上海タワー(Shanghai Tower)

上海タワー」のご紹介 

 

 災害の多い地域に高層ビルを建設することは、克服しなければならない課題も増えてきます。頻繁に台風の直撃を受けることがあり、地震の発生もある中国の上海に世界で2番目に高いビルが建設されました。上海タワー」は、様々な災害を想定したうえで、環境に負担をかけないように配慮された超高層ビルです。 

上海タワー」の設計者 

 

 世界でも最大規模の建築事務所「ゲンスラー」の創設者アート・ゲンスラー(ミラード・アーサー・ゲンスラー・ジュニア)が主体となって「上海タワー」を手掛けました。彼は1935年にアメリカ合衆国の大都市であるニューヨーク市の中心部で生まれました。父親は建築関連の仕事をしていました。子供の頃にニューヨーク州の隣になるコネチカット州に移り住み、高等学校までの教育をそこで受けました。その後、ニューヨーク州の北部にあるイサカと言う街の私立大学で建築を学びました。大学を卒業後の1960年代に入って、アメリカの西海岸の大都市、サンフランシスコに移り、彼の妻や仲間と共に建築事務所を開設しました。ミラード・アーサー・ゲンスラー・ジュニア&アソシエイツインクは、後に世界規模の建築設計事務所となっています。現在のゲンスラーは世界中の主要な49の都市にオフィスを構え、2,000人以上のスタッフがいますが、本社と呼べるオフィスはありません。2010年に彼は会長職を辞していますが、相談役としてゲンスラーに関り続けていました。2021年に肺疾患のために85歳で亡くなっていますが、亡くなる1年半前に病気が発覚した後も仕事を続け、亡くなった後にも彼のスケジュールは残っていたと言われています。 

上海タワー」の所在地 

 

 中華人民共和国の黄海と東シナ海の境に面した上海市の陸家嘴(りっかし、ルージャーズイ)に、「上海タワー」を始めとする高層ビルが建ち並んでいます。国際的な金融取引が活発な金融センターの一つで、ニューヨークやロンドンに次ぐ世界でも上位の都市です。長江(揚子江)の河口の南側に市街地が広がる地形で、河口付近のいくつかの島も上海市に含まれています。九州と同じくらいの緯度で海に面している為、比較的温暖な気候と四季があり、6月下旬から7月上旬までは梅雨になります。夏季には台風の直撃を受けることも多く、風と共に水の災害にも見舞われます。また、稀ではありますが、過去にはマグニチュード5から6の地震も起こっています。陸家嘴は、長江の支流である黄浦江(こうほこう)の沿岸で、蛇行する川が回り込んだような地形の場所になり、半島のようにも見える地区です。黄浦江は上海の西にある太湖を源流とする川で、上海市の水源となっている川です。この地域は以前、倉庫や工場が立ち並んでいた所ですが、20世紀の終わり頃から国主導の開発計画が持ち上がって、金融やビジネス街として生まれ変わることになりました。計画が発表されて1番に建設されたテレビ塔を皮切りに、現在では上海タワー」を含む複数の高層ビルが建ち並んでいます。 

 

上海タワー」の特徴 

 

 2014年に完成して、2015年に開業した上海タワー」は、地上高632mで127階建の超高層複合建築物です。平面図で見ると角の丸い三角形で、三角おにぎりのような形です。その三角形を少しづつずらして螺旋を描くように高くしています。それを2次元で表すと、スピログラフと言うデザイン図形に見えます。三角の1つの角には切り込みのような部分が作られているので、建物全体がねじった形になっているのがよくわかります。また、上部に行くに従ってわずかに細くなっているので、ほっそりとした印象が強くなっています。このような形になったのには理由があります。上海は日本と同じく毎年台風の進路に当たることが多く、海上だけを通って来るので勢力が衰えず、強い風に晒される事になります。超高層建築で注意する点の重要度が高い、風に負けない形状がこの形になったようです。この形にした事で、風による負荷を約40%少なくすることが出来、建物全体の重量を減らすこともできました。他にも風に対する構造としては、最上部に普通のビル5階分の高さがある、揺れを軽減させるための構造物が取り付けられていています。この構造物が実際の最上部になっていて、外壁の一番上の部分がそれを取り巻くように設置されています。ねじった上に上部が細くなる形なので、外側に使われたパネルは7,000種類以上の形状があって20,000枚以上が使用されています。また、頻繁に起こるわけではありませんが、過去に大きな地震があり、地盤も強靭では無い事から基礎にも力が注がれています。最も深い所で78mの杭が2,200本打ち込まれています。加えて、公式のサッカー場の1,5倍もある広さで深さが約6mある基礎部分に、61,000立方メートルのコンクリートが使用されました。この作業は連続して行われ、60時間かかって流し込まれました。 

上海タワー」のまとめ 

 

 「上海タワー」は中国語の漢字で「上海中心」と表記されています。2022年の時点では世界で2番目に高い建築物で、上海は元より、中国国内では1番高いビルとなっています。中国では最近、500mを越える建物を建設することを法律で禁止した為、法改正がされない限り上海タワー」が国内で1番高いビルになり続けます。スラリとした外観も含めて、正に上海の中心と言っても過言ではありません。 

 

 余談ですが、「上海タワー」には109基のエレベーターが設置されていますが、全て日本製で、そのうち2基は世界で2番目に早く、500m以上を1分かからずに到達できます。 

 

 スピログラフとは、専用の定規があって、内側に歯車のようなギザギザが付けられた円に、それより小さい外側に歯車のついた円形の部品に開けられた穴に筆記用具を差し込んで、二つの歯車を嚙合わせるようにぐるぐると描いていく図形の事で、トロコイド曲線と言います。専用の定規は、玩具の1つとされていますが、高度な図形を描くこともできます。 

 

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