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「マラウイの田舎の教会/コミュニティホール」のご紹介
アフリカの田舎にとても古い教会がありました。屋根や壁にはたくさんの隙間があり、太陽の光が差し込んで部屋の中にいくつもの光を落としていました。それは教会として考えれば聖なる所にように見えましたが、村の集会所としては使用に耐えられなくなるのは時間の問題でした。村の長と住人に依頼された建築家は、先々の事も考えて村人に建設方法を教えながら完成させました。「マラウイの田舎の教会/コミュニティホール」は正に手作りの建物です。
「マラウイの田舎の教会/コミュニティホール」の設計者
「マラウイの田舎の教会/コミュニティホール」の設計を依頼されたのは、南アフリカの最大の都市であるヨハネスブルグに事務所を置くA4AC アーキテクツです。この事務所は、ディルク・コッツァーとジョン・サイマン、アントン・バウワーの3人の建築家が共同で2013年に開設しました。彼らはAIや3D画像など最新の技術を取り入れ、様々な視点から問題を解決に導いています。アフリカには生活のために必要とされている、電気などのエネルギーや水道などのインフラが整っていない場所がたくさんあります。そのような場所でもある程度快適に過ごせるように考え出された住宅が彼らの事務所を一躍有名にしました。使われなくなった海上輸送用の大型コンテナを利用して、オフグリッドと言われる送電網に接続しなくてもよい住宅を作り上げました。更に先の未来のために考え出された小さな家が注目を浴びています。快適な生活のための最小限の設備を整えた小さなテントのような家は、建設地まで輸送した後、現地ですぐに組み立てられるようになっています。アフリカの都市部以外の場所の住環境を改善できる様々な策を考え出し、なおかつ、過酷な自然環境の中でも持続可能を目指した建物を考案しています。若い事務所ですが、斬新なデザインや革新的なアイデアは、すでに多方面から賞賛を浴び、注目されています。
「マラウイの田舎の教会/コミュニティホール」の所在地
「マラウイの田舎の教会/コミュニティホール」は、アフリカ大陸の南東部に位置するマラウイ共和国の小さな村に建設されました。大陸の他の国同様、この国もヨーロッパの植民地だった時代がありました。1964年に独立してからは、他の国との戦争や、国内の大きな内戦が起こっていないことから「アフリカの暖かい心」と呼ばれています。この国は比較的国土の狭い国で、国土の2割は大陸で3番目に広いマラウイ湖です。マラウイ湖には東隣のタンザニアやモザンビークとの国境もあります。内陸の国でありながら、湖と複数の河川があることから、農業と共に漁業も盛んです。「マラウイの田舎の教会/コミュニティホール」があるマンゴチ地区のチンパンバ村は、マラウイ湖の南の端に突き出た半島のような地形の場所にあります。世界でも9番目に広いマラウイ湖の沿岸には多くのダイビングスポットやリゾートが点在していて、この村にも色々な施設が作られています。マラウイ湖は国立公園になっていますが、ユネスコの世界遺産に登録され、主に水鳥の生息域を保護するために制定されているラムサール条約にも登録されています。内陸の湖ですが、多くの熱帯魚が生息していて、独特な進化を遂げている種がいます。また、多種に渡る水鳥の生息地であり、国鳥でもあるハクトウワシに似たアフリカウミワシが多く生息しています。
「マラウイの田舎の教会/コミュニティホール」の特徴
2017年に完成した「マラウイの田舎の教会/コミュニティホール」は、発展途上の地域でよく使われる手法で建設されました。都市には専門の建築業者がありますが、都市以外のいわゆる田舎には建設会社も無く、建設資材も簡単には手に入りません。そこで考え出されるのは、資材は建設地で入手できるものを使い、建設は以後の補修などを考慮して地元の人々の手で行う事でした。アフリカでは古くから様々なレンガで住居や集会所が作られてきました。「マラウイの田舎の教会/コミュニティホール」も同様に基本的にはレンガを組んで建設されています。四角いレンガが使用されていますが、中央に穴が開けられています。穴が開けられている理由は換気とある種の採光の為です。穴から差し込む陽の光が木漏れ日のような印象を持たせ、神聖な雰囲気になっています。中心の建物は円筒形をしていて、そのそばに玄関のためと、空気の流れを作り出すための少し高い四角い筒状の建造物が作られています。太陽熱で暖められた空気は高い所から排出されて、レンガの四角い穴の低い所から温度の低い空気が流入する自然換気が行われます。建物が円筒形になっているのは、この地域に古くから使われている作物の苗を保護する囲いや、収穫物を収納する倉庫の形で、人々が安心できる建物の意味合いがあります。また、祭りなどで使われる太鼓の形とも似ています。屋根には光を通す十字型の採光窓が作られていて、教会としての意味を表現しています。
「マラウイの田舎の教会/コミュニティホール」のまとめ
チンパンバ村の古い教会の建物は村の集会所としても使われていましたが、朽ちてしまった部分もたくさんあり、屋根からは太陽の光が点々と差し込んでいました。しかし、その光は逆に神聖な印象も与えていたようで、新しい建物にはわざわざ隙間が作られました。自分たちのための共同の施設と言える「マラウイの田舎の教会/コミュニティホール」は、村人の手で建設されたことで、修理が必要になった時にはすぐに対処できるように考えられました。この建物は自給自足と言える、村の未来を護ることができる建物ではないでしょうか。
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