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「インド経営大学 バンガロール」のご紹介
世界には数多くの多種多様な建造物があります。その歴史も古く、木造建築物では日本の法隆寺が現存する最古の建築物と言われていて、およそ1,400年の歴史があります。しかし、石造の建築物は更に古く、紀元前に建設されて現在も使用されている建物がいくつもあります。「インド経営大学 バンガロール」は、インド国内に建ついくつかの古い建築物から設計者がひらめきを得た少し不思議な空間を作り出している建物です。
「インド経営大学 バンガロール」の設計者
「インド経営大学 バンガロール」を手掛けたのは、インドの建築家でインドの近代建築に大きな影響を与えたバクシュリナ・ヴィタルダス・ドーシ(B.V.ドーシ)です。彼は1927年にインド西部のほぼ中央にあるプネーと言う街で生まれました。初めての誕生日を迎える前に母親が亡くなり、彼は祖父や叔母に育てられ、まだ幼いころの火事で足に怪我を負い、歩くときに少し不自由な思いをしていました。20歳の時にインド西部のムンバイの伝統ある芸術学校に入学して建築を学びました。学校を卒業してすぐにヨーロッパへ行き、フランスの巨匠、ル・コルビュジエの元で建築家としての実践を学びました。ル・コルビュジエの元で働いた3年間は、それ以降の彼の作品に大きな影響を与えたと言われています。インドに戻った彼は自らの事務所を開設し、当初はインドでのル・コルビュジエの建築を監督する仕事をしていました。その後、アメリカの建築家、ルイス・カーンの現地監督としても働くようになって、更に実務経験を重ねました。このような経緯から彼は、インドのモダニズム建築とそれに続くブルータリズム建築をリードする建築家になりました。2023年に95歳で亡くなった彼は、建築家のノーベル賞と言われるプリッカー賞をインド人建築家として初めて受賞し、建築家へ授けられる様々な賞を受け取っています。
「インド経営大学 バンガロール」の所在地
インド経営大学は国立の大学で、国内の21個所に学校や研究施設があります。その中でも初期に設立されたのが「インド経営大学 バンガロール」です。バンガロールはインド共和国南部の中心的な都市で、2014年以降正式名称をベンガルールに変更しています。この街はイギリスの統治下にあった頃に、街に水を供給しているカヴェリ川にある滝を利用した水力発電によって、国内でも最初期に電力供給が始まった都市です。すでに経済の地盤が整っていたところに、電力というエネルギーが使えるようになったことで更に産業が活発になりました。特に科学産業の発展は目覚ましく、第二次世界大戦中にも兵器の開発が盛んに行われていました。戦後、インドが独立した後も科学産業は発展し続け、現在に至っています。現在では、最先端技術や情報技術の分野で国をけん引する都市に成長し、この分野は国内トップになり、輸出量は国の約三分の一を担っています。このような産業形態であることから、この街は「インドのシリコンバレー」と言われています。また、近年になって生物化学の分野も加わり、国のバイオテクノロジーの首都とも呼ばれています。
「インド経営大学 バンガロール」の特徴
1983年に完成した「インド経営大学 バンガロール」の建物は、現在も成長し続けていると言える建築物です。基本的にはコンクリートと、灰色の石材で作られている建物です。この建物は、人工物と自然が目に見える形で融合しています。建設から40年が経った現在は、ファンタシーやロールプレイングゲームにある植物に埋もれた神殿、もしくは宮殿の廃墟のような印象があります。この建物の依頼を受けた時に、設計者が参考とした国の北部にある歴史的な街に建つ宮殿や、南部の街のヒンズー教の寺院を思い起こさせるような、円柱が連なる柱廊や回廊が組み込まれています。コンクリートで作られている藤棚のような桟になっている部分や、等間隔で立つ円柱の影が太陽の動きによって刻々と風景を変えています。壁や床、階段などは近隣で採石されている花崗岩や石灰岩が使用されていますが、これらの石材もコンクリートに似た灰色の石が使われています。大小の部屋やそれを繋ぐ回廊や柱廊は直線的な形で、壁はレンガ状の石材で組まれ、とてもシンプルなデザインになっています。簡素でありながら美しさもある建物ですが、無機質に見える無彩色の柱廊や回廊に植物が加わることで、全く違う景色になり、実際より長い年月がこの建物を通過しているように見えます。多くの樹木や草花で埋もれたこの建物は、現在では当たり前になってきている持続可能な建築物として、いくつかの賞を受賞しています。
「インド経営大学 バンガロール」のまとめ
インド経営大学は、現在国内に多くのキャンパスを置いています。バンガロールはその中でも古い歴史を持っていて、それ以前に建設されたインド北西部の都市、アーメダバードの校舎は設計者に影響を与えた二人の建築家の内の一人が担当して、B.V.ドーシはその建設の監督を担っていました。その経験から「インド経営大学 バンガロール」の建設を依頼されました。古い建築物から発想を得たこの建物は、完成から数十年が経過していますが、今でも未来へと続く建物になっているのではないでしょうか。
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