ジュビリー教会(Jubilee Community Church)

「ジュビリー教会」のご紹介

 

宗教の建築物にはいくつかの特徴があります。中心的な場所に建つものは、大規模で荘厳な印象を与える建物が古くから建設されて、現在でも数々の教会や寺院が堂々たる姿を保っています。地域に根差した小規模な教会は、控え目で静かな佇まいをしているものもあります。地中海に面した国の長い歴史を持つ街に建設された教会は、上品でシンプルな形状をしています。「ジュビリー教会」は最新の技術で自浄する外壁を持っています。

「ジュビリー教会」の設計者

 

「ジュビリー教会」の建設にあたっては、1996年に建築競技会が開かれました。そこにヨーロッパやアメリカ、日本の世界でも著名な6人の建築家が招待され、その内の1人、リチャード・マイヤーが見事優勝を勝ち取りました。リチャード・マイヤーは、1934年にユダヤ系の両親の元に3人兄弟の長男として生まれました。ニューヨークの西側にあるニューアークで生まれ育ち、ニューヨーク州のイサカにある大学で建築を学びました。大学を卒業してから暫くは、国内でも有名な建築事務所で経験を積み、1963年に独立して、事務所を開設しました。当初の依頼は個人住宅が多く、自宅で細々と建築家としての仕事をこなしていました。しかし、いくつかの個人住宅で名が知られるようになり、次第に大きな企画を手掛けるようになりました。その結果、独立して20年目の49歳の時に当時最年少で、建築界のノーベル賞と言われるプリッカー賞を受賞しています。彼は、アメリカやヨーロッパの近代建築の巨匠と呼ばれる幾人かの建築家に影響を受けていますが、それは自分たちの世代の建築家全てだと言っています。しかし彼の有名ないくつかの作品は、モダニズムの巨匠と呼ばれる、スイス系フランス人建築家のル・コルビュジエが好んだ白い建物に影響を受けていると言われています。また彼は建築に対する思いを、「建築は伝統であり、連続体である。伝統を否定しようが強調しようが、過去からのつながりだ」とも言っています。

 

「ジュビリー教会」の所在地

 

「ジュビリー教会」は、イタリア共和国の首都ローマの中心部の東側の郊外にあるトル・トレ・テスト地区に建設されています。トル・トレ・テストは、20世紀の半ばまではローマ近郊の田園地帯にある村の1つでした。地名の由来は、17世紀に建設された教会があり、隣接して建っていた搭に取り付けられていた石灰岩の1種に掘られた3つの頭部をイタリア語で表しています。その3つの頭の浮彫は、おそらく古代の石棺の1部であったのではないかと推測されています。20世紀の半ばにその搭が崩壊した時に、浮彫にも多少の損傷がありましたが専門家の監修の元で修復されました。修復された3つの頭部の浮彫は、現在は廃墟のようになっている教会の壁に設置されています。ローマはとても古い歴史を持つ都市で、およそ14,000年前には人が暮らしていた痕跡が発見されていますが、紀元前8世紀に都市として建設された時からこの地域の中心として機能していました。支配者や権力者が変わるたびに街を守るために城壁などが建設されましたが、現在もその1部が残されています。3世紀と6世紀に建設された城壁はローマの街を取り囲んでいましたが、長い時間が過ぎて多くが崩壊してしまいました。トル・トレ・テストの村は、それらの城壁のすぐ外側に位置していました。

「ジュビリー教会」の特徴

 

「ジュビリー教会」は、建設されているローマのトル・トレ・テスト地区の活性化と地域住民に様々な奉仕を行うために、隣接するコミュニティセンターと共に2003年に完成しました。設計者の得意とする白い建物で、簡素で上品な印象のある建物です。白い建物は年月と共に様々な要因で黒ずんできたり、素材によっては黄ばんでくることがあります。しかし、「ジュビリー教会」の白い壁は自浄作用を持たせることで環境汚染などによる汚れを寄せ付けないようになっています。球体の1部を取り出したような3つの白い壁は、シンプルに見えますが、入念な計算の上で美しい形に整えられています。形は簡素ですが自立させるために1枚の壁ではなく、全部で256個のブロックに分割されたものが組み合わされています。打ち寄せる怒涛を簡略化したような印象のある3つの壁は、外側から17mと22mと27mの高さがあり、それぞれの壁の間には天窓のようなガラス天井と側面もガラス壁になっています。これらの白い壁の基本はコンクリートで作られています。その上に「ジュビリー教会」を建設するために、特別に開発されたセメントが両面を約12cmの厚さで覆っています。光触媒セメントと呼ばれるこの資材は、2酸化チタンベースとなっていて、白い色はイタリアで採石される白さで有名なカラーラ大理石を粉末にしたものが混ぜられています。2酸化チタンは紫外線に晒されると汚染物質を分解する効果があり、加えて苔などが生えないようにもなっています。

「ジュビリー教会」のまとめ

 

「ジュビリー教会」の3つの白い壁は「シェル」や「帆船の帆」とも呼ばれ、地域住民に親しまれています。この白い壁のために特別に開発されたセメントには、設計者や開発者も思わなかった良い効果がありました。住宅地で近隣に公園もありますが、やはり都市の1部であり、多少の大気汚染があります。「ジュビリー教会」の白い壁のそばの空気の汚染度が低いことがわかり、2酸化チタンが作用しているのではないかと推測されています。教会の役割は様々ありますが環境も浄化できるのであれば、最上の建物と言えるのではないでしょうか。

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