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「Mestizo Restaurant」のご紹介
イギリスのストーンヘンジやフランスのカルナック列石など、地球上には多くの謎に満ちた巨石遺跡が残されています。南米チリの都市公園には、まるでその巨石遺跡を思わせるようなレストランがあります。「Mestizo Restaurant(メスティーソ レストラン)」の建物は大きな岩が支えています。
「Mestizo Restaurant」の設計者
「Mestizo Restaurant」の設計を手掛けたのは、チリの首都サンティアゴで1965年に生まれたスミルハン・ラディックです。彼は様々な事柄にこだわりのある人物で、日本であれば偏屈、頑固、石頭などと言われそうな人物です。例えば、建築に対する信念にかなりのものがあります。一番こだわっていることは、建物が自然の風景に与える影響を最小限にすることで、現代社会では多くの建築物が風景にダメージを与えていると考えているようです。彼のこのようなこだわりが最大限に表された建造物の一つに丘の上の塔があります。かなりの高さの塔ですが、空模様によっては消えてしまうような視認しにくい建物になっています。また、現代に於いては小さな会社でもホームページを作ったり、SNSで情報を発信したり、ウェブを活用している所がほとんどと言っても過言ではない社会となっていますが、彼は自分の建築事務所を開設してからもホームページなどは作っていません。加えて、雑誌のインタビューなどには答えているので、間接的には自ら情報を発しているとも言えますが、SNSなどのツールを使った情報の発信もしていません。その為、ウェブ上にある彼の情報は全て第三者の発する情報です。このような人物であることから、建築家の異端者扱いされる事もあって、一部では「建築界のロックスター」と呼ばれています。
「Mestizo Restaurant」の所在地
南北に細長い国土を持つチリ共和国の首都サンティアゴの公園に「Mestizo Restaurant」が建っています。サンティアゴは、太平洋とアンデス山脈の間の中央部に位置する広大な盆地に広がる都市です。海へも山へもほぼ100kmの距離があって、内陸とも言える気候の場所で、夏は乾燥気味で、冬季に雨が降ります。冬は氷点下になる事は少なく、夏でも30℃前後で過ごしやすい気候です。しかし、太平洋の海水面温度の変化によるエルニーニョ現象やラニーニャ現象の南の端に当たることから、これらの影響を受けやすく、それによって降水量が大きく変わる事が頻繁に起こります。この街は16世紀にスペイン人によって建設された街です。広い盆地と言う地形で、現在でも街の中心部にいくつかの丘があります。これらの丘は公営の公園になっていて、市民の憩いの場所となっています。他にも大きな公園がいくつも作られていて、市内を流れるマポチョ川の川沿いに作られているバルマセダ公園の建設には日本も関りがあります。建設当初は日本の庭園を意識したジャポネス公園になる予定でしたが、建設途中で第二次世界大戦が勃発して、その計画はなくなってしまいました。その後、二つある丘の公園の内小さい方のサンタルシアの丘公園のそばにハポネス公園と言う日本庭園が造られました。
「Mestizo Restaurant」の特徴
「Mestizo Restaurant」は、自治体が運営している都市公園の端に作られたレストランで、建物の設計はコンペティションと呼ばれる建築設計競技会でスミルハン・ラディックの案が選ばれました。彼の理念である風景を壊さない建物となっていて、一番目に付くのは巨大とも言える岩の柱ではないでしょうか。近隣の山から採石された花崗岩が使われ、打ち放しコンクリートの太い梁と組み合わさった様子は荒々しさを感じさせます。近年では花崗岩の採石は山から切り出す方法が多いのですが、稀に玉と呼ばれる角の取れた丸い感じの形で採石されるものもあります。「Mestizo Restaurant」の柱に使われている花崗岩も玉石の形で採石されています。最大で10t以上もある石の上下部分は平らに切り取られて、25㎜の太さの鉄筋が35cmほど埋め込まれ、梁と基礎につなげられています。この地域は地震が多く発生しますが、花崗岩の柱と太い梁が地震による揺れを軽減するように計算されています。梁の部分は打ち放しのコンクリートですが、真っ黒に塗装されています。温もりのある雰囲気を持つ金色系の花崗岩と黒い梁の組み合わせは、武骨なイメージを粋な雰囲気に作り替えているようです。池や芝生のある公園に面している所は大きなガラス戸になっていて、気候の良い時には開け放たれているので、壁のない開放的な雰囲気の店内となります。また、天井もガラスが多く使われているので、日中は人工照明が無くても明るい室内となっています。
「Mestizo Restaurant」のまとめ
Mestizoとはスペイン語で「混血」を表す単語で、特にこの地ではスペイン人と南米大陸に先住する人達との混血を示しています。サンティアゴの街を流れるマポチョ川沿いにはいくつかの公園が作られています。その中のビセンテナリオ・ビタクラ公園はチリの独立200年を記念して作られた公園の一つです。それらの公園には国内で活躍する芸術家の作品も多く設置されています。その公園の北の端に作られた「Mestizo Restaurant」は、都市の中にあっても自然を感じることのできるお店であり、たくさん展示されている芸術品の一つと言っても過言ではない建物ではないでしょうか。
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