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「クラブハウス エスタンシア ラ パス」のご紹介
建物に限らず、モノを作るためには必ず材料が必要です。新しい素材から作る人もいますが、そこにある物を使う人もいます。南アメリカの国にある保養地に建設された建物は、設計を依頼された建築家が建設地を訪れた時に見つけた物が使われました。自然を新しい形にした建物が「クラブハウス エスタンシア ラ パス」です。
「クラブハウス エスタンシア ラ パス」の設計者
「クラブハウス エスタンシア ラ パス」を手掛けたのは、アルゼンチンの都市、コルドバに拠点を置くモリーニ・アーキテクツです。この事務所は、2013年に3人の家族で開設されました。父親のホルヘ・モリーニと母親のサラ・ロジーナ・グラマティカは共に1942年にコルドバで生まれ、コルドバの大学で建築を学びました。卒業後の2年間はそれぞれ建築家としての実践を積み、1967年に大学で知り合った仲間と共に建築事務所を開設しています。5人の頭文字をとって「GGMPU」と名付けられた会社は、2013年に解散するまでの40年以上、活発に活動していました。21世紀に入ってすぐの頃に、アルゼンチンで金融危機が起こった時には、活動の拠点をコルドバからスペイン南部の都市に移して、主に住宅の建設を請け負っていました。その間、彼らは結婚して、1970年に現在一緒に働いている息子のルチオが生まれました。ルチオ・モリーニも両親と同じくコルドバの大学で建築を学びました。彼は幼いころから両親の働く姿を見て育ち、5歳の頃には建築家になりたいと考えていたようです。建築家として働くようになった時に、両親らが運営する事務所に入社しました。スペインから再びアルゼンチンに拠点を移し、2013年に以前の事務所が閉鎖された後に、彼らは3人で「モリーニ・アーキテクツ」を創設して、大型の商業施設から住宅まで様々な規模の企画を手掛けて現在に至ります。
「クラブハウス エスタンシア ラ パス」の所在地
「クラブハウス エスタンシア ラ パス」は、アルゼンチン共和国の北部にあるアスコチンガと言う町に建設されました。アルゼンチンは南米大陸の南端に位置する国で、西側はチリと国境を接し、東側は、大西洋に面しています。国土は広く、南米ではブラジルに次ぐ面積を有しています。国の西側には、南米大陸の西側を南北に7,500kmも続く、世界最長の山脈であるアンデス山脈の中でも最高峰のアコンカグアを始めとする標高6,000mを越える山々が聳えています。「クラブハウス エスタンシア ラ パス」が建つアスコチンガは、コルドバ州のコロン県に含まれる町で、アルゼンチン第2の都市のコルドバから北へ約50km離れた所にあります。スペインの統治から独立した19世紀の頃から、富裕層に人気の観光地であり、保養地でもあった町です。別荘地として公園やゴルフコースなどが整備されてきました。他にも、短期滞在の人のための高級なホテルがあり、上流階級の家系が所有する広大な牧場も作られていて、現在はアルゼンチン空軍の保養地の1つになっている場所もあります。アスコチンガを含むコロン県はコルドバ都市圏が近いことから、野菜や果樹の栽培と畜産の農業が盛んです。特に牛や豚の飼育は州内の中心となっています。また、アスコチンガに隣接する町では、毎年1月に10日の間昼夜を問わず開催される、乗馬と民族音楽の祭典が有名で多くの人が訪れています。
「クラブハウス エスタンシア ラ パス」の特徴
「クラブハウス エスタンシア ラ パス」は、3つの小ぶりな建物で構成されていて、設計者の閃きで作られ、2015年に完成しました。不規則な多角形の建物で、外壁に特徴があります。設計を依頼された建築家が、その建設予定地を訪れた時に、切り倒されて丸太の状態になっている樹種も様々で大きさも大小とり混ざった、およそ2万本の木を見てすぐに思いついたことがありました。積み重なった丸太をそのまま重ねてしまうような外壁は無謀なように思えますが、実際には素晴らしい味わいを建物に付け加えることができました。多種多様な丸太は、樹皮が付いたままだったので、全て手作業で取り除かれました。その後、綿密な配置が考えられ、太い丸太と細い丸太がデザイン的に美しくなるように配置されました。不規則な丸太を積み重ねたことから、たくさんの隙間が生まれ、そこから光と空気を通すことが出来ました。丸太の外壁の内側には、20cmの間隔を開けて半透明のガラス壁が設置されています。隙間から射す日光は、ガラス壁を通して光が和らげられて、まるで木漏れ日を横から見るような美しさがあります。また、日が落ちて暗くなった時間では、隙間を通った屋内の明かりが建物を浮かび上がらせるような、少し幻想的な印象になっています。建物は丸太の防腐を目的として地面に直接建てるのではなく、1mの高さの高床式にされています。
「クラブハウス エスタンシア ラ パス」のまとめ
富裕層の観光地として開発され、公園や牧場が作られた時にたくさんの木々が植えられました。それから100年以上が経ち、木々の中には枯れてしまった木もあり、切り倒された木は丸太となって地面に積み重ねられていました。その木に表現力を加え、芸術性を持たせて、新しい息吹を与えられたのが、「クラブハウス エスタンシア ラ パス」の建設だったのではないでしょうか。
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