「アメーバ ハウス」のご紹介
世界には色々な物を真似た形の建物がたくさんあります。例えば楽器や靴、バスケットなどの形をした建物です。他にも自然界に存在するものをなぞらえた建物もあり、そのような建物は有機建築と言われています。南米に建設された「アメーバ ハウス」は、単細胞の原生生物を模した住宅で、上から見た様は正に分裂直前のアメーバのような形になっています。
「アメーバ ハウス」の設計者
「アメーバ ハウス」のデザインと設計を行ったのは、ハビエル・セノシアンです。彼は、1948年にメキシコで生まれ、メキシコ国立自治大学で建築を学びました。有機的な形状の建築物を作り出している第一人者として名が高く、アーキテクトラ・オーガニカ(有機建築)と言う建築事務所の創設者です。彼の作り出す作品は、動物や植物、洞窟や滝など自然界にある多種多様なものを模倣した見かけをしています。彼は、「四角い箱の中の四角い部屋で、四角い家具に囲まれた生活は人間らしくない」と考えていて、人間も生物の1つだという事から住む場所も直線的な所では駄目だと言っています。数十年に亘り住んでいる自宅も有機的な形状をしています。生物や自然の形状を組み合わせた芸術作品とも言える建物は、生物の目が窓であったり、外装のタイルがウロコであったりで、色もそれにあわせたものが使われているので、人が住む住宅には見えないものがたくさんあります。また、建物だけでなく、その周辺にも注意を払っています。窓から見える景色が周辺の開発によって人工的な物ばかりにならないように、周囲の土地も含めて公園のようにしたりしています。現在彼は、母校の大学で後進の為に建築の理論やデザインの指導も行っています。
「アメーバ ハウス」の所在地
「アメーバ ハウス」は、ブラジル連邦共和国のサンパウロ州にあるイトゥと言う街に建設されています。サンパウロ州はブラジルの南部にある、国内で日系の人が一番多く暮らしている州です。イトゥは州の南部に位置していて、街の名前は、この地域に住んでいた先住民のトゥピ族の言葉で「大きな滝」を表しています。街にはティエテ川とその支流のジュンディアイ川が流れていることから、その様な地名になったようです。この街はブラジルの他の都市と同じように、17世紀にポルトガルからの移民によって建設されました。イトゥの最初はサトウキビや綿花の栽培を主に行う農村として始まりました。18世紀になるとヨーロッパへの砂糖の輸出によって次第に街は大きくなっていきましたが、19世紀の終わり頃にはサトウキビの生産も下火になり、帝政であった国に農民たちが不満を持つようになりました。このような経緯からイトゥで共和党が結成され、この街はブラジル共和国発祥の地と言われています。また、近年ではイトゥは「大きなものの都市」とも呼ばれています。この街出身の人気コメディアンが、自分の故郷には大きなものがたくさんあると言うようなジョークを発したことが発端となって、街には大きなオブジェがたくさん作られました。巨大な公衆電話や稼働している巨大な信号機などが、街の至る所に設置されて観光客の目を楽しませています。
「アメーバ ハウス」の特徴
「アメーバ ハウス(カサ アミバ)」は、名前の通り分裂直前のアメーバのような形に見える住宅です。広大な敷地にはゴルフ場があって、「アメーバ ハウス」はその北側に建設されています。南半球なので北向きの方が日当たりも良くなります。3本の太い足のように見える柱の部分と、それを繋ぐようにある部屋の南北2面は大きなガラス窓になっています。2階建の上階にある窓は少しゆがんだ円形になっていて、何かの生物の目のようです。このような形の建物を作るために設計者は、フェロセメントの研究を長く続けています。フェロセメント工法は、金網で形を作り、それにモルタルを張り付けていく方法で、19世紀半ばにフランス人が手漕ぎのボートを作るために考案した方法です。この方法で有機的な形が自由に作れる他、様々な方向からの衝撃などにも強い建物を作ることが出来ます。外装の色は、金と銅の緑青を混ぜたような色合いになっていて、周辺の風景と良くなじんでいます。屋内の床には木材と大理石が使われ、外装と違う天然の素材が使用されています。主な家具は家と同化したようになっていて、床や壁と一体化されています。家の外にはプールが作られていますが、それら全ての建設のために土地に盛り土をしたり、掘り下げたりはほとんどされていません。敷地の形状が、ほぼそのまま使われています。
「アメーバ ハウス」のまとめ
「アメーバ ハウス」の設計者、ハビエル・セノシアンの自宅も有機的な形状をしていて、その様な形が一番自然だと言っています。彼の作品の中でも「アメーバ ハウス」は控え目な形と色をしていると言えますが、彼らしさをよく表している建物です。色合いも明るい日中は控え目に見えますが、夜間の照明に照らされた様子は神々しさがあるように見えます。生物としての人間が住む場所と考えると、「アメーバ ハウス」は奇抜な建物では無く、自然な家となるのではないでしょうか。
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