ケメネス火山公園 ビジターセンター(Kemenes Volcanopark Visitor Center)

「ケメネス火山公園 ビジターセンター」のご紹介

 

数百万年前にはたくさんの火山が活発に噴火していた地域があります。現在では活火山と呼べる山は皆無となっている中央ヨーロッパのハンガリーには、太古の自然が残した様々な恩恵があります。ブドウ栽培に適した土壌があり、世界でも有数の温泉が湧出している国です。現在は存在していない火山の恵みが残る地域に建設された「ケメネス火山公園 ビジターセンター」は、火山について学ぶこともできる施設です。

「ケメネス火山公園 ビジターセンター」の設計者

 

「ケメネス火山公園 ビジターセンター」は、ハンガリー国内での建築設計競技会で設計者が決められました。40件以上の応募があり、見事優勝を勝ち取ったのは、首都のブダペストに事務所を置くフォルデス・アーキテクツです。この建築事務所はハンガリー人のラスロー・フォルデスが1994年に設立しています。彼は、1959年にブダペストで生まれました。両親は民俗学者ですが、芸術家や建築家を多く輩出している家系で、親族の中には国内の著名な美術家や建築家がいます。ブダペストの大学とフィンランドの大学で建築を学んだ後は、暫くの間フィンランドの建築家の元で働いていました。数年後にハンガリーの建築家であり大学教授でもある人物の誘いを受けて帰国し、ハンガリーで本格的に建築家として活動を始めました。事務所開設当初は個人の住宅などを中心に手掛けていましたが、21世紀に入ってからは公共の施設などを手掛けるようになりました。住宅設計で特筆されるのは、2001年にハンガリーの建築家が発案した光を透過するコンクリートを個人住宅に初めて使用したことです。現在は様々な建築物に使用されている半透明に見えるコンクリートですが、発明当初は使い道が未知な素材でした。このように最新の素材を使いこなしながら、国内で名を馳せる建築家になりましたが、地域に根差した建築家として活躍しています。

「ケメネス火山公園 ビジターセンター」の所在地

 

「ケメネス火山公園 ビジターセンター」は中央ヨーロッパの内陸の国、ハンガリーにあるサグ山の麓に建設されました。ハンガリーは共和制国家で以前の国名はハンガリー共和国でしたが、2012年にハンガリー(ハンガリー国)と変更されました。中央ヨーロッパから東ヨーロッパにかけて聳えるカラパチア山脈の東に位置する盆地が国土のほとんどです。内陸でありながらとても平坦な国で、国内の最高峰でも1,000mをわずかに越える山しかありません。水域はドナウ川をはじめ多くの河川があり、中央ヨーロッパ最大の湖であるパラトン湖があります。太古には多くの活火山が存在していたこともあって、肥沃な土地が多く、国土の8割が農耕地に適している土壌で、国土のおよそ半分は耕作地となっています。また、世界で8番目に温泉の多い国で、観光資源としてはもちろんですが、保養地もたくさん作られています。「ケメネス火山公園 ビジターセンター」が建っている場所は、サグ山の麓で、ハンガリーの西部に位置しているセルドモルクと言う町に含まれています。標高は300mに満たな高さで、約500万年前の火山の火口だけが残された山です。古来よりこの山では玄武岩が採掘されていて、建材として使用されていました。近代では20世紀の初頭から50年あまり玄武岩の採掘が行われていました。しかし、この山には固有の植物などが生息していることがわかり、現在は国立公園が管理する景観保護区となっています。

 

「ケメネス火山公園 ビジターセンター」の特徴

 

多くの人は火山と聞けば噴煙を上げる山を想像しますが、「ケメネス火山公園 ビジターセンター」は設計者が火山の本質を表したと語っている建物です。自然の山の形とは違う直線の多い建物で、外壁は暗い色のコンクリートで覆われています。これは、そばに立つサグ山から採石されていた玄武岩を表している色です。玄武岩は溶岩が固まってできた火山岩の1つで、基本的に濃い灰色をしているきめの細かい岩石です。ダークグレーの四角い建物からい、くつかの赤味を帯びた四角い箱のようなものが突き出ています。溶岩を想像するような赤味のある色は、四角い箱状の部分が耐候性のあるコルテン鋼で作られているからす。コルテン鋼は、降雨などによる鋼鉄の腐食を抑えるために、あらかじめ特殊な錆を浮かせた建材なので、赤錆のような色になっています。この箱は建物に埋め込まれているような形で、展示室などになっていて、屋内の1部天井や壁のような形で見られます。内壁はむき出しのコンクリートで、5階建ての建物を移動するための階段は黒い色の鋼鉄製です。床も灰色の樹脂製床材が使われていて、全体的に無機質な印象を与えています。建物に入ってすぐの場所は5階までの吹き抜けの部分があり、最上階の天井には四角い天窓が取り付けられて、陽の光が差し込んでいます。建物の最下層から続く吹き抜けは、火山の噴火口を表しています。

「ケメネス火山公園 ビジターセンター」のまとめ

 

2013年に完成した「ケメネス火山公園 ビジターセンター」は、博物館の要素もあります。この地域の火山の歴史を下層から順番に学んで行き、最上階にたどり着くと展望台があって、サグ山の姿を見ることができます。現在は火山としては活動していませんが、遥かな昔に盛んに噴火していた火山であったことが、現在のこの地域に恩恵を与えています。活発な火山がない場所に建設された「ケメネス火山公園 ビジターセンター」は、別の視点からの火山を表している建物と言えるのではないでしょうか。

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