「アルクアンシエル」のご紹介
アクセサリーや流行の服装で自分の身を飾る人はたくさんいます。そして、自分が暮らす場所を居心地の良いようにインテリアやエクステリアに労力を傾ける人もいます。フランスの街に建設された集合住宅は、家も着飾った方が良いと考える設計者のこだわりで彩の豊かな外観をしています。「アルクアンシエル」とはフランス語で「虹」を表す単語です。
「アルクアンシエル」の設計者
「アルクアンシエル」のデザインと設計を担当したのはフランス人建築家のベルナール・ビューラーです。彼は、1954年にフランス南部の村で生まれ、小さいころはフランスワインで有名なボルドーで育ちました。18歳の時に土木工学の基礎学習を終え、初等の職業資格を取得してボルドーの建築事務所で働くようになりました。この事務所は現代的な建築や美術を教育していたドイツの学校や、アメリカの近代建築の巨匠の1人に影響を受けていた建築家が運営する会社で、後のベルナール・ビューラーの作品にもその影響が伺われます。また、第二次世界大戦後の街の復興にも大きく貢献していて、その結果、個人や集合の住宅を得意としていました。31歳の時に建築家として公に登録され、1986年に自らの建築事務所を開設しました。彼も多くの住宅を手掛けていますが、彼のデザインは様々な色を使う外観が特徴です。彼は人生に彩が必要と考えていて、身の回りの衣服や雑貨などだけではなく、人々が暮らす建物も豊かな色彩が必要と言っています。住宅は住みやすさが1番ですが、美しさも必要と考えていて、灰色の建物ばかりの街は暗く、カラフルな建物は街を明るくすると語っています。住宅は、心地よく日々を暮らせる内部空間と、街を美しくできる彩豊かな外観が重要で、自分で住みたくなるような家を作ることを心がけているようです。
「アールクアンシエル」の所在地
「アルクアンシエル」は、フランス共和国の南西部に位置するフランスワインで有名なボルドーに建設されました。紀元前300年頃に町が建設されていますが、その約300年前には地中海側からブドウの栽培が伝わっていた様です。この街は、スペインに源流があるガロンヌ川が大きく蛇行している場所の左岸に建設され、以降左岸側に広がってきました。川の蛇行に沿って広がってきた町の形が三日月の形に見えることから、町に建設された港は「月の港」と呼ばれるようになりました。ガロンヌ川は世界でもあまり多くは見られない、海嘯(かいしょう)と呼ばれる海の潮が川を遡る現象が起こる川です。地中海側から大西洋に抜ける最短の地形に含まれ、陸路の途中からガロンヌ川による水運を利用し、大西洋に出る直前の街となったボルドーは交易の重要な港となり、拠点としても栄えてきました。多くの商人や権力者が建設した数々の建物が残っていて、港の周辺が歴史地区となり文化遺産として2007年に世界遺産に登録されました。川の右岸はすぐにブドウの栽培に適した石灰質の大地となっていて、世界的にも有名な高品質のワインが生産されています。また、気候は冬でも氷点下になることは稀で、夏も30℃を越える日はあまり多くありません。加えて日照時間が多く、降水量は年間を通して平均的に雨が降っていることがブドウ栽培のための好条件の1つになっています。
「アルクアンシエル」の特徴
数多くの色で囲まれた建物が2010年に完成した「アルクアンシエル」です。1階は駐車場で、2階はいくつかの事務所が入り、3階から7階までは集合住宅になっている建物自体はコンクリートで作られています。駐車場の部分は外からは見えにくい穴開きの金属板で取り囲まれています。これは、防犯と地面に植えられたツタ植物がのびるための支えになるために設置されています。2階のオフィス部分はガラスの外壁になっていて、明るい就業空間を提供しています。1番の特徴となる3階以上の住宅部分の外壁は色とりどりのガラス板が取り囲んでいます。加えて、所々に外壁から飛び出している箱のような部分もそれぞれ違う色のガラスがはめ込まれています。平面図で見ると緩やかな繭のような形をしていて柔らかな印象を与えています。まるで、ひっくり返したカラーサンプルを思い思いに並べたような外周は、住宅部分の外廊下を隠すように設置されている細長いガラスの板です。平行に並べられ、少し角度をつけて設置されているガラスは、通路に色々な光を投げかけています。飛び出している箱は住居のテラスになっています。約1,500枚の色ガラスが不規則に並べられていますが、色の種類や並べ方によってはケバケバしい下品な印象を与える結果にもなりかねません。しかし、設計者の色の使い方は素晴らしく、多色を使用していても落ち着きの無さはなく、住人にも周囲の人々にもハイセンスな建物と見られています。
「アルクアンシエル」のまとめ
とてもカラフルな外観を持つ「アルクアンシエル」は、そこに住む人々にとって自慢できる住居となっているようです。設計者が語る逸話には、その住人は自分が住んでいる場所の色がとても気に入っていたようで、交換する必要のあったガラス板の色が交換前と違っていた時に苦情がきたということがあったそうです。設計者は室内の装飾だけでなく屋外も彩豊かにすることが大事と考えています。生活空間を明るくするために、文字通り虹のような色合いは最適な素材と言えるのではないでしょうか。
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