パシフィックデザインセンター(The Pacific Design Center)

「パシフィックデザインセンター」のご紹介

 

ランドマークとは地理上の場所を特定するための目印で、国レベルでは高い山や広い湖などがランドマークに当たります。街の目印になるのは、塔や高層ビルなどの建造物それに当たることが多いようです。しかし、大都市のランドマークとなり得る建造物は、単に高いだけの建物では目立ちません。「パシフィックデザインセンター」は、アメリカ西海岸にある街を一目で特定できる優れたランドマークと言える建造物です。

「パシフィックデザインセンター」の設計者

 

「パシフィックデザインセンター」は完成までにおよそ40年かかりました。その長い年月この建物群に関わっていたのが、設計とデザインを担当していたシーザー・ペリです。彼は1926年、アルゼンチンの北部にある内陸の都市、サン・ミゲル・デ・トゥクマンで公務員の父と教師の母の元に生まれました。地元の高等学校を卒業した後、進路が決まらずいくつかのカリキュラムを試したところ、建築に関する色々な学習内容に興味を抱いた事から、建築の勉強を始めることになりました。生まれ故郷の大学を卒業した後はしばらく実務を経験していましたが、さらに高度な建築に関する勉強をするためにアメリカへ移住しました。アメリカへ移住してから5年で市民権を取得して、正式にアメリカ国民となっています。アメリカの大学に在籍していた時に、彼を教えていた教授が彼に素晴らしい才能があることに気づき、大きなプロジェクトの一員になれるように紹介しました。以後、彼の作品は様々な街でランドマークとなり得る超高層ビルなどを手掛けてきました。自身の建築事務所を開設する前から日本にもいくつかの作品が建てられていますが、日本では大阪の「あべのハルカス」が最後の作品となって、2019年にアメリカの自宅で92歳と言う長い人生の幕を下ろしています。

「パシフィックデザインセンター」の所在地

 

「パシフィックデザインセンター」は、アメリカ合衆国の西側にあるカリフォルニア州のウェストハリウッドと言う街に建設されています。カリフォルニア州最大の都市、ロサンゼルスの西に位置する街で、ロサンゼルス大都市圏に含まれています。気候は亜熱帯気候に分類されていますが、年間を通して比較的過ごしやすい地域です。夏は30℃を超えることは少なく、冬には氷点下になる事はめったにありません。降水量は少なく、冬季に少しの雨が降っています。18世紀にスペイン人が入植して、現在のロサンゼルス付近にいくつかの小さな集落を作りました。19世紀以降にロサンゼルスが都市として成長を始め、それに伴い、この街も繁栄するようになりました。しかし、大都市の近郊という事から、その都市の景気に大きく左右され、繁栄と衰退を繰り返してきました。その様な歴史のある街ですが、ウェストハリウッドとして正式に自治体となったのは1984年で、比較的最近のことでした。市制が制定されたきっかけは、ロサンゼルス郡で家賃を管理することを廃止する動きが出てきたことでした。社会的弱者の多いこの街では部屋を借りている人が多く、家主の言いなりの家賃を支払うことは難しくなります。その為、彼らは組織だって家賃管理維持の活動を始めました。現在ではアメリカ国内で一番安定した家賃で部屋を借りることのできる街となっています。

 

「パシフィックデザインセンター」の特徴

 

「パシフィックデザインセンター」は、カラフルな3色の建物で成り立っています。最初に建設されたのが青い建物で、1975年に完成しています。3つの建物の中では一番大きく、その色と形状から「シロナガスクジラ」と言う愛称があります。「センターブルー」はオフィスやショールームが入っている6階建ての建物で、全体を不透明の青いガラスで覆われていて、幹線道路に面した側に螺旋階段が入る円筒が取り付けられています。円筒は夜間になると、赤やオレンジなど内側からの照明でとてもカラフルになります。次に建てられたのが映画館や会議場が入る9階建ての「センターグリーン」です。正立方体の下の角を三角に切り取ったような形で、屋上には八角錐の構造物が取り付けられていて、帽子が載せられているように見えます。外壁は緑色のガラスで、飛び飛びにある透明の窓が市松模様のような感じに仕上げています。2012年、最後に完成した「センターレッド」は2つの建物に見えるあでやかな赤い建物です。湾曲した三角形の建物で、下層階は駐車場になっています。その上にオフィスなどが入る部分があり、2つの建物は駐車場の最上階にあたる7階にある渡り廊下のような部分で繋がっています。そこは、中庭のようになっていてヤシの木が植えられ、南国の雰囲気を醸し出しています。東側の建物は駐車場部分から上、8階建てで、横から見ると東方向へ上向きになっていて、西側の建物は6階あり、北側に少し傾斜した形になっています。赤いガラスと透明の窓の部分が、交互に作られてボーダー柄のように見えます。これらの色ガラスは、ガラスフリットと言う粉末状のガラスを使用してコーティングされて色が付けられています。

「パシフィックデザインセンター」のまとめ

 

設計者のシーザー・ペリは「パシフィックデザインセンター」を、「地球に落ちてきた巨大な破片」と言っていますが、何の破片なのでしょう。青い建物には「クジラ」の愛称がありますが、緑は真上から見ると正方形の建物が地上からの見た目は全く違う形で、まるでだまし絵のような印象を受けます。赤い建物は、特撮ドラマの地球を守る組織の本部みたいなかっこよさがあって、全ての建物には40年の年月の隔たりを感じさせません。ウェストハリウッドのランドマークとしては、十分な建物群で、単体で見てもある種の衝撃を与えるのではないでしょうか。

 

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