サルバドール・ダリ美術館(Salvador Dalí Museum)

「サルバドール・ダリ美術館」のご紹介

 

20世紀に活躍したスペインの芸術家、サルバドール・ダリの作品を納めた美術館は世界中に数多く建設されています。故郷のスペインを始め、ヨーロッパ各地や日本にもいくつかの美術館があります。2011年に完成したアメリカの「サルバドール・ダリ美術館」は、多才で当時の最先端を突き進んでいたサルバドール・ダリを形に表していると言える建物です。

「サルバドール・ダリ美術館」の設計者

 

「サルバドール・ダリ美術館」を手掛けたのは、世界でも五指に入るアメリカの企業「HOK(ホック)」で、1955年にジョージ F ヘルムースと小畑 暁(おばた ぎょう)、ジョージ E カッサバウムの3人の建築家が共同で設立した建築事務所です。当時はそれぞれの苗字をとって「ヘルムース・オバタ+カッサバウム」と言う社名でしたが、頭文字をとった「HOK」も使われていました。アメリカ中東部に位置するミシシッピ川沿いの大都市、セントルイスに本拠地を据えて、現在は国内外に24の事務所を構え1,600人以上の従業員が働いています。創設者の3人はセントルイスにあるワシントン大学で建築を学んでいます。彼らは、人々に豊かな生活を送れる場所を作ると言う理念を持って、事務所を開設した当初は学校などの公共施設を手掛けていました。次第に企業の社屋や商業ビルなども手掛けるようになりましたが、いずれも大きな規模の建築物を扱っています。時代の先取りをするような考えもあり、現在は普通に使われているコンピュータを使った製図支援ソフトも、およそ40年前の1980年代には同社で開発されたソフトウエアが発表されています。また、持続可能性にも早くから着眼していて、現在では世界トップクラスの技術を持っています。創設者の3人はすでにこの世を去っていますが、彼らの理念はそのまま受け継がれています。

「サルバドール・ダリ美術館」の所在地

 

「サルバドール・ダリ美術館」はアメリカ合衆国のフロリダ州セントピータズバーグに建設されています。セントピータズバーグは、北大西洋とメキシコ湾を分けるように北米大陸から延びだしている、フロリダ半島のメキシコ湾側中央部にあるピネラス半島の南端に位置する街です。スペインの探検家がこの地域に上陸したのは16世紀の初め頃でした。その頃は、この地域一帯にアメリカ先住民の大きな集団が住んでいました。最初に自治体として設立したのは19世紀の終盤で、その当時の人口はわずか300人ほどでした。亜熱帯の気候ですが、海に面している為に夏季でも30℃を大きく上回る事は少ないようです。降水は夏季に集中していて、ハリケーンの影響も少なからず受けています。しかし、この街にハリケーンの中心が通ったのは1946年以降ありません。1年を通して晴天の日が多く、陽の射さない日は数日しかないので、この街は「サンシャインシティ」とも呼ばれています。加えて、20世紀の半ばには連続して日照があった日が2年以上(768日)続いた記録があり、ギネスブックに世界記録の1つとして記載されています。この街と同じ地名の街がロシアの西部にあります。サンクトベテルブルクと言う街ですが、英語読みをすると同じ地名なので双子都市と呼ばれています。

 

「サルバドール・ダリ美術館」の特徴

 

四角い無機質な建物と、何かの生物にも見える有機的な構造が融合している建造物が「サルバドール・ダリ美術館」です。サルバドール・ダリに敬意を示して、彼の作品に見合うデザインを心掛けて作られています。設計者は「ダリを象徴するように、または、物語るようなデザインで、しかも安っぽくならないように考慮した」と語っています。1番の特徴は建物に絡みつくようなガラスの構造物で、大小2つの変形したガラスのドームのように見えます。高さが14mの「イグルー」と呼ばれる小さいドームと、最高値が23mの「エニグマ(例えばパズルのようなもの)」と名付けられた、ガラスの生き物のような構造物です。1,062枚のガラスが使用されていますが、複雑なデザインになっているので、1枚も同じ形のガラスはありません。三角形を基本としてドームのように組上げる「ジオテックドーム(測地線ドーム)」を基本としていて、煌めく宝石のカットのような印象も持たせています。このガラスは館内に自然光を取り入れる目的もありますが、太陽光が作品の劣化に繋がらないように紫外線を通さない物が使われています。館内もダリを想起するように作られていて、例えば中央にある流し込みのコンクリートで作られた芸術作品のような螺旋階段は、ダリの特徴とも言える「ヒゲ」のようなイメージがあります。

「サルバドール・ダリ美術館」のまとめ

 

2011年に開館した「サルバドール・ダリ美術館」は、「ザ、ダリ」とも名乗っている美術館で、ヨーロッパ以外では最大量の収蔵物を誇っています。ガラスを多用して作られていますが、最大規模のハリケーンによる暴風や、ヨットの係留地がすぐそばにある海沿いの為に高潮に見舞われる可能性も考慮して、それらに耐えるよう設計されています。「サルバドール・ダリ美術館」の外観は元より、貴重な芸術品を広く人々に鑑賞してもらう事と共に、きちんと保管できることも考えられた、優れた美術館と言えるのではないでしょうか。

 

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