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「スリランカ プラネタリウム」のご紹介
すっきりとした風雅で趣のある大聖堂に魅せられた設計者がデザインしたプラネタリウムが、インド洋にある島国に建設されています。植民地から独立国家となり、以後の発展を促すために開催された博覧会での最大の象徴として建設された「スリランカ プラネタリウム」は、この国で初めての事柄がたくさん盛り込まれた建物です。
「スリランカ プラネタリウム」の設計者
「スリランカ プラネタリウム」を手掛けたのは、スリランカの技師、アルマドゥラ・ナンダセナ・シルバ・クラシンゲ(A.N.S.クラシンゲ)です。「スリランカの工学の父」と称されていた彼は、1919年に当時は国の首都だったコロンボの北にある町で生まれました。子供のころから科学や技術に強く惹かれ、国で1番長い歴史を持つセイロン工科大学に通い、ロンドンの大学でも学んでいます。イギリスから帰国してすぐに、土木技師として水力発電所の建設に助手として関り、技師としての活動を始めました。彼は、科学や技術に大きな関心を持っていただけでなく、柔軟な思考を持っていた事から、様々な発明をしています。その中で顕著だったのが、コンクリート技術です。プレキャスト・コンクリートと呼ばれる工法をいち早く取り入れ、当時のスリランカで多くの安価で耐久性の高い住宅を建設しています。プレキャスト・コンクリートは、工場で部品としてコンクリート製品を作り、建設現場で組み立てる工法です。彼は、この工法の中でも工夫を重ね、「コンクリート・クラシンゲ」とも呼ばれています。また、国内の技術者の地位を確立するためにも活躍し、国に働き掛けて公営の機関などを立ち上げています。他にも数多くの企業の役員や大学の教授も務めていました。国の発展に大きく貢献した彼は、国家の栄誉賞を授与されています。2006年に86歳で世を去った彼の偉業を称えて、2018年に重要な貯水池の名称が大統領によって彼の名に変更されました。
「スリランカ プラネタリウム」の所在地
「スリランカ プラネタリウム」は、インド洋に浮かぶスリランカ民主社会主義共和国で最大の都市、コロンボに建設されてます。インド洋の真珠とも呼ばれるこの国は、インド半島の南東に位置し、セイロン島と周辺にあるわずかな小島で構成されています。20世紀の半ばに独立するまでの約400年間はヨーロッパの複数の国の植民地でした。独立した当初は「セイロン」と言う国名でしたが、1972年に世界初の女性の国家元首が国の政治形態を共和制に移行して、国名をスリランカに改名しました。しかし、島の名前や特産品などの様々な所で現在もセイロンの名前が生きています。コロンボは島の南西に位置していて、近年まで首都を務め、現在も国で最大の都市です。現在の首都は、スリ・ジャワルダナプラ・コッテと言いますが、名前が長いためコッテと呼ばれています。1985年に遷都が行われましたが、コロンボの東に隣接しているため、今でもコロンボが首都の機能を果たしている部分が多くあります。この街は数千年前から交易の要所となっていて、植民地以前から様々な地域との交流がありました。そのような歴史があることから、民族の多様性と文化が入り混じり、独特の雰囲気を持つ街です。
「スリランカ プラネタリウム」の特徴
「スリランカ プラネタリウム」は、1965年に開催されたセイロン産業博覧会の特別な施設として建設されました。国で初めてのプラネタリウムで、唯一の施設でもあります。上から見ると美しい円形の建物で、大きく花開いた蓮の花と比喩されることもあります。円錐形の傘のような形で、最上部は王冠のような装飾が施されている、コンクリートで作られた建物です。外観がこのような形になったのは、設計者の思いからでした。設計者は敬虔な仏教徒ですが、イギリスとブラジルに建つキリスト教の大聖堂の姿に魅了された結果で、美しいと感じる基準に、宗教は影響を与えないと言う良い例と言える建物です。建設現場で部品として作られた屋根の構造物を組み合わせて建設されています。この工法はスリランカで初めて導入された方法です。当時の最先端の技術と素材が使われていますが、蓮の花を思い起こさせる形は伝統にも結びついています。高さが21m強で、プラネタリウムの放映が行われるホールは直径が23mあります。ドーム型の天井を備えた建物を、半分閉じたような傘を思い起こさせる幾何学的な形の外観が覆っています。屋根の裾は大きな三角形の開口部が均等に作られ、プラネタリウムを取り巻く通路から、規則的に三角の風景が見られます。建設から約半世紀が過ぎたころに修復と改装が行われて、最新の投影設備が設置され、現在も科学の発展に寄与しています。
「スリランカ プラネタリウム」のまとめ
「スリランカ プラネタリウム」は、イギリスとブラジルに建つ大聖堂の外観を参考にして建設されています。大聖堂の役割は神様に祈りを捧げる場所であることは周知の事実です。プラネタリウムは、様々なプログラムを通して時間や天候に関係なく天体を観測できる施設です。古代の人々は、夜空に光る星々を繋いで神話の登場人物やそれに係る様々なものを見出していました。このような事を思い巡らすと、プラネタリウムと大聖堂には通ずる意味合いがあるのではないでしょうか。
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