、ニュージーランドのニュープリマスにあるゴベット・ブリュースター美術館の新館部分として2015年に開館しました。この建物の1番の特徴は外観にあります。ステンレス鋼の板で覆われた建物は、時間や季節によって様々に変化しています。垂直の大きな波のような外壁に使われているステンレスは、収蔵物の作者であるレン・ライが好んで使っていたと言われる素材です。また、この地域の発展に寄与していた産業である、石油や天然ガスを表している「光」も、ステンレスから発せられるように印象付けられています。9本の柱のような縦型の波のそれぞれの頂点には、細長いガラスがはめ込まれていて屋内に自然光を提供しています。同じ光は外壁に反射して、そばの地面に水面下の波紋のような光を注いでいます。加えて、外壁に映る風景は常に変化し続けると設計者は言っていて、人気の撮影場所でありながら、最新の撮影機器でも混乱させるような感じを与えています。見る角度や方向、時間によっては建物がガラスでできているような雰囲気になることもあります。屋内の壁は外壁の形状を忠実にうつした形になっています。それはまるで、開演前の舞台に下りている幕のようだと紹介されることもあります。コンクリートの壁は滑らかな布地のようで、型枠に流し込んで形成され、建設現場で組み立てられるプレキャスト方式で作られました。
「レンライセンター」のまとめ
「レンライセンター」は、単一の芸術家の作品を展示するために建設された、ニュージーランドで初めての美術館です。レナード・チャールズ・ヒューイア・ライ(レン・ライ)はニュージーランドで生まれ、アメリカに帰化した芸術家です。ニュージーランドやオーストラリアの先住民の文化を高く評価し、彼の作品に大きな影響を与えました。動きのある彫刻や実験的な映像などを得意とした彼の作品は、同じ文化を尊重していた設計者が手掛けた美術館に納められています。「レンライセンター」は、正にレン・ライのための美術館と言える建物となっています。
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