目次しらべ
「オニオン ハウス文化センター」のご紹介
ヨーロッパの小さな町に建てられた建物は、その地の特産品に敬意を込めた形になりました。数百年も続く農産物の生産は、町の経済を担う大事な産業です。最初に建設された建物は、その特産品を販売して得たお金で建設され、建て直された建物は特産品のタマネギを意識してデザインされました。昔は使用目的を表し、今は外観を表しているのが「オニオン ハウス文化センター」です。
「オニオン ハウス文化センター」の設計者
「オニオン ハウス文化センター」を手掛けたのは、イムレ・マコヴェツです。彼は1935年にハンガリーの首都ブダペストで生まれました。幼い頃は、第二次世界大戦の真っ只中で、戦火を逃れるために父親の古里の村で暮らしていました。現在のスロベニアとクロアチアの国境に近い小さな村で過ごした村の風景が、後の彼の建築に対する理念に繋がっていると、彼は語っていました。建築はブダペストの工科大学で学び、その時に知った偉大な建築家に興味を持ちました。近代建築の巨匠の1人に数えられるアメリカの建築家、フランク・ロイド・ライトとオーストリアの哲学者であり、建築家でもあったルドルフ・シュタイナーに彼は大きな関心を抱いていました。大学を卒業してからは、国の機関で十数年間働いていました。都市計画を担う複数の国営企業で働いていましたが、仕事の合間に田舎をまわり、衰退の危機に瀕していた農村部の再生に力を注いでいました。1981年に独立して、自らの建築事務所を開設しましたが、引き続き地方の活性化に繋がる仕事をしていました。有機的建築と言う概念を作りだしたのが、フランク・ロイド・ライトで、彼の作品は、その有機建築と呼ばれるものが多く、自然と調和するような印象を与える建物を生み出していました。彼は、自然と共存できる建築を目指し、建材も極力天然のものを使用していました。イムレ・マコヴェツはハンガリーでの有機建築の先駆者となりましたが、2011年に75歳で多くの人に惜しまれながら世を去りました。
「オニオン ハウス文化センター」の所在地
「オニオン ハウス文化センター」は、ハンガリー共和国の南東にあるマコと言う町に建設されています。ハンガリーは中央ヨーロッパに含まれ、周囲を7カ国に囲まれた内陸の国で、10カ国を流れる国際河川のドナウ川が国土のほぼ中央を流れています。内陸ではありますが、中央と東ヨーロッパにまたがるカルパティア山脈の麓にあたる平野のハンガリー平原が大部分を占める平坦な地形です。国の最高峰でも標高が1,000mを少し上回るくらいで、国土のほとんどは海抜200m以下となっています。マコは国の南東に位置する町で、首都のブダペストから南東およそ180km離れ、隣国の1つルーマニアと国境を接しています。この町には国内は元より国外へ向けてのハンガリーの名産品と言われる作物があります。「マコ赤タマネギ」と呼ばれるタマネギは、中世より栽培されてきた記録が残っている作物で、この地域の伝統的な作物です。また、ニンニク栽培も古くから行われています。国の特産品でもある「マコ赤タマネギ」は、欧州連合の原産地保護が指定されていて、マコ周辺で生産されるタマネギのみがこの名称を使用できるようになっています。町にはタマネギのモニュメントも建っています。
「オニオン ハウス文化センター」の特徴
1998年に完成した「オニオン ハウス文化センター」は、現在とは別の目的を持っていた、古い「オニオンハウス」が建っていた場所に再建されました。最初の「オニオンハウス」は、第二次世界大戦が起こった年に建設された、タマネギの生産者組合のためのモダニズム建築の建物でした。戦争が終結した後に文化施設として利用されていましたが、元々の使用目的とは違った使い方をされていたので、不便なところがたくさんありました。加えて、老朽化も進み、建て替えを望む声が上がり、建設費用のほとんどが国の予算で賄われ建て直されました。建物のデザインは、この地の特産物であるタマネギに敬意を表す形になりました。中心にタマネギを連想する形のホールを内包した建物が作られて、4つの角に白い搭が建てられています。搭は細いタマネギのような形で、中心部が少し膨らんでいて、先細のような形になっています。上部の内向きは大きなガラス窓が作られていて、屋内を明るくしています。この搭は2重になっていて、外側の白い塔の中に、高さが半分ほどの小さい塔が入れ子のように入っています。中心の建物の屋根もタマネギを思い起こさせる形で、スレートで覆われています。近年はスレートと言えばセメント製の物が主流となっていますが、設計者は天然の素材にこだわり、ヨーロッパで古くから使われている、平たく割れる性質を持つ粘板岩のスレートで屋根が葺かれました。屋内はホールの高い天井も含めて木材が多用されていて、温もりのある空間が作られています。
「オニオン ハウス文化センター」のまとめ
建設から20年経った2018年には大規模な改修工事が行われました。粘板岩のスレートで葺かれた屋根も新しいスレートに葺き替えられ、白い塔も塗り替えられました。搭のガラスも新しいものに交換され、20年前の姿を取り戻しました。設計者はマコの町にある複数の建物の建設に関わっています。最初に建てられたのが「オニオン ハウス文化センター」で、それらの建物は設計者の遺産として、この町の誇りとなっています。
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