「ヘリックス ブリッジ」のご紹介
ほとんどの生物は、種を存続させるために重要な遺伝子情報が入っているDNAを持っています。DNAは4種類の塩基から成り立っていて、それらが織りなす2重の螺旋を画像化されたものを見たことのある人は多いのではないでしょうか。イラストで描かれたものや、アニメーション化された物など、どれを取ってみても美しいと形容できる螺旋が表されています。アジアの都市に建設された「ヘリックス ブリッジ」は、DNAの2重螺旋を模した形をした歩行者専用橋です。
「ヘリックス ブリッジ」の設計者
「ヘリックス ブリッジ」のデザイン、設計を手掛けたのは、オーストラリアで最大規模と言われる建築事務所の「コックス・アーキテクチャー」を率いるフィリップ・コックス(フィリップ・サットン・コックス)です。彼は、第二次世界大戦が始まってすぐの1939年に、オーストラリアの南東部にあるニューサウスウェールズ州で生まれました。中等教育を受けている頃に芸術の分野に才能があることがわかり、卒業する寸前で建築の道へ進むことを希望したようです。シドニーの大学で建築を学び、大学を卒業して間もなくの1963年に「フィリップ・コックス&アソシエイツ」を開設しました。1960年代のオーストラリア建築界では、シドニー派と呼ばれる独特の建築様式を用いた建物が作られていました。その頃、世界的には装飾を排除して簡素な見た目のモダニズム建築がもてはやされていました。シドニー派の建築物は、オーストラリアにある地元の素材を使い、シンプルではあってもデザイン性も求めた、素朴な外見でも洗練された印象がありました。彼は、そのシドニー派の典型とも言われる作品を多く作り出しています。数年前に第一線を退きましたが、現在もアジアを中心とした企画に携わっています。また、長年の建築家としての功績が認められ、オーストラリアはもちろんアメリカなどでも高く評価され、様々な賞を受賞しています。
「ヘリックス ブリッジ」の所在地
「ヘリックス ブリッジ」は、1つの都市で成り立っているシンガポール共和国のマリーナベイに架けられています。シンガポールはマレー半島の南端に面した島国で、最大の島がシンガポール島です。20世紀半ば頃から盛んに海岸付近の埋め立てが行われていて、シンガポール海峡に面したマリーナベイもその中の1つです。シンガポール島の南側に位置した古くから商業の中心であったダウンタウン・コアとマリーナ湾の北東側にあるマリーナ・イースト、南西側にあるマリーナ・サウス、更にその南隣のストレイツ・ビューの4地区にわけられています。埋め立ての企画は、国の都市再開発局が主導となって、商業や娯楽、住居を目的として建設されました。マリーナベイが取り囲んでいるマリーナ湾はシンガポール海峡に面していますが、堰で仕切られていて、複数の川が流れ込む淡水の貯水池となっています。この島には天然の湖などが無いため、飲料水などの水資源はいくつもの貯水池で賄われています。この地区は比較的新しい街なので、最新の技術を使い効率の良い都市構造になっています。例えば、水道や電気、ガス、通信など都市機能に欠かせないインフラを、地下のトンネルにまとめて設置した共同溝(または、ユーティリティ トンネルなど)が作られています。この共同溝はアジアでは東京に次いで2番目に作られました。
「ヘリックス ブリッジ」の特徴
「ヘリックス ブリッジ」の依頼主は国の機関で、建設にあたり様々な条件がつけられました。そのすべては、使用する歩行者が快適に通行できるようにする為でした。「ヘリックス ブリッジ」で1番印象的なのは、その外観にあります。それは、ほとんどの生物が持っているDNAに似せた緩やかな螺旋を描く天蓋です。ただし、螺旋の向きは通常の自然界に見られるものとは反対に巻いています。この橋は基本的に、2種類のステンレスを合わせた2相ステンレス鋼と炭素と鉄の合金である炭素鋼で作られています、ステンレス鋼の骨組みで2重の螺旋が組まれ、内側の螺旋の上部には強化されたガラスとステンレスのメッシュパネルで覆われています。これは、赤道直下の強力な日差しを防ぐためと、この地域特有の突然降る強い雨で濡れないようにする為です。橋はコンクリートの土台1つにつき、ステンレス鋼のパイプ3本で支えられています。華奢に見えるパイプですが、橋の本体は極力軽くするように設計されている上、パイプの中は中空ではなくコンクリートが詰め込まれて補強してあります。橋を軽くすることも条件の1つとなっていました。橋の両端は、それぞれ対岸の遊歩道から自然に繋がるようになっているので、橋自体はゆるやかなカーブを描いています。全長280mの橋には4個所に見晴らし台が設置してあり、隣の車が走れる広い橋の歩道にも繋げられている場所が1個所作られています。
「ヘリックス ブリッジ」のまとめ
「ヘリックス ブリッジ」が完成したことで、マリーナベイの遊歩道が全てつながりました。隣には広い車も渡れる橋が架けられていて、対照的な風景が広がっています。夜間には通常、DNAを表す赤や緑の照明がつきますが、様々なイベントや季節によって多彩に彩られています。特徴的な外観を持つ「ヘリックス ブリッジ」は、日中でも目を引く形になっているので、街の新しいランドマークとなっています。また、独創的な形の橋はゲームの舞台にも使用されています。
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