ハースハウス(Haas House)

「ハースハウス(Haas House)」のご紹介

 

長い歴史を持つ都市には多くの古い建築物が残されています。ヨーロッパの中央付近にある都市も同様で、街の中心部には歴史的建造物が建ち並び、荘厳な佇まいの教会も建っています。その様な場所に未来的な建物が現れれば、賛否両論あるのも仕方のないことでしょう。しかし、「ハースハウス」は未来的な外観はありますが、近隣の建物にも考慮したビルです。

「ハースハウス」の設計者

 

「ハースハウス」を手掛けたのは、オーストリア人の建築家であり工業デザイナーだったハンス・ホラインです。彼は、鉱山技師だった父親の元に1934年にウィーンで生まれ、小さい頃にはオーストリアの著名な美術家が催した絵画教室に参加していました。ウィーンの美術学校を卒業した後は、アメリカの民間団体からの奨学金を得ることが出来ました。その奨学金でアメリカ合衆国に渡り、複数の大学で建築や都市計画を学びました。アメリカに在住していた間に、アメリカ南西部やメキシコでオーストリア出身の近代建築を手掛けていた建築家の作品に触れ、非常に興味をそそられていたようです。また、アメリカ原住民のインディアンが住む集落の建造物にも関心を寄せていました。他にも、当時のモダニズム建築の先駆者と呼ばれるような幾人かの建築家と出会った事が、以降の彼の作品に大きく影響を与えました。彼自身の作品はポストモダニズムと呼ばれる、シンプルな中にも装飾性のある建築物が多く見れられます。大学を卒業後は、アメリカや故郷のオーストリアでいくつかの建築事務所で働いていました。1964年にウィーン戻り、自らの事務所を開設しています。同時に数年の間、建築関係の雑誌の編集も行っていました。オーストリアの芸術家に授けられる賞や文化勲章に加え、建築界のノーベル賞と呼ばれるプリッカー賞も受賞した彼は、2014年に80歳で亡くなっています。

「ハースハウス」の所在地

 

オーストリア共和国の首都ウィーンに「ハースハウス」が建てられています。ヨーロッパの中央部分に位置する内陸の街で、アルプス山脈の東の端に当たります。旧石器時代には人々がこの地で暮らしていた痕跡が残っていますが、街として歴史上に名前が記されたのは13世紀の頃です。アルプス山脈の麓に位置する為、冷涼な気候で、夏季の気温は30℃を超えることはありません。しかし、冬でも氷点下を下回ることは少ないようです。降水量は比較的少なく、日本の平均降水量のおよそ三分の一ほどで、ほとんどが夏季に集中しています。ヨーロッパで2番目に長いドナウ川が街の中央を流れていて、街の西には有名なウィーンの森が広がっています。200万弱の人口を抱えるヨーロッパでも有数の大都市ですが、自然に恵まれた街です。街の面積のおよそ1割が耕作地となっていて、多くの種類の野菜や、ワイン醸造の為のブドウの栽培が行われています。街で消費される野菜の約三分の一は市内で生産されています。また、この地域は植物相の境界があって、植物にとってはとても複雑な環境となっています。その為、珍しい草花なども生育していて、ウィーンの名前が付いた花もあります。

 

「ハースハウス」の特徴

 

「ハースハウス」の周りには、堂々たる尖塔がそびえる大聖堂や王宮が建ち並んでいます。近未来的な外観を備えていますが、その様な場所に建っていてもあまり違和感がありません。1987年に当初ショッピングセンターとして建てられた5階建の建物です。外観はよく反射するミラーガラスで覆われていて、正面の真ん中から左半分は階段状に取り付けられた四角いブロックがさらに覆っています。建物前面を覆うガラスは換気の為に、下向きに開くようになっています。四角いブロックは中央部がくり抜かれた形で、そこからガラスの壁が見えます。通りに沿った形に作られているので、大きな曲線を描いた形になっていて、建物の右側には二つの繋がった円筒形の部分が作られています。この円筒は1階部分が無く、建物の壁から突き出たような形になっています。円筒を支えているのは、ウィーン近郊で採石される大理石で、外観に設置されている四角いブロックと同じ石材で作られています。ベージュの大理石で覆われた部分が、正面のおよそ半分ほどあるために近隣の建物となじんでいるような印象を与えているようです。とてもよく反射するガラスなので、下から見上げると空の色をよく映して、建物の色が変わるようなイメージがあります。晴れた日には青い外壁になり、曇りの日は外壁の大理石と同化して、夕陽が映った時には金色に輝くような建物に変身するようです。

「ハースハウス」のまとめ

 

「ハースハウス」の建設には、景観を損ねると言うことで反対する人もかなりいたようです。中世ヨーロッパを思わせる石造りの建物が建ち並び、ゴシック様式の荘厳で美しい教会のある通りに、場違いにも思われる「ハースハウス」の姿が現れた時の印象は様々だったようです。しかし、近接する建造物を映す「ハースハウス」は次第に人々に受け入れられ、特に「ハースハウス」の斜め向かいに建つシュテファン大聖堂が映り込む位置は、観光客にも人気のスポットとなっているようです。

 

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