チャペル・オブ・サウンド(Chapel of Sound)

「チャペル・オブ・サウンド」のご紹介

 

史上最大の建造物と称される万里の長城は、紀元前7世紀の頃から建設されはじめ、最終的に6,000kmを越える壮大な壁となりました。その壁は紛れもない人工物ですが、長い年月が過ぎ、自然と一体化した部分も多くあります。長大な壁の中には保存状態が良く、付近の山々と共に素晴らしい景観を見せてくれる場所があります。そのような風景の中に元々存在していたような建物が「チャペル・オブ・サウンド」です。

「チャペル・オブ・サウンド」の設計者

 

「チャペル・オブ・サウンド」を手掛けたのは、中国の北京に本拠地を置くオープン アーキテクトです。この建築事務所は、李 胡(リー ヒュー)と黄 文静(ホァン ウェンジン)の2人の中国人建築家が2003年にアメリカのニューヨークに最初のオフィスを開いています。リー ヒューは北京の精華大学とアメリカの大学で建築を学び、卒業後は、アメリカやヨーロッパで活躍する建築家の元で経験を積んでいました。その当時に、生まれ故郷の中国での企画に加わり、パートナーとして活動していました。ホァン ウェンジンは同じく北京の精華大学やアメリカ東部にある大学で建築を学び、卒業後は中国系アメリカ人建築家の元で建築家としての経験を重ねました。彼らが独立して共同開設した最初の事務所はアメリカにありましたが、北京にオフィスを開いてからは、中国を拠点として活動しています。彼らの建築に対する考えは、中国が悠久の時間をかけて育んできた思想と、アメリカで培った新しい感覚が融合したものになっています。その為、中には中国人らしくないと言われる作品もあります。建築には「詩」が必要と語っていますが、その内容は様々です。空間と素材などの質感、また、当該の建築物による体験などが複雑に混じりあうような作品を生み出しています。他にも、自然環境や街の中などの物理的背景と心理的な背景を重要視しています。現在彼らは、国際的な建築家としての活動の他に、母校の大学で後進のために教鞭も執っています。

「チャペル・オブ・サウンド」の所在地

 

「チャペル・オブ・サウンド」は地球上で最大級の建造物と謳われる万里の長城の1部、金山嶺長城(きんざんれいちょうじょう)と呼ばれる場所の近くに建設されました。金山嶺長城は、中華人民共和国の河北省にある都市の承徳市(しょうとく、チョンドー)に含まれています。首都北京の北東部に位置するこの街は、古来より避暑地として離宮などが建設されています。中国最後の王朝だった清の時代に建設された離宮や寺院などが残されていて、中国の文化遺産の保護を目的とした「国家歴史文化名城」に指定されています。また、ユネスコの世界遺産に登録されている建築物もあります。金山嶺長城は北京市と承徳市の境に位置する長城の1部で、万里の長城の中では1番美しく、保存状態も良い場所と言われる所です。また、他の場所では見られないいくつかの特徴があります。例えば壁だけでなく幾種かの建造物が他より多く作られています。見張りのための望楼が67個所、狼煙を上げるための烽火台(ほうかだい)が2個所、関所が5個所あります。中でも望楼は素材が木材やレンガなどいくつかの種類があり、形状は円筒や東屋のような屋根をもつもの、四角い箱型のようなものなど、多種にわたっています。加えて、この長城からは素晴らしい風景を望むことも出来ることで国の内外から多くの観光客が訪れています。

 

「チャペル・オブ・サウンド」の特徴

 

2021年に完成した「チャペル・オブ・サウンド」はコンサートホールとして建設されました。鉄筋とコンクリートで作られた半屋外の建物で、中をくり抜いた巨石、または、洞窟の1部分のように見えます。巨大で不規則な形の石板を重ねたような見た目で、最上部の屋根にあたる部分は平坦になっていて、外観に合わせたような穴が開けられています。建物の高さは12mあって、屋上には切り込みのような通路が作られているので、周囲の景観を見渡せるようになっています。全体の形状は下の方が小さく、上に行くに従って大きく広くなっているので、逆向きの三角錐に似た形に見えます。側面には、窓のようないくつかの四角い開口部があって、中央の最下部にあるステージの後ろ側は大きく開いています。この部分は屋外ステージにも利用されます。天井部分や内側の壁部分も不規則に重ね合わせたようになっていて、自然の巨岩をくり抜いて作られた感じが大きくなります。これらの形はコンピューターを使って計算されていますが、実際の建設では鉄筋を骨にして下から順番に作り上げられています。素材のコンクリートは、強化と見た目の印象を上げるために地元で採石される石が混ぜ込まれています。また、内部が単調にならないように手すり等の1部にブロンズが使用されています。

「チャペル・オブ・サウンド」のまとめ

 

設計者は「チャペル・オブ・サウンド」を「宗教の無い礼拝堂」と言っています。また、風景に溶け込ませるように作り上げたけれど、疑う余地のない人工物であることも重要視しています。このように、曖昧であったり、相反する要素を持たせたりした建物は他にあまり例を見ないのではないでしょうか。自然物に見えながら紛れもない人が作り上げたと自己主張する「チャペル・オブ・サウンド」は、建物の新しいあり方の1つと言えるでしょう。

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