ブラジリア大聖堂(Cathedral of Brasília)

「ブラジリア大聖堂」のご紹介

 

近年では都市を1から建設することはめったにありません。20世紀の中頃に、南米の国ブラジルでは高原地帯に首都を移す計画が決まりました。公共や私有の様々な建築物が建設され、多くの建築家が関り、モダンな建物が次々と作られました。その中には、人々の心の支えとなる宗教関係の施設もありました。「ブラジリア大聖堂」は白く清らかな印象を持つ教会建築です。

「ブラジリア大聖堂」の設計者

 

「ブラジリア大聖堂」は元より、ブラジルの首都、ブラジリアの建設にも大きく関わっていたのが、ブラジル人建築家のオスカー・ニーマイヤーです。彼の正式な名前は、オスカー・リベイロ・デ・アルメイダ・ニーマイヤー・ソアレス・フィーリョと言う長い名前です。この名前の1部は、法学者で司法長官も務めた母方の祖父から受け継いだ名前です。彼は1907年に、当時はブラジルの首都であったリオデジャネイロでドイツ系の両親の元に生まれました。様々な宗教の素晴らしい建物を手掛けていますが、彼は小さい時から無神論者だったようです。高等学校を卒業してすぐに結婚し、後に建築家となった1人娘をもうけています。結婚するまでは自由奔放に暮らしていた彼ですが、結婚してすぐに工学と建築を学ぶために国立の大学に入学しました。ブラジルの建築家の元で働いていた時に出会った、モダニズムの巨匠と謳われる、ル・コルビュジエの影響を受けたと、彼は言っていますが、自分の作品は別の方向性も持っているとも言っています。ブラジリアの建設の後に政治が不安定になり、彼はフランスに亡命して建築家としての活動を続けました。ヨーロッパでも、著名な建築家と共に大小様々な企画に参加していましたが、20年が過ぎブラジルの政治が安定したことから故郷に再び事務所を構えました。今見ても古さを全く感じさせない多くの作品を残して、2012年に105歳の誕生日を迎える直前に病気で亡くなっています。

「ブラジリア大聖堂」の所在地

 

地球上で一番新しい都市と言える、ブラジル連邦共和国の首都ブラジリアに「ブラジリア大聖堂」が建っています。ブラジルがポルトガルから独立した1822年には、リオデジャネイロが首都を務めていました。ブラジルは広大な国土がありますが、大西洋に面した所に都市や大きな街が集中しています。リオデジャネイロと共に、南半球最大の都市、サンパウロも大西洋に面しています。広い国土の内陸部も活性化したいと考えられ、首都を新たに建設すると言う壮大な計画が持ち上がったのは、19世紀の終わり頃でした。建設場所は日本の5倍もある、ブラジル高原とすぐに決まりましたが、本格的に首都の建設が始まったのは、第二次世界大戦が終わって15年が経過した1960年でした。建設地は雨季と乾季のある気候なので、最初に行われたのはパラノア川をせき止めて人工湖を作る事でした。都市に必要な水を確保するために作られたパラノア湖を囲むように街が広がって行き、今は市民の憩いの場も提供していて、多くの水鳥も生息しています。わずか3年半で一通りの施設や住居が完成して首都が移されました。この時には、国内の建築家が腕を振るい、多くのモダニズム建築が姿を現しています。ブラジル高原の中央部で、標高が1,000m以上ある為、低緯度にも関わらず1年を通して30℃を超えることは少ないようです。この街は、首都として供用が開始されてからわずか27年でユネスコの世界遺産に登録されています。

 

「ブラジリア大聖堂」の特徴

 

「ブラジリア大聖堂」は、ブラジルの首都がブラジリアに建設された時、最初に建設された建物の1つです。建てられてから半世紀を過ぎた現在でも、洗練されたデザインの建物です。白いドレスのようでもあり、王冠にも見える外観をしていますが、設計者は手を合わせて広げたような形、または、手を天に差し伸べているイメージを意識していたようです。円錐形を基本として、上部で外側に反るような形の柱が16本、直径70mの円形に組まれていて、鉄筋コンクリート製の柱には白いタイルが張られています。建物の周囲は深さが40cmの水盤に囲まれていて、屋内の気温を下げる効果を持たせています。約4,000人が収容できる屋内のホールには、水盤の下をくぐるように、一旦地下に降りてから入るようになっています。柱の間にはステンドグラスが取り付けられています。キリスト教の教会にはステンドグラスが取り付けられていますが、「ブラジリア大聖堂」は規模が違います。建設当初は幾何学的なモザイク模様だけで透明なガラスだけでしたが、数年後に青と白と茶色で色が付けられ、大きな模様が浮かび上がっています。この色はブラジリアを表した色と言われています。大聖堂の内部は、広い空間になっていて、3体の天使が40mの高さの天井からワイヤーで吊り下げられています。

「ブラジリア大聖堂」のまとめ

 

「ブラジリア大聖堂」の前庭には、大聖堂と同じイメージのある鐘楼が建っていて、4つの鐘が下げられています。この鐘は、スペインからの移民やその子孫たちが寄付したもので、スペインの北部にある街で作られ、はるばるブラジリアまで運ばれてきました。また、入り口付近の広場には、ブラジル人の彫刻家による、高さが3mある巨大な4人の伝道師を表したブロンズ像があります。鐘楼も20mの高さがあり、全てが大きな建造物ですが、その姿から威圧感は持たず、清楚な佇まいのある建物と言えるのではないでしょうか。

 

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