ウツソン センター(Utzon Center)

「ウツソン センター」のご紹介

 

北欧には特徴的な地形があります。それは、氷河が作り出した谷に海水が入り込んで出来上がったフィヨルドと呼ばれる入り江で、北欧の国々ではよく見られる地形です。河川のように見えるところもあり、数百㎞にも及ぶフィヨルドもあります。そのフィヨルドに面した都市に建設された「ウツソン センター」はフィヨルドの波を模した屋根が美しい特徴的な建物です。

「ウツソン センター」の設計者

 

「ウツソン センター」はデンマークの建築家、ヨーン・ウツソンとその息子のキム・ウツソンが共同で設計しました。ヨーン・ウツソンは、オーストラリアのシドニーにあるオペラハウスを手掛けたことで一躍有名になった建築家です。1948年にデンマークの首都コペンハーゲンで造船技師の父親の元に生まれ、育ったのはデンマーク北部の都市、オールボーです。建築を学んだ学校を卒業してから、スウェーデンとフィンランドの建築事務所で建築家としての実務を積み、それらの事務所を構えていた建築家を「北欧の師」と呼んでいました。数年間働いた後、故郷のデンマークに戻りましたが、世界の様々な物事を見聞するためにヨーロッパの各国やアメリカへも渡っています。その時に、当時の優れた画家やモダニズム建築の巨匠と呼ばれる建築家を訪ねています。また、訪れた様々な国の古代遺跡や近代建築を見学する機会もありました。この旅は彼の建築家としての大きな糧となりました。息子は彼のことを大変良く思っていて、彼の息子に生まれたことを喜び、建築家としては良き師匠と仰いでいます。ヨーン・ウツソンは周りの人達にエネルギーを与える人物であると言っていて、何事も前向きに捉え、後ろ向きな発言は一切しなかったとも語っています。建築家として色々な技師や職人など、様々な人々と協力すれは出来ないことは無いし、可能性も広がると考えていました。そのことが「可能性の限界に立つのが好きだ」と言う名言に現れています。

「ウツソン センター」の所在地

 

「ウツソン センター」は北欧の国デンマーク第4の都市オールボーに建設されています。デンマークの大半を構成するユトランド半島の北部に位置する街で、リムフィヨルドの南岸に広がっています。半島を分断するようなリムフィヨルドの対岸は、最大のヴェンスセルチュー島(北ユトランド島)を始めとするユトランド諸島で、オールボー空港は対岸の島に建設されています。街は、リムフィヨルドの1番狭い所にあり、対岸へは橋とトンネルで行き来できます。地図上では内陸に見えますが、スウェーデンとの間に広がるカテガット海峡から北海に抜けるリムフィヨルドの港町として栄えてきました。地理的に条件の良い場所であったことから、バイキング時代にはすでに都市としての機能を持った街でした。緯度の割には寒くない気候で、冬季でも氷点下を大きく下回ることは稀です。降水量は1年を通して平均的です。この街はデンマーク北部の中心として商業が発展していますが、観光地としても人気の高い街です。また、国内で唯一のセメント工場が稼働しています。近隣で採石される石灰岩は、黒板に文字などを書くチョーク(白墨)の生産にも使われている鉱石で、19世紀から可動している工場で生産されているセメントは街の主要な輸出品の1つです。

 

「ウツソン センター」の特徴

 

「ウツソン センター」はこの地で育った建築家を称えるために建設されたのではなく、街にある大学が建築家を目指す学生たちのために計画されて、国の著名な建築家の名前を冠することを提案して建設されました。建築家を目指す学生達が議論を交わしたり、学外での様々な勉強のために使われたりしています。また、建築やデザインに興味のある人が訪れて、展示されている作品を鑑賞する美術館としての役割もあります。3つの大きい建物と、6つの正方形の屋根が連なる3つの長方形の建物で構成されていて、中心部分には中庭が作られています。1番の特徴は、大きく湾曲した金属光沢のある屋根です。基本的には平屋ですが、大きな屋根を持つ部分は2階のある場所もあります。3つの大きな屋根は、設計者が若いころに訪れた砂漠の民のテント、若しくは、そばを流れるリムフィヨルドの波を表していて、陽光を受けて煌めく波と同じく、太陽の光を受けて輝きます。しかし、まぶしすぎないように屋根の素材はアルミニウムが使用されています。1,000枚以上のアルミパネルが使用されていて、三角形の小さめの四角い屋根は南東に向けて天窓になっています。大きな屋根も天頂部分は天窓になっていて、日中の明るさを提供しています。また、屋根の裾の部分にはLED照明が設置されていて、催し物に添った色で装飾されます。

「ウツソン センター」のまとめ

 

2008年に完成した「ウツソン センター」は5月に開館しています。デンマークの世界的に著名な建築家のヨーン・ウツソンは、故郷の国ではあまり多くの作品を残していませんが、この建物は彼が最後に故郷に残したものです。建築家に授けられる最高の賞も獲得しているウツソンは、「ウツソン センター」が完成した半年後に心臓の発作で90年の人生の幕を下ろしています。「ウツソン センター」は、彼が望んでいたように後に続く建築家の後押しができる建物と言えるのではないでしょうか。

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